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カテゴリ:政治
小沢氏に外交・安保政策は任せられない(2)
日本政策研究センターのホームページからの抜粋です 傾聴に値することだ ◆「拉致問題なんて解決しっこない」 もう一つ、心配されるのが対北朝鮮政策である。拉致問題が最重要課題だが、金正日の重体情報が流れ、政権自体の崩壊すらささやかれるほど、まったなしの課題でもある。 ところが、北朝鮮問題を巡る小沢氏の言説はどう見ても理解しがたいところがある。例えば、拉致問題を巡る経済制裁についてである。 平成十六年、小沢氏は「民主党の中にも経済制裁と言う人がいますが、それをやったときに一番被害を受けるのは、つまり北朝鮮の国家テロの攻撃対象になるのは日本であり、日本人なのです。その覚悟があってやるのなら大賛成ですよ」(『日本が動く時――政界キーパーソンに聞く PART4』)と皮肉混じりかもしれないが、決して経済制裁を否定していない。 ところが、その二年後に経済制裁が現実化し始めると、「(制裁は)日本一国で行うことでは限度があるということ。そのためには世界全体の共同作業でやらなければ、実際の制裁というのが効果を持たない」(平成十八年七月十八日・定例記者会見)と言い始めた。結局、制裁は意味がない、だからやらないと言っているとしか読めない。さらに、今年に入ってこんなことも言っている(四月十七日、釧路での講演)。 「北朝鮮の拉致問題、北朝鮮の問題もしょせんは中国問題。いくら北朝鮮に言ったって、日本なんか相手にしないとは向こうも言っているが、拉致問題なんて解決しっこない。北朝鮮問題というのは中国問題だ。中国は朝鮮半島の現状維持をその国策にしている。金正日の今の政権を良いとは思っていなくても、それを変えようという気はない」(引用は産経新聞阿比留記者のブログから) ◆真っ赤なウソ やはり小沢氏の北朝鮮認識にはどこか腰が引けているとしか言いようがないところが見受けられる。その理由は分からないが、小沢氏にとって北朝鮮問題の原点ともいうべき事件がどこかで影響しているのかもしれない。 平成十六年の第二次小泉訪朝では、先に帰国した拉致被害者の家族が帰国したのだが、小泉首相は食糧支援なども同時に約束した。これを小沢氏は「一〇〇億円相当もの身代金を誘拐犯の親玉に持って行って、ご機嫌うかがいしながら、人質をようやく連れ帰った」と痛烈に批判した(毎日新聞・五月二十八日)。その上で、彼は小泉首相の再訪朝は「政治家として恥を知らない行為であり、売国的行為だ」とまで言った。 しかし、その談話の最後の部分を読んで驚かされた。 「僕も(自民党幹事長在任中の)九〇年十月、北朝鮮に出向いて交渉した経験がある。あの時は(北朝鮮に抑留されていた漁船)『第十八富士山丸』の船長さん(紅粉勇氏)たちの救出が大きなテーマだった。深夜にたたき起こされ、北朝鮮側が『船長らは犯罪を犯した、と文書に明記しなければ帰さない』と言ってきたと知らされた。 僕は『バカなことを言うな、絶対に書くな』と押し通した。その声が隠しマイクで(北朝鮮側に)聞こえたらしく、交渉に戻ったら北朝鮮側が折れてきた。政治家は主張すべきことは、きちんと主張しなければならない。小泉首相には、日本の代表としての自覚がまったくなかったと言わざるを得ない」 つまり、小泉首相は何も主張しなかったが、自分は主張すべきは主張し、北朝鮮側が折れた、というのである。冗談ではない。これは真っ赤なウソである。 第十八富士山丸事件というのは、一九八三年に北朝鮮人兵士の密航を助けたというぬれぎぬをきせられ、船長ら二人の日本人が八年間にわたって北に抑留された事件である。九〇年九月になって、金丸信を団長とする自民・社会両党訪朝団が訪朝し、二人の帰還について「前向きの回答」を得た。この金丸訪朝団は、その際に自民・社会・朝鮮労働党の三党共同声明を出し、過去の「不幸と災難」ばかりか「戦後四十五年の損失」についても日本が「謝罪し、補償する」という、これこそ「売国的」な共同声明を出したことで知られている。 小沢氏は、土井たか子社会党委員長とともにその直後に訪朝し、抑留されていた二人の日本人が解放された。小沢氏の話はこのときのことである。しかし、小沢氏の話はまったく逆である。そのとき、小沢・土井両氏が書いた北朝鮮宛の「礼状」がそのことを雄弁に語っている。 「……今般、朝鮮民主主義人民共和国政府は、共和国の法律を侵害した罪で十五年の労働教化の刑罰を受け、服役中の第十八富士山丸の紅粉勇船長と栗浦好雄機関長を、人道主義的見地から大赦令を実施し、釈放のうえ、日本に帰すことにしました。 自由民主党と日本社会党は人道主義的立場から第十八富士山丸船員に対して寛大な措置をとられた朝鮮労働党と朝鮮民主主義人民共和国政府に深い感謝の意を表します。 自由民主党と日本社会党は、この際、両名が共和国の法律を二度と侵害しないようにし、帰国後、両名の言動が日朝友好関係発展に支障を与えることのないようあらゆる努力をすることを約束します」 小沢氏は「押し通した」「北朝鮮側が折れてきた」というが、これは誰が読んでも「船長らは犯罪を犯した」との確認をしたうえで、北の「寛大な措置」を有り難く受けるという文書である。しかも、帰国後「日朝友好関係発展に支障を与える」ような発言はさせませんとの、不当な約束までしている。この文面に「北朝鮮側が折れてきた」形跡など見られない。しかし、小沢氏はこの文書を自らの成果として理解しているようなのである。 かつて、こんな「礼状」ならぬ謝罪文を書かされた人物に、対北朝鮮交渉が可能だろうか。そもそも資格があるのだろうか。疑わざるを得ない。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏) 〈『明日への選択』平成20年10月号より〉 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.10.15 06:43:44
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