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カテゴリ:政治
小沢氏に外交・安保政策は任せられない(1)
日本政策研究センターホームページからの抜粋です。 傾聴に値する主張です。 そもそも「日米同盟の重点は安保ではない」「拉致問題は解決しっこない」と言う人物に、対外・安保政策を語る資格があるのだろうか。 小沢氏は今、「生活が第一」と繰り返し、高速道路の無料化や「子ども手当」など、国内政策だけを語っている。しかし、仮に小沢氏が政権をとった場合、直ちに直面する問題はむしろ対外関係ではなかろうか。最近、段階的に公約を実施していく「工程表」なるものを宣伝しているが、対外関係に「工程表」はなく、文字通りの待ったなしだからである。 ところが、小沢氏が三選された際、「首相候補指名受諾演説」という位置づけで行った演説のなかで、対外関係について触れられているのは、「地球環境の保全と国際社会の平和で、日本が地球のために頑張る仕組み」を作るというたったの一言しかない。代表選で提示した「政権構想」でも、外交・安保政策は「強固で対等な日米関係を築くとともに、アジア諸国と信頼関係を構築する」「国連の平和活動に積極的に参加すると同時に、国連改革を推進する」という具体性のまったくない二項目しかなかった。 ◆「従米」から「反米」へ? かつて小沢氏はこう言っていた。 「外交に関する私の一つの信念は、アメリカとの緊密な同盟関係を堅持することである」(『日本改造計画』平成五年) 「諸外国との関係の中でも、いちばん大事なのが日米関係です。(中略)そのアメリカが弱くなってきて、いろいろ注文をつけている。その全部が正しいわけじゃないけど、今度は日本が協力すべきです。(中略)可能な限り、要求に応えるべきだと思うね。それを『従米』というなら、じゃあ日本が平和に豊かに生きていくには、他にどんな方法があるというんですか」(『語る』平成八年) 自民党時代は、湾岸戦争では自衛隊派遣を主張し、もっともアメリカに近い政治家とも言われ、その言説は自由党時代も続いた。そのため平成十一年には鳩山由紀夫氏(当時民主党幹事長代理)からは「アメリカに魂まで抜かれた」とまで批判されている。 ところが、いつの時点からかははっきりしないが、少なくともブッシュ政権によるイラク戦争以降は一転してアメリカ批判へと変わる。 「米国のブッシュ大統領は、『これは米国の戦争、自衛戦争だ。従って、国連の決議はいらない』と啖呵を切ってアフガン戦争をはじめました。しかし、実際には当然ながら、米国単独では収められず、国際社会に助けを求めているのが現実ではないでしょうか」(『世界』平成十九年十一月号) ◆「日米同盟の重点は安保ではない」? そもそも小沢氏は自民党時代の『日本改造計画』当時から、自衛隊とは別の国連待機軍構想など国連による国際安全保障を主張する「国連信仰」の持ち主としても知られ(それへの批判については小誌前月号を参照いただきたい)、それゆえ彼の米国批判は国連決議を伴わずにイラク戦争を遂行した、〇一年の同時多発テロ事件以降のブッシュ政権に対する批判ではないのか、と解する向きもある。 果たしてそうだろうか。ここ数年の小沢発言には、単なるイラク戦争批判に止まらない変化を窺える発言が節々に見られる。 例えば、日米同盟自体に対する認識である。もともと、小沢氏にとっての日米同盟は安保関係が大前提だったはずだが、三年前には「実は、日米同盟の重点は安保ではない。みんな軍事面ばかりクローズアップするが、日米同盟の強化はもっとほかにやることがいっぱいある。経済の緊密化は特に重要だ」(平成十七年一月)と言っている。 さらに、小沢氏は最近になって日米中の三国は「正三角形」の関係でなければならないなどとも言い始めている。昨年七月、民放の報道番組で「(日米中が)正三角形になって日本が扇の要になる関係でなければならない」と述べ、「日中関係は日米関係に負けじとも劣らず大切だと考えている」(「剛腕コラム」六月三十日)とも述べている。 