衆院補選始末記:異例の超低投票率と保守層の漂流
先月28日に投開票の行われた衆院補選3つで顕著だったのは、いずれも稀に見る低投票率だったことだ。総選挙や参院選挙のように全国的な選挙でないと、どうしても注目度が落ちるから、補選の低投票率は予想されたことだったが、それにしても過去最低となったのは、やや意外ではあった。◎長崎3区の投票率は前回衆院選より25ポイント以上も激減 特に東京15区は、泡沫候補も含めて9人も立ち(写真)、有力候補だけで5人が競ったのに40.70%に終わった。自民と立民の一騎打ちだった島根1区はまだマシで、54.62%。しかし通常なら投票率の上がる地方部の長崎3区では35.45%だった。 ちなみに2021年の前回衆院選と比べると、その投票率の低落が異常であったことが分かる。東京15区は18.03ポイント、島根1区は6.61ポイント、長崎3区は25.48ポイントも下回った。 自民対立民の一騎打ちの島根1区の落ち込みは、補選ならこの程度落ちると納得できる。しかし東京15区と長崎3区は、減り方が極端だ。同じ地方部なのに島根1区と長崎3区との差は20ポイント近くもある。◎ほとんど無名の日本保守党の飯山氏が4位 1つの解は、東京15区と長崎3区で自民党が候補を立てず、不戦敗となることが決まっていたからかもしれない。つまり自民の岩盤支持層が投票に行かなかったのだろう。 保守支持層は、それでも東京15区はまだいい。代わりとなる日本保守党(マスコミでは諸派扱い)の飯山陽(あかり)氏、維新の会の金澤結衣氏がいた。ほとんど無名の飯山氏は4位(2万4264票、得票率14.21%)、金澤氏は3位(2万8461票、同16.67%)に入り、都民ファーストと国民民主党の推した知名度のある乙武洋匡を上回った(写真=敗戦の弁を語る飯山氏。両脇は代表の作家の百田尚樹氏と共同代表・名古屋市長の河村たかし氏)。特に飯山氏には、自民保守層の大量の票が流れたと考えられる。ちなみに両氏の票を合わせれば、当選した立民を上回った。◎全く選挙基盤の無い維新が31%余の得票と健闘 長崎3区では、立民が維新をダブルスコアで破った。維新は、長崎には全く足場がなく、県議会に1人の県議もいない。相手の立民は、前職でしかも二世だから、後援会組織がある。通常なら維新は泡沫候補だろうが、それでも2万4709票、得票率31.64%と健闘した。これは、自民支持層の一部が投票したのだろう(ただ前記のように極端な低投票率だったから大半は棄権したと思われる)。 つまり立民3戦全勝と言っても、それは必ずしも地力ではなく、政治資金問題と岸田グズ眼鏡という自民の不人気による「一時浮上」に過ぎない。◎自民に迫る危機 東京15区で4位と健闘した日本保守党は、次の総選挙では都市部を中心に多くの候補者を立てるだろう。この党は、日本では今まで類例のなかった右派党で、自民はこの党と、やはり全国規模で候補を立てる維新の会とも保守層を競い合わないといけない。 政治資金問題に早く決着をつけないと、保守党と維新にかなり議席を侵蝕されるだろう。そしてもう1つ、不人気の岸田グズ眼鏡を早く見限る必要もある。でないと、過半数ギリギリに落ち込む可能性だってある。昨年の今日の日記:「函館の旅(6):恵山目指すも、ミスで始発列車逃して函館山登山に切り替える」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202305080000/