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だだもれ堂筆記

だだもれ堂筆記

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2005.05.28
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テーマ:中国&台湾(3304)
カテゴリ:旅行けば
北京と天津は近い都会だが、街が繋がっているわけではない。
その間には農村が広がっている。


同僚の奥さんは、天津近くの農村出身だった。
夏休みに一緒に遊びに行かないかと誘われ、泊りがけで行くことになった。


北京の市街地をやや外れたところから小型バスに乗り込む。
ピンクのひらひらブラウスを着た車掌のお姉ちゃんの月給は、
大学教授の同僚とほぼ同じらしい。
「これでも以前よりは待遇は良くなったのですが。」と彼は苦笑する。

バスは高速道路ではなく、一般道を走る。
途中で客を拾い、降ろしながらのんびりと走り続ける。

2時間あまり走った頃、バスを降りた。
村は幹線から少し外れている。
埃っぽい道を30分近く歩いて奥さんの実家のある村に着いた。


彼女の実家は農家だが、主である弟さんは村の小学校の教師もしている。
村の知識人、ということらしい。
家はごく普通の農家。入り口を入って土間、左の部屋は台所、右には客間。
テレビや冷蔵庫などの電化製品も一通り揃っていて、豪華ではないものの
決して貧しくはない暮らしぶりだ。

家の人たちは日本人の私を歓待してくれた。
中国では、一般的には庶民の対日感情は必ずしも良くはないので
身構えないわけにはいかないのだが、そういう気まずい雰囲気はなかった。


同僚に村を案内してもらう。
小さな商店が1つ。調味料や菓子、日用雑貨が雑然と並べてある。
村のそばには川が流れている。
土手に沿って柳の木が植えられている。

「農村では一人っ子政策は緩和されているんですか?」
「いえ、こういう村でも厳しく制限されていますよ。
もし許可なく子どもを産んだら、財産は没収され、家も取り壊されます。」
「ずいぶん厳しいですね。」
「人口が多いのは農村ですから、農村で厳しくしないと。」
そんなものなのかもしれない。
少数民族エリアなら、子どもが3人まで許されるところもあるのだが。


夏の暑い時期なので、屋内の台所ではなく外のかまどで食事を作っている。
肉を炒め、醤油と塩を加え、畑で取れた野菜を入れて炒め合わせる。
野菜の種類が変わるだけで、作り方はみな同じだ。とにかくシンプル。

ところがこれがとてもおいしい。
スペアリブの煮込みも出される。これもシンプルながらおいしい。
餃子も出てきた。
この頃には例の食え食え攻撃によりお腹ははちきれそうなのだが、
それでも餃子もおいしかった。
どうすればあんなに簡単な作り方なのにおいしくなるのだろう。

その日は親戚も集まり、遅くまで世間話が続いた。


翌日は日曜日。
トラクターの荷台に乗せてもらい、市場が出る大きな村へ送ってもらった。

市場は近くの村々から買い出しにきた人たちでにぎわっている。
鍋、鎌、鍬、石鹸、塩、靴、帽子、歯磨き粉、調味料、小麦粉、煙草。
日常の生活に必要なものは一通り手に入る。

衣類は、北京の街中ではすっかり見かけなくなったアイテムが目白押し。
中山服(通称人民服)が、ここではまだ現役だった。
確かに妙ちくりんな背広よりははるかに実用的だ。


この辺りでは近郊農業が盛んで、中国の農村としては豊かな方だ。
たいていの家では、衣食住に困っている様子は全くない。
村の子どもたちは全員、最低限義務教育は最後まで受けているという。
高校や大学に進学する子どもも珍しくはない。

しかし、ここは都会に近い恵まれた地域。



私がかつて行った内陸部の農村の暮らしは楽ではなかった。
普段の食事はじゃがいもや燕麦。肉はめったに口にできない。
楽しみは、きつい白酒を時々ちびちびやるくらい。


小学校を途中でやめる子どもたちが数多くいる。
親が出稼ぎで村を出て、祖父母の世話をしながら畑を耕す子どもがいる。
嫁を迎えるだけの金がなく、人さらいから娘を買う家がある。
病気になっても貧しさで治療を受けることもできずに死んでいく人がいる。
生まれたばかりの子どもを町に売りにいく親もいる。


中国は広い。
国は全てをカバーできないし、義務教育は無償ではない。
経済発展で華やかな顔を見せるのは、一部の大都会だけだ。

農村でさえこの格差。
中国が本当に大国といえるようになるには、間違いなく
国内でぎりぎりの生活を送る人々の生活レベルの底上げが不可欠だ。


中国市場の大きさという言い方をよく耳にするが、しかし
じゃがいもを日々食べている人々は市場の対象にならないのか。

村の子どもが全員義務教育を完全に受けられるようになるまで、
いったいあとどれくらいの歳月が必要なのだろう。


ロケットより、足元の農村を見ないとまずいんじゃないのかな。

あの貧しい村と天津近郊の村の違いを思い出すたびにそう思う。





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最終更新日  2005.05.28 23:57:31
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