かえでが3歳になって、近くに出来た『こども発達センターつくし(仮名)』の母子通園の募集があり、
さっそく応募した。
母子通園というのは、それまでも行っていた保健所の親子教室の、
少し規模が大きくなったようなもの。
4歳になれば定期通園が出来るらしい。
いわゆる障害児向けの保育園での、入園前の一年間、
母子で楽しんで慣れましょうという教室だった。
保健所よりも本格的な療育をしてもらえるし、
私の住んでいる市と周りの市町村での募集だったので、応募がかなり多かったらしい。
こんなに療育を必要とする子が多いのか!とびっくりした。
もっとびっくりしたのは、その説明会で従妹が来ていたこと。
「なんで~?」と二人で顔を合わせて驚いた。
従妹は「うちの健ちゃん、ダウンなの」
「そっか・・・うちは自閉症なのよ」
「そうだったんだ。お互い全然気がつかなかったね」
みんな隠したいんだよね。
親が我が子の障害を認めたくない時期は、前向きになれないんだもん。
できれば隠してひっそりと暮らしたいと、ネガティブに考えてしまう。
従妹の子(健ちゃん)と、うちのかえでは、揃って週1回の母子通園に参加することになった。
健ちゃんは、かえでより2歳年下だけど、ダウン症だから社会性があるので、
先生や他のお母さんにもニコニコ笑いかけ、たちまちみんなのアイドル?になった。
かえではというと、みんなで輪になってお母さんの膝に入って手遊びをしていても、
すぐにトランポリンや、三輪車などの遊具の方へすっ飛んで行ってしまい、
何度も何度も連れ戻す。
ほかにもそういう子は何人もいたけど、なんだか情けなくて、
終わってから泣けてしまうこともあった。
比べちゃいけないけど、どうしても比べてしまう。
先生との面談があり、私の思いを正直に言った。
「毎日が辛くて、どうしていいかわからないです。
いろんな教育法は取り入れて、頑張っているつもりですが
今ひとつ手応えがなくて、焦っています」
先生は、
「今までの自閉症児に対する療育って言うのは、けっこうスパルタ式が多かったんです。
でもそういう療育をした結果、思春期以降にすごく荒れてしまう子がいて、
いろんな先生が研究した結果、今のような優しくその子の気持ちに沿いながら
少しずつ社会のルールを教えていく方法が取られるようになったの。
でも今は、まだ研究段階で、その方法が良いかどうかはわからない。
見ていてイライラするかもしれないけど、
ここは長い目で見て、じっくり関わってあげましょう。
かえでくん、はじめは手遊びも無関心だったけど、今日は楽しそうに見ていたね」
そう言ってくださった。
本当にそれで良いと言うのなら、この際、じっくり関わってみよう。
ここでしっかり療育してもらおう。
辛くなったら、ここで私たち親子を、まるごと包んでもらおう。
もちろん、まだ焦る気持ちはあったけど、
それまで背負い込んでいた両肩の荷物を、少しだけ軽く出来たような気がした。