前者はかつて日米安保は軍事同盟ではないと発言して問題化した鈴木善幸首相を、後者は加藤紘一氏を連想させる。 こう見てくると、最近の小沢発言は、単にイラク戦争批判ではなく、日米同盟批判、対米批判の性格を色濃く含んでいることは明白だろう。 ◆「論座」、「世界」そして「週刊金曜日」 小沢氏と言えば、かつて湾岸戦争で自衛隊派遣を主張し、さらに先に紹介したように、「可能な限り、(アメリカの)要求に応えるべき」だといっていたことがイメージとして残っているが、実は、その後、自民党を離れ野党政治家として活動していた十五年のうちに、このように大きく変質していたということである。 しかも、それは左旋回と言えるものでもあった。 例えば、自由党が自民党との連立から離脱した直後の平成十二年十二月、土井たか子・社民党党首(当時)が、民放番組でこんなことを話している。 「(小沢氏と)お会いしました。一度ではありません。今まで憲法観が違ってたから、お互い違うということでやってきた。ただ憲法観の違いに立って、小沢さんは最近、憲法九条や前文は今のままで変えるべきでないと言ってる。両極端は一致するという言葉が世の中にあるが、『エエーッ』と私の方がもう一度聞き直すような具合だ」 この頃から小沢氏は、明らかに左翼リベラルと目される媒体に登場するようになる。例えば、朝日新聞の『論座』であり、岩波の『世界』でである。『世界』ではイラク戦争批判を本格的に展開した。 そして、民主党時代となると、横路孝弘氏らの旧社会党グループとの間で「日本の安全保障、国際協力の基本原則」という合意文書を締結するまでに至る。 この文書では、状況認識として「いまのままでは自衛隊は米国について世界の果てまでも行ってしまう危険性が高い。政府自民党による無原則な自衛隊の派遣に歯止めをかけなければいけない」と米国の行動とイラクへの自衛隊派遣を批判したうえで、「自衛隊は憲法九条に基づき専守防衛に徹し、国権の発動による武力行使はしないことを日本の永遠の国是とする」と明記し、そのうえで、合意事項として「憲法の範囲内で国際貢献するために、専守防衛の自衛隊とは別の国際貢献部隊を作る」などが挙げられている。 いわば、小沢氏の持論と旧社会党グループとの折衷案とも言えるものなのだが、結局、小沢氏の変節の結果は、単に小沢個人の見解ではなく、党内グループ間の合意事項として文書化にまで至ったと言うべきだろう。 そればかりか、先に紹介した「日米同盟の重点は安保ではない」との発言は、実は『週刊金曜日』誌上で行われたものである。『週刊金曜日』と言えば、あの筑紫哲也や佐高信、故・小田実等が編集委員をつとめる、左翼運動のための週刊誌。小沢インタビューの聞き手は、南京「虐殺」の中国側主張を何の検証も加えずに、あたかも事実であるかのように記事にした元朝日新聞の記者・本多勝一だった。本多は、「インタビューを終えて」として「正直な話、かなり基本的な認識で小沢氏と共通するとは意外だった。……(小沢氏は)論理の一貫性でも明晰な頭脳が感じられ、小泉首相のような馬鹿とは桁が違う」と賞賛してもいる。 むろん、これらはすべて政権奪取のための方策として理解している向きもある。しかし、仮にそうだとしても、小沢氏は既に引き返せない地点まで旋回してしまったことは間違いない。 民主党政権になれば、外国人参政権問題や人権擁護法案などが危ないと言われているが、これでは対外・安保政策でも何が飛び出してくるか分かったものではない。(つづく/日本政策研究センター所長 岡田邦宏) 〈『明日への選択』平成20年10月号より〉 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.10.13 07:38:10
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