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カテゴリ:フランス料理の文化と歴史
(6月20日の日記の続き)
先日から、「シリーズ・テーブルマナー」と題したカテゴリーを設けるようになりました。 お客様へのアプローチへの取っ掛かりとして、「マナー」と言うのは非常に興味をそそる題材のようです。 そもそも、根本的に違うのは、日本を含む東洋の食事の風景が、「箸」という2本1対の道具だけで事が進むのに対して、フランス料理、ヨーロッパにおける宮廷料理から派生したものは、「フォーク・ナイフ」を基本に、「オードブル用、魚用、肉用」など細かに分類されていることです。 この事のベースにあるのは、日本とヨーロッパの比較に関してだけ述べるのならば、 「人間みんな平等に優れているから道具の種類は変えなくても良い」 とする日本と、 「人間はそれぞれに様々だから、道具の方を目的にあったものを揃えてあげるのが平等だ」 とするヨーロッパ。それぞれの歴史に基づいた意識の違いがあります。 「テーブルマナー」というものをつらつらと考えていて、ふと思ったのですが、そういえば現代から2600年前、既に洋の東西における食習慣に着いて書かれた文献がある事を思い出しました。 小難しい「文献」ではありません。「イソップ寓話」です。 イソップの寓話の中に「キツネとツル」という物語があります。 「キツネがツルを食事に招きました。 出したのは、平たい皿に入れたスープ。ツルの長くて細いくちばしでは、味さえもわかりません。 キツネはその前で、美味しそうにそのスープを、なめてしまいました。 今度は、ツルがキツネを食事に招きました。 キツネが行ってみると、出てきたのは口の細いつぼにつまった豆でした。 キツネはお腹をすかせたまま、ツルがくちばしを突っ込んでお腹いっぱい食べるのを見ているだけでした。」 イソップという人物は紀元前6世紀の古代ギリシア、サモス島の哲学者クサントゥスの奴隷でした。 数々の伝説があり、その物語のいくつかも後世においてイソップの名で創作されたものも多いようです。 奴隷の「言葉」によるものが長い歴史の中で埋もれずに残ってきたわけですが、この「奴隷」というもの、非常にショッキングな話かも知れませんが、 「奴隷=サーヴィスマン」だったのです。 「サービス」も「コンシェルジュ」もその語源は「奴隷・(サーバント)」と意を同じくするわけですが、、、 (話が長くなるので、このテーマは次の機会に書きます。) 話を元に戻して、この寓話は「意地悪したら、仕返しされる」という教訓をもって使われることが多いようです。ところがよくよく考えてみると、「食文化における西洋と東洋の差異」を表しているのではないでしょうか。 キツネはほとんどのイソップ寓話の中では為政者、または狡猾な自由市民を比喩として登場する動物でしたが、この物語の中では、平皿を使う西洋の食文化の例えとして、また、ツルはその容姿から箸の文化、日本を含めた東洋の食文化を表しているとも考えらるのでは無いでしょうか。 古代ギリシアでのお話ですから、何故に「ツル?」なのか考えてみると面白いものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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