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カテゴリ:フランス料理の文化と歴史
日常口にするお肉にも好感度の調査があったなら、やはり牛肉の支持率が1位でしょうか。次いで豚肉、鶏肉と続き仔羊、その他のジビエ類と続くのかもしれません。
好感度調査では2位に甘んじてはいますが、もともと豚は人間の歴史の中でも最も古い家畜と言われています。それこそ新石器時代と呼ばれる紀元前6000年前には農耕の始まりと共に、土着の猪を飼いならしたのがそもそもの始まりだとか。日本でも弥生時代から豚を食用としていた、という記述があります。 フランス、ドイツ、イタリア各のヨーロッパの国々において、豚は中世の時代より食生活の中心でありました。 豚肉の脂身にはオレイン酸やステアリン酸など悪玉コレステロールを下げる効果のある脂肪が多く含まれビタミンB1の豊富さは他の食肉に比べても特に顕著です。糖質や脂質の代謝を円滑にし、脳細胞や神経細胞の働きを補助する。と、いうことは豚肉を食べると頭がよくなるのでしょうかね? 古代ローマの博物学者プリニウスの言葉から引用すると 「ほかの動物はたったひとつの味しか持たないのに、豚肉には50もの異なった風味を一身に兼ね備えている。」 パテや、ソーセージといわれるお肉の加工品を扱うお店を、フランスでは「シャルキュトリー」と呼ぶようにひとつの名称にもなっています。 豚は秋から冬にかけてドングリなどの木の実を食して太って来ますので、古来は冬が来る前に豚をお肉にしていました。もともとクリスマスにはお祝いには「豚」を食べていたのです。ブーダンと呼ばれるソーセージと、リンゴがクリスマス料理の代表でした。 フレッシュな豚肉とはクリスマスの日を前後とした時期にしか口に入らないものであり、七面鳥を食べるようになったのはアメリカ大陸が発見された後のことです。 すると、次の春から秋までは豚肉は塩蔵品で食いつないでいくという、慣習が生まれてきます。保存食品としての形態が様々に考案され、ベーコンや、ソーセージ、ハム、などが生まれてきました。 ベーコン、ソーセージ、ハム、いずれも基本的には豚肉の加工から派生した食べものです。 日本において豚肉を使った加工品が登場するのは江戸時代末期、長崎に住んでいた中国人がハムを作っていたという記述も残っています。 その後の日本ではドイツ人から学んだ加工技術が主流を占めていたため、日本でソーセージやハムというとドイツ風に燻製したものが多く、それを基に発展、認識されてきました。 塩をまぶしたモツや屑肉を豚の腸に詰めたものがソーセージです。 ソーセージの「ソー」はラテン語で「塩」のこと、「セージ」はハーブの一種セージの葉に由来します。 背中の脂身の多い部分を塩漬けにしたものがラードでありベーコンでした。ベーコン(bacon)とは back(=背中)と同じ語源で体の部位を指す語だったのですが、現代ではわきばら肉の塩漬けや燻製加工した塊の肉を指してベーコンと言うようになりました。 ハム(Hum)はフランス語でジャンボン、スペイン語でハモン。ハムというのも本来はベーコンと同じく「豚のモモ肉」の部位を指していう言葉です。ロースハム、ショルダーハムというのは日本で作られた単語のため英語圏ではあまり見かけない和製英語となっています。 生ハムが「生」であるのは燻製していない肉という意味で区別してあるということです。豚のモモ肉を丸ごとハーブやスパイスを加えた塩に漬け込んで、脱水が進めばあとは風通しの良い場所で何年にも渡って熟成させます。スイスとイタリアの国境のアルプス山脈、またフランスとスペインの国境に横たわるピレネー山脈の麓などで上質の生ハムが生産されるのもこの山肌を駆け下りてくる風が熟成を進めてくれるからです。 肉の熟成が進むと、タンパク質は豊富なアミノ酸に変化します。これが旨味となるのです。 スペイン産のハモン・イベリコや、イタリア産のサン・ダニエーレ、フランス産のジャンボン・バイヨンヌなど特産品はこのそれぞれの地域の気候に負う所が大きいといえます。 生ハムはそのプレゼンテーションもさることながら、フランスだけでなくヨーロッパの風土を感じられる郷土色豊かな食材とも言えます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Aug 4, 2006 10:50:48 AM
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