革の基礎知識高品質でお手頃な革製品 -> 革の基礎知識1.皮と革皮は、人間の手で革に変えなくては材料として使いものになりません。 動物の「皮」は、そのままでは腐敗しやすく、使用に耐えないため、「なめし」という化学処理が施されます。 その後、必要に応じて、型押し、塗装などの仕上げが行われ材料の「革」になり、最終的に革は縫製されて、財布や鞄などの製品の形になるわけです。 原料の皮、なめし方、仕上げの違いによって、安価なものから高価なものまで沢山の種類の革が生まれます。 革には適材適所があるので、必ずしも高価なものが用途にあっているとは限りません。 鞄ですとある程度の耐久性、耐水性が求められますし、革小物は頑丈すぎても使いにくくなってしまいます。 2.革製品の価格の決まり方原料の皮自体は、食肉の副産物ですが、革製品は高価なものが多いですよね。なぜでしょうか? 革製品には、以下のようなコストが含まれます。そのため高価になる場合があります。 ・原料皮のコスト ・皮革製品の材料として使える革に処理するためのコスト ・縫製にかかるコスト ・包装に必要なコスト ・各工程、流通過程で業者が添加する利益 ・ブランド料 ●原料皮のコスト 革製品は、主に動物の皮が原料ですが皮を取る目的で殺されることは、一般的にありません。 あくまで皮は肉の副産物です。そのため、牛革が供給量が多くなり、比較的安価に手に入ります。 ・食肉として消費される量が多い動物の皮ほど安価。 ・大型の動物の方が、一頭から取れる皮の面積が大きいため安価。 ・若い動物の皮ほど、キズ、シワが少なく、取れる面積も小さいため高値。 供給量が少ない関係で、コードバンやオーストリッチはどうしても高価になってしまいます。 ●原料皮を処理して革に加工するためコスト 皮はそのままでは腐敗してしまうので、化学処理され腐敗し難い「革」に加工されます。(「なめし」と言う。) 当然、工数や時間が掛かる処理がされた革ほど、価格は高くなます。 「植物タンニンなめし」は、時間がかかるなめし方で、「クロムなめし」よりコストが掛かると言えます。 また、手作業の工程が多くなったり、染色に手間を掛けた場合もコストが上がります。 ●製品化するためのコスト 革は、裁断され、ミシンなどで縫製されて、鞄、財布などに仕上がります。この工程は、基本的には手作業です。 まず、材料となる革から、必要なパーツを切り抜くのですが、天然の材料である革には、キズ、シワが含まれる場合がありますので、その分を避けて製品化した場合、廃棄した部分のコストも製品には上乗せされます。 製品のよっては、ただ縫製するだけでなく、革の切断面を磨いたり、コテで溝を引いたりする作業も必要になります。ファスナー、金具などの部品が使われることもあり、当然これもコストに計上されます。 包装され、箱に収められた状態で販売されます。 ●革自体の価格は、意外に高くない 「革=高価」というイメージがありますが、実は革自体はそれ程高くありません。所詮、廃棄物の再利用ですから。 むしろ下手な革よりも「クラリーノ」などの人工皮革の方が高価です。 革の面積の単位として「デシ」と言う単位が使われますが、1デシ=10cm×10cmです。 革を個人でも買えるクラフトショップで購入したとしても、牛革の良いもので1デシあたり150円程度、コードバンでも、良いもので1デシあたり400-500円程度です。 値段は品質のよって多少開きがありますが・・・。 例えば、財布1つ作るのに10デシ程の革が必要と言われています。(総革作りで20デシ~25デシ) 隠れた部分や裏地に革を使うか否かで必要な革の面積は変わりますが、面積が分かれば材料費の大よその見当が付きますよね。 計算してちょっとガッカリしませんでしたか? 実際には、用意した革すべてが使われる訳ではなく、捨てる部分もあるので、その分も価格に転嫁する必要があります。 革の良い部分だけを選んで使った製品ほど、捨てる部分も多くなりますから、当然、革の原材料費は高くなります。 しかし、材料としての革の原価はこんなもんです。 3.革の構造一般的に、革は層状の断面を持ち、表面が滑らかで、動物特有の模様が現れる「銀面」と呼ばれる層の下の繊維が網状に絡まった「床面」と呼ばれる組織があります。 通常は、製品の表に「銀面」がくるように使われますが、スエードなどは、「床面」が表に来るように使われます。 ※例外的にコードバンは1層構造です。 4.原料皮の分類原料となる皮を分類してみました。 原料に使われる動物のことは知っていても、細かい分類があることは意外に知られていません。 皮が動物の年齢や雄雌で細かく分類されており価格が違います。同じ牛革でもカーフとステアでは、カーフが高価です。 ●牛革 原料となる牛の性別、年齢などで分類され、カーフスキンが最上級となれます。 