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カテゴリ:サーヴィスの理論と哲学
ウチの店の傾向がそうなのか、或いは私が会話することが多いから
なのか、お越しになられるお客様の中にお医者様が多く見られます。 お医者様の世界には「学会」という各々の研究の成果を発表したり、 討論したりする会議があって、毎月のように全国で開催されており、 ここ京都で開催される際には、ありがたいことにいつもご利用 いただく先生もいらっしゃいます。 先生方が皆様、こぞって学会へ足を運ぶのはやはり人の命を預かって いるという職業柄、最先端の技術や研究の成果を知っておかなければ ならない、求めなければならないといった使命感からもあるそうです。 ここ最近は、人間としての研究もさることながら、AI技術の発展や 医療ロボットの発達も目覚ましく、最新の医療とは手術でも診断に おいても機械を正確に使えることが、医者として最も必要な技術と されてきているようです。 「だからね、これからの医療はロボットがいかにうまく使えるかが 医者に必要とされる事なの。手術でもね、人間だったらさぁ、 手が滑ったり、間違えたりするじゃない。 ミリ単位の手術なんて、正確に執刀するのはロボットの方が確実でしょう。 『私、失敗しませんから』とかって、あれはテレビドラマだけの話で、 未来の手術は人の困難な技術に頼らずに、ロボットが執刀するように なっていくわ。そのうち診断もちゃんとどこが悪いのか機械が 見つけてくれるようになると思うの」 お客様としてお越しいただいた先生は仰いました。 「・・・でもね、医者という”人”は居なく無くならない。 居なくちゃいけないの。 それはね、怪我をした人が病院に来た時に、具合の悪い人が 訪れた時に『痛かった?もう大丈夫よ。』『頑張ったね』 って人間の声を掛ける事や、手のぬくもりを感じさせることが ”人”にとって一番大切な癒しとなるのだから。」 科学の発達や、技術の進歩は確かに目覚ましいものがあります。 今後数年で多くの職業がAIや高度な機械に置き換わるという予測も あるようです。 しかしながら、ホスピタリティという「人間」が「人間」にしか 与えることのできない、この価値は「人」がこの世の中に存在する限り、 ずっと在り続けるものだと思います。 「今日はお越しいただき、ありがとうございました。 どうぞお帰りはお気を付けて。 またお会いできますことを楽しみにしております。」 レストランにおいてもホスピタリティとは、 お客様をお見送りする際のささやかな言葉や表情かも知れません。 それが、人が人に与えうることのできる、最も尊いものですね。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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