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カテゴリ:フランス料理の文化と歴史
昨日はナイフの「音」についてお話したのですが、卓上で使用するこの「ナイフ」という道具、テーブルでの使用は歴史上様々な変遷がありました。
ナイフはもともと各個人が武器として所有していたものが卓上で使用されるようになったのです。獲物を狩る道具でありまた、戦うための武器であったことは間違いありません。 当初、食卓でナイフは丸焼きにした肉の塊、(アンティエ)を切り取って食べるためであり、また、煮込みとして供された鍋の中より塊をとり出すためにも用いられました。 こういった宴席に集まった客人に料理を切り分けて振舞うことは招いた館の主人の仕事であり、現代でいう「デクパージュ」の技術を習得する事もたしなみでした。後々に切り分け職人「トランシェ」が登場し、また、宴席そのものをを主人に取って変わってプロデュースする者が現れます。これが現在の「メートル・ド・テル」の始まりです。 豊かな時代が続くと、ナイフなどは危険な道具という認識が強まり一時期、ナイフの使用頻度は減少しました。さらにルネッサンスの波とも重なり、人間の野蛮性が敬遠される風潮の時期もあったのです。 しかし、17世紀中盤になると再びナイフはテーブルに登場することとなります。要因は3つありました。ひとつは様式美の確立です。ルイ14世から始まる様式美は「シンメトリー」、左右が美しく調和する形にテーブルをセッティングすることを重んじられるようになった事です。二つめに、ロシア式サーヴィスの広まりでした。個人個人の料理を順に出すというこの方法は切り分けを行う必要が無くなってきました。また、過去の慣習のように料理を突き刺したりする事が無くなり、「危険な」ナイフとは一線を画してきたため、その形状は切っ先が鋭くなくなってきたのです。 そして第三に食器の発達です。リモージュ、マイセンに見られるようにヨーロッパ圏内において磁器が量産できるようになった事は、それまで卓上の皿の上でナイフを使用できないというジレンマを破ったのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Sep 5, 2005 02:55:50 AM
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