記憶は不安定な存在。だからこそ救われるときもある
あなたの周りに、お酒を飲むと必ず愚痴っぽくなる人はいませんか?
じつは私たちの脳には、アルコールを飲みながらいやなことを思い出すと、
そのいやな記憶がさらに根深くなってしまう性質があります。
そのためお酒の席で愚痴をこぼす人は、
ネガティブな記憶がどんどん強度を増していくため、
さらに愚痴っぽくなるという悪循環に陥ってしまうことに。
人の記憶とは一定の状態に保たれるのではなく、
つねに変化しやすい不安定な状態にあるのです。
脳が物事を記憶する仕組みとは、大きく4つに分けられています。
まず、目や耳などの五感を通して、視覚情報や音声情報などが
脳に送られる「獲得」というプロセス。
そして、その情報が脳内で保存される「固定」。
さらに、その情報を思い出す「再生」と、
再生をくり返すことで記憶を確立していく「再固定化」。
記憶するためには、覚えるだけでなく、
それを思い出す作業も必要というわけなのですが、
なかでも特に記憶の質を左右するプロセスとなるのが、
「再生」「再固定化」といった思い出す作業。
なぜなら人間の記憶は、思い出されるたびに不安定な状態になりやすく、
思い出し方次第では、間違った記憶に塗り替えられてしまうこともあるからです。
たとえば仕事で初対面の人と名刺交換をするとき、
顔色が悪くてか細い人だったので"幽霊みたいな人"
という印象を受けたとします。そしてその人の名前を思い出すときに、
"幽霊みたいな●●さん"と思い浮かべるようになってしまうと、
いつしかその人が幽霊のような生気のない人、
暗い人だという記憶があたかも真実であるかのようにインプットされてしまうのです。
しかしこうした記憶の不安定さは、マイナスばかりではありません。
トラウマとなっている過去のつらい記憶を人為的に消去したり、
薬物中毒の治療に応用したりといった、プラスの面も持っています。
いやな記憶、ネガティブな記憶を、
心地いい記憶やポジティブな記憶に差し替えることで、
ときに人は耐えがたい苦痛から解放されるわけなのです。
記憶の不安定さに振り回されないためには、
いやなことはあまり思い返さず、楽しいことだけを思い浮かべていくことが大切。
お酒の席も愚痴は禁止して、楽しい時間にしていきたいものですね。