カテゴリ:国語
私立の中学と、公立中学と、中学3年間で大きくカリキュラムが違うのは当然のことではあるのですが、その差を具体的な例を挙げてみたいと思います。
私は国語科なので、国語で説明します。 顕著なのは古典です。 公立中学ですと、教科書に載っている「竹取物語」の冒頭、 「枕草子」の春はあけぼの、 「平家物語」祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり。娑羅雙樹の花の色、盛者必衰のことはりをあらはす…。 「徒然草」をいくつかの段。 学校だけの学習の場合、古典の文章は8題に触れる程度。 それら全て、詳細な注釈がついています。 だいたい、古典の文学に触れて、あらすじや筆者の思いを理解しようという趣旨ですね。 文法的な内容は、 ○歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに訳す。 ○「~ば、~けり・なり」を「~ので、~だった。」と訳す。 ○係り結びの法則→最重要項目。「ぞ・なむ・や・か」があるとき、 原則「けり・たり」が「ける・たる」などの連体形に変化する。 「こそ」があると、「けれ・たれ」など已然形に変化する。 あとは、省略されている主語を文脈や敬語から読み取る。 というような問題が多いです。 大阪府立の過去の高校入試問題では、古典の文章が6行ぐらいの短めのものです。 問題は4問で、 1.歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直す。 2.省略されている主語を答える(選択式)。 3.―線部の現代口語訳を答える。(記述式) 4.本文の内容と一致するもの(もしくは-線部の解釈)を選択肢から選ぶ。 でした。 塾に通っていて、40題~100題ぐらいトレーニングするぐらいでしょう。 私学の中2・中3(中堅~上位校)ですと、 ○歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直すのは、5~10分程度の説明で、後は各自でという学校が多い。(定期試験には出る) ○古典の文章を品詞分解していく ○係り結びの法則 ○動詞の活用と活用形(四段活用・上一段活用・サ変など) ○形容詞の活用と活用形(ク活用・シク活用) ○形容動詞の活用と活用形(ナリ活用・タリ活用) ○助動詞の意味・用法・接続・活用と活用形 例) 「いまさらになど忍び給ふらむ。」 →「らむ」は現在推量・原因推量・伝聞湾曲のいずれか。 この場合は「など(=なぜ)」という疑問を表す語句と同時に使用されているので、 原因推量で「いなさらなぜ隠れようとなさるのですか」と訳す。 「増賀聖の言ひけむように」 →「けむ」は、過去推量・過去の原因推量・過去の伝聞婉曲のいずれか。 この場合「ように(=様に)」と体言があることから連体形。 連体形で用いられたときは「伝聞・婉曲」。 「増賀聖が言っていたように」と過去の伝聞っぽく訳す。 「生けらむほどは、武に誇るべからず」 →この「らむ」は、先程の助動詞「らむ」とは別物。 だって、「らむ」って連体形接続するはずなのに、「生けらむ」は已然形に接続して るでしょう。だから、助動詞「り」+助動詞「む」と考える。 「り」は存続の意味があるので、「生きている間は…」と訳す。 「らむ」と「り」+「む」を区別して訳しましょうね。 こんな感じです。 上位校と言われる学校ですと、 中2の間に大学入試対策の古典文法のテキスト全部終わる勢いです。 その次に続く中堅校で、中3~高1の前半で終わるペースです。 そして、触れる古典作品の数もケタ違いです。 練成問題集のようなもので、作品を文法的に分析させていっていますね。 大学入試を考えると、古典は一定数のギブアップ者が出る科目で、 そういう人が平均を下げますから、ある程度努力した学生は得点や偏差値に結びつきやすいという面があると感じています。 ただ、私立の上位校のカリキュラムは、もう少し6年間で「確実に理解させる」ということに重きを置く方が結果的には伸びるのではないかと私個人は感じています。 あまりに一度の授業にたくさん詰め込みすぎたり、優秀な生徒だからと説明や例示を最小限にしてしまったことで、「苦手意識」を膨らませてしまっている生徒が多いからです。 天王寺や三国ヶ丘など公立トップ高に進学する生徒さんが中3の段階で、全く知らない古典文法的内容を私学では先取りして学んでいるのに、余裕を感じられないばかりか、嫌悪感を持たせてしまっては本末転倒です。 ですが、早い段階でとりあえず一通り学んで完全理解とはいかなくてもインプットし、 6年かけて問題演習をしていくなかで深い理解と問題処理能力を鍛えていくという考え方もありますからね。 実際にものすごいカリキュラムの速さで授業が進んでいくのは、止められませんから、 考え方を前向きに保ちましょう。 苦手意識を持ってそこで諦めるのではなく、最終的には大学入試のときにこれを理解して解く必要があるのだとあと何年間でしっかり解けるようになりたいと肯定的に考えられるといいですね。 私学生は長期的にステップを考えて欲しいですね。 1度や2度の点数で「この科目は苦手・嫌い」と決めつけてしまってはもったいないですよ。 公立学校の学力の二極化はかなり広がりつつあるのが実感としてありまして、 私立中学の偏差値の感覚で見ていくと、高校の偏差値は全くの別物ですね。 中学の偏差値が50ぐらいのところだと、高校は60~65となることも珍しくなく、 中学の偏差値が41のところが、高校受験だと58とか。 小学生のときから鍛えられていた生徒たちとの学習に対する基本姿勢の差という点が1つ。 高校入試の際の偏差値は、中学生全員の集計によるものだけど、 私立中学の偏差値の目安は、最低でも中学受験のための塾など長時間の学習をしている人だけの平均点が50であるという点とありますから、ものさしが全く別物ですね。 公立中3生の家庭教師の生徒さんが、私の出した課題を「うわ、多いなー」という表情でいたので、にっこりと清風南海の中3生が今取り組んでいる問題集を見せました。 受験のない中3生がここまで難易度の高い問題を普通の宿題として解いているよ。 あなたは受験生ですよ。 そして、大学入試のときにこの問題している人たちと合流して戦うのだけど、 先生の出した課題、多すぎる? …いや、少ないかも…。 ですよね。がんばりましょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年09月12日 19時00分44秒
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