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山崎は駐車場に車を止めると、暁のバイクが止まっていることを確認してニヤリと笑った。自然と歩幅が広がる。エレベーターのドアが開く時間も長く感じられ、半分しか空いてないうちに体を外に出した。指紋を押してドアを開ける。 「あ、おかえり。」 リビングに入った瞬間にキッチンから声がかかり、山崎はギョッとした。 「た・・・だいま。」 無意識のうちに答えてしまい、気付いて顔が赤くなる。 「腹減っちゃって、冷蔵庫の中適当にあさって作ってるんだわ。お前の分もあるからシャワー浴びてこいよ。」 暁の明るい物言いに不振がりながらも、山崎は例のリビングの奥の部屋に鞄を置きに入った。 (鍵はかけられてないみたいだな。) すぐに閉じられたので、中を見ることはできなかったが、暁はフライパンを操りながら横目でそれだけは確認した。 山崎がシャワーを浴びている間に、部屋に近づき、耳を澄ませた。微かに衛からの着メロが聞こえた。 「やっぱあいつ、持ち歩いてるのか・・・」 暁はそうつぶやくと、長く伸びた鎖を恨めしく見つめた。
向かい合って食事を取りながら、山崎はチラチラと暁をうかがった。暁はテレビを見ながら、まるで自宅にいるかのように、ときどき笑ったりしてくつろいでいる。 「あのさ。」 テレビに集中していると思っていた暁から声をかけられ、山崎は思わず「はい」と言って背筋を伸ばしてしまった。心の中で舌打ちする。暁は、山崎のそんな様子を気にするでもなく続けた。 「昼間、相当暇なのよ。俺のこと帰す気無いなら、俺のノートPC持って来てくんない?」 暁は、フォークを口に運びながらなんでもないことのように切り出したが、内心断られるのではないかと緊張していた。手が震えていないかと心配だった。山崎はそんな暁の心の内には気づかず、これは好都合とばかりにニヤついた。 「いいですよ。そのかわりやって欲しいことがあるんです。」
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