今日の充填治療7.0(上級編:開口による咬合性外傷歯のCR)
40代女性、右上6、歯根面カリエスこの方、開口という外傷性咬合の持ち主だ。開口というのはどういうものかというと、前歯が噛んでいなくて、大臼歯だけが噛んでいる。というか奥歯に行くほどアタリが強い噛み合わせになっている咬合形式のことだ。何が悪いかというと、奥歯しか噛まないので、歯が壊れるのだ。特に歯ぎしりや食いしばり等の咬合性外傷がなくても歯が壊れていく。アタリが強い奥歯から壊れていき最後は総義歯になってしまう可能性が高い。結構見かけるのだが、なぜこんなことになってしまったのか分からないことが多い。まず、顎変形症と称される先天的なもの。これを直すには歯列矯正を伴う顎の整形術になる。そして後天的なものもあって、下顎後退を伴うことが多い。この原因は、うつぶせ寝、食いしばり、頬杖等の態癖の問題によって下顎が後退し、さらに上顎歯列弓が狭くなることによりますます下顎後退位でないと噛めないという悪循環に陥る。この方の場合もこのケースかと思われるので、上顎歯列の拡大装置を装着してもらい下顎前方位で噛む癖をつけてもらうことにしている。下顎後退を伴わないケースでは親知らずが萌えてきて(生えてきて)、歯列弓が狭くなり、前歯部が前方に押し出されて開口になることがある。これは親知らずの抜歯により解決することが多い。また下顎後退位になる原因に顎関節内の関節円板が前方に脱出したまま戻らないことによるケースも見たことがある。これは顎関節症の1症状ではあるのだが、開口度には問題ない場合には自分でも顎関節に問題があることに気がつかないことがある。関節円板は軟組織なので通常のレントゲン写真には写らないので造影検査かMRIでの診断になる。この治療は顎関節症の治療と同じでスプリントを使った整復術か、奏功しない場合は手術しか無くなる。上顎拡大装置が奏功しない場合は全額ブラケット装着、上下顎間ゴムによる矯正治療しか直す方法はない。しかし、態癖が治らない場合は再発する。押し並べて、開口の原因を一言で表現すると、上下の歯列(歯の長径の合計)が顎骨の大きさよりも大きいというアンバランスに落ちいっているjと言っても良い。微妙なこれらのアンバランスがあっても正常咬合になっている場合もあるが、7番が壊れるまたは低位になるケースに出会うことがあり、これを隠れ開口とよんでいる。この方は開口だけではなく、食いしばりもあるので、咬合性外傷による歯根膜炎で苦しんでおられたがそれはナイトガード装着で落ち着いている。右上6番に歯肉縁下の歯質の欠如というか崩壊も開口に加えて咬合性外傷によるものと思われる。この手のCR充填による修復は歯肉の切除に伴う出血により困難を極める。では時系列でどうぞ