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カテゴリ:フランス料理の文化と歴史
今年の夏のキーワードは「クール・ビズ」だそうだ。冷房機器の進化が進んだのはよい事かも知れないが、地球の温暖化だとか、エネルギーの問題だとか様々なマイナス要因を含んでいるという。服装を政府率先で変えていこうとする、、、何の事はない何年も前からで取り組んでいる「省エネルック」の呼び方を変えたのである。
さぞかしネクタイ製造業などには、売り上げが伸びなくなったりして影響が出ているだろうなと考えたりもするのだが、我々ホテル、レストラン業界にとっては、「クール・ビズ」だからといって、ハイそうですかと励行するわけにはなかなか行かない。 高級フランス料理店などでは、ユニフォームはタキシードだったりする。レストランが「ハレ」の場である以上、お客様がそれなりの格好をしていらっしゃる場合、迎える私どももそれなりの装いを持って迎えるのが「礼儀」だからである。 レストランによっては「上着着用にてご来店をお願いします。」の看板を掲げている所もあり、暑いからといって簡単に看板を下ろしたりはしない。 この辺りが、日本の文化と西洋の文化、取り分け服装に関して、明治以降に洋服が普及した日本と西洋の違いではないだろうか? レストランのホールは、あくまでも公の場である。公の場で上着を脱ぐのははしたない事で、上着を脱いだ時に現れるそれはワイシャツであろうと「下着」なのであるから。 しかし、といってもヨーロッパの人々は暑さに強いのだ。といったものでは無い。長い年月において「クール・ビズ」は着々と進行してきたと言える。 上着=ジャケットはその昔、現在の学生服のような詰め襟であった。これではどうも暑いので、第一ボタンを外す。そして第2ボタンを外してみると、現代のジャケットのスタイルに近付く。 ところがこれだと胸元から下着がのぞくので、フリルやリボンで飾って隠そうとする。クラヴァットと呼ばれるが、これこそネクタイのはじまりである。 ネクタイはその後、普通に垂れるネクタイや、蝶ネクタイヘとだんだん小さくなっていく。下着であったシャツも胸に飾りを付けたり、イカ胸と呼ばれる固いプレスを当てたりして現在のワイシャツへと近付いていく。 さて、それでも上着の胸元から「ズボン吊り」が垣間見える。ジャケットが「上着」である以上、ズボン吊りは「下着」だからこれも隠さないといけない。と、いうわけでベストの誕生である。ベストは上着と同じ素材で作られ、ズボン吊りを隠すには最適だ。 スリーピースになったまではいいのだが、夏はそれでも暑い。イギリスが後に「東インド会社」なるものを設立して、インドに常駐するとなると、いくらなんでもインドではスリーピースは暑い。 そこで眼を付けたのが、インドの地元民の服装でもあった腰巻きである。これならズボン吊りは隠せるし、暑さも少しは和らぐだろう。かくして現代のカマーバンド、あるいはサッシュと呼ばれるタキシード着用の際にの腰に巻くベルトの誕生である。 私がこの業界に入った時に、当時の先輩にこのカマーバンドの事を聞いた事がある。当の先輩は、 「さぁー?チップをもらった時に入れるようにするためのモンとちゃうの?」 と、言っていた。 …あれから、10年あまり。未だにお客様からカマーバンドにチップを挟んでもらった事は無い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 25, 2005 02:52:54 AM
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