暁は山崎が出て行き、自由になってすぐに動き出した。まずは衛に連絡を取ろうと、携帯を探した。鞄をあさったが見つからなかった。
「まあ、犯人としては当然だよな。むしろ駐輪場に捨ててきた方が賢明だったのか・・・バカだな、俺。」
頭をガシガシとかくと、気持ちを切り替えるように、短く息を吐いた。次に首輪をはずそうと試みたが、手錠と同じように鍵がかかっていて外れそうになかった。首という位置がさらに物事をやり難くしていた。仕方なくあきらめ、家捜しを始めた。
「ケイの証拠を見つけ出して隠滅するか、対抗できるヤマサキの弱点を見つけるかだな。」
暁はそうつぶやくと、2LDKの部屋を見渡した。暁が動ける範囲は寝室とリビングの一部、キッチン、風呂、トイレだった。リビングの奥にあるもうひとつの部屋と、玄関、テラスにはちかづけなかった。
冷蔵庫を開け、適当に腹ごしらえすると、キッチンを一通り見て回った。キッチンには冷蔵庫、シンク、コンロに備え付けの戸棚があった。すべて隅から隅まで、裏側までチェックしてみたが、何も見あたらない。トイレに入ってトイレのチェック、シャワーを浴びて風呂場のチェック。タオルを一枚一枚広げてみたが、何も出てこなかった。
リビングのフローリングを叩いてチェックしているときに来客を知らせるチャイムが鳴った。一瞬助けを求めるチャンスだと思ったが、出かけ際山崎が言っていたセリフを思い出し、断念した。
「結局のところ、ケイの問題を何とかしなくちゃ、ここを抜け出しても意味がないってことか・・・」
暁はチャイムを無視して作業を進めた。
さらに2時間ほどかけてくまなく見て回ったが、役立ちそうなものは何も出てこなかった。
「あの部屋には何かあるんだろうな。」
リビングの奥のもうひとつの部屋のドアを見つめた。鎖が届くぎりぎりまで寄って、足を伸ばしてみたが、足の指先がドアノブに微かに触れる程度しか届かない。それでも必死で伸ばしてそれでも必死で伸ばして何度かチャレンジしてみる。
「いって!・・・つった・・・」
無理な体勢で無理やり伸ばしたせいで、足の裏が吊った。リビングの床に横になって、足の裏を延ばしながら天井を見上げる。天井の角にカメラが付いていることに気付いた。
(部屋の中にまでカメラか・・・俺なにしてんだろ・・・逃げようかな)
目を瞑ると圭の笑顔が思い出された。またチャイムが鳴った。
「くそぅ!もう!何で俺はほっとけないんだ!」
うつぶせになってチャイムが聞こえないように耳を塞ぐ。
「・・・懐柔策しかないかな・・・」
暁はつぶやいた途端、冷たい水が床から上がってくるような感覚にとらわれ、眉を寄せて目を閉じた。
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君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・47
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