年齢が若い牛ほど柔らかくきめ細かい皮が取れますが、皮の層が薄いため強度は劣ります。 ・カーフ・・・生後6ケ月以内の牛の皮で銀面がきめ細かく、キズも少ない。仔牛なので取れる量も少なく貴重。 ・キップ・・・生後半年から2年くらいまでの牛の皮。比較的きめ細かく、キズも少ない。カーフより厚みがあり、強度がある。 ・カルビン・・・生後2年以上の雌牛で未産のものの皮。品質はキップとステアの中間。 ・カウ・・・生後2年以上の雌牛の皮。品質はキップとステアの中間。 ・ステア・・・生後3~6ケ月以内に去勢した雄で、生後2年以上を経たもの。最も流通が多く、一般的に牛革といえば、ステアハイドを指します。 ・ブル・・・生後3年以上の去勢されていない雄の皮。肌目は粗いが丈夫。 ●羊革 ・ラム・・・生後1年未満の仔羊の皮。肌目が細かく、軽くて柔らかい。 ・シープ・・・ラムには劣るが肌目が細かく、軽くて柔らかい。比較的丈夫。 ●山羊革 ・キッド・・・仔山羊の皮。薄く、軽くしなやかで丈夫。 ・ゴート・・・毛穴に特徴があり、繊維が緻密で強度がある。弾力性もある型崩れしにくい。 ●豚革 日本では唯一国内供給でまかなえる皮です。ライナー(裏地)などに良く使われます。 ・ピッグ・・・耐摩耗性、通気性に優れる。 ●馬革 馬革は、強度が高くないので、革として使われるのは比較的強度が高い背中からお尻にかけての部分です。 例外的にお尻の部分には「コードバン」と呼ばれる繊維が緻密な層があり、強度が高く、エナメルのような光沢を持った貴重な革が取れます。 ・ポニー・・・小型の馬の皮。薄く、柔軟性がある。牛革より繊維が粗く強度は劣る。 ・ホース・・・薄く、柔軟性がある。牛革より繊維が粗く強度は劣る。 ・コードバン・・・繊維が緻密で牛革の3倍の強度があると言われる。1層構造ため銀面が剥離することはなく、エナメルのような光沢を持ち、表面は滑らか。流通は少なく貴重。 ●鹿革 日本でも鹿革は古くから使われてきました。 ディア・・・手袋などに使われる。油なめししたセームが有名。セームは耐水性があり、洗濯もできる。 ●バッファロー(水牛) 水牛の革を指す。アメリカバッファローではない。 ●パイソン ニシキヘビの皮 ●バイソン アメリカバイソン(アメリカバッファロー)の皮。 ●オーストリッチ ダチョウの皮。 5.なめし方による分類原料皮は、腐敗を防ぐために「なめし」という化学処理を行います。よく使われるのは、硫酸クロム塩を使用する「クロムなめし」と植物から抽出したタンニンを使用する「植物タンニンなめし」です。 植物タンニンなめしは、伝統的な方法で、植物から抽出されたタンニンを用いてなめしますが、仕上がりまで1ヶ月~3ヶ月、場合によってはそれ以上の時間が掛かります。 クロムなめしは、仕上げまで2週間~4週間とあまり時間が掛からないため生産性が高く、取扱いやすい革に仕上がりますので現在主流です。 ●クロムなめし クロム化合物でなめされたもの。なめしにかかる時間が短く、生産性の高い方法です。仕上がりまでは、2週間~4週間程度です。 クロムなめしの革は、比較的柔らかく、水にも強く変色しにくく、表面はキズ付きにくくカビも生えにくいので、非常に扱いやすい革になります。 クロムなめしの代表的な革は、ボックスカーフなどです。 ●植物タンニンなめし 植物タンニンでためされたもの。なめしの工程で時間がかかるため生産性が低い。仕上がりまで1ヶ月~3ヶ月、場合によってはそれ以上の時間が掛かります。 丈夫で伸びの少ない革に仕上がりますが、吸水性が高いため水も乾燥も禁物です。表面はキズ付きやすく、日焼けや変色もします。 扱いにくい革ですが、使っているうちに、柔らかくなり、光沢や色合いが増し味わいのある革になる点が魅力です。 また、植物性のタンニンを使用するため環境にやさしい点も評価されています。 植物タンニンなめしの代表的な革は、ヌメ、ブライドルレザー、コードバンなどです。 ●混合なめし 植物タンニンでなめされた後、クロムなめしを施したもの。タンニンなめしの欠点を補う効果がある。 6.仕上げのよる分類なめされた革は、表面を滑らかにしたり、色や模様をつける仕上げが行われます。なめしと同時に染色が行われる場合もあります。 ●素仕上げ 表面に加工を施さない。革本来の魅力が楽しめる反面、表面のキズ、しわなどが目立ちやすい加工です。 ・ヌメ・・・植物タンニンなめしの革をローラー等で表面を磨く程度の処理で仕上げたもの。染色されることもある。 ●ロウ、オイル処理 革本来の魅力が楽しめる反面、表面のキズ、しわなどが目立ちやすい加工です。 ヌメ革の後処理として行われることが多い。 ・ロウ引き・・・ロウやパラフィンを塗って、強化したもの。ロウ引きの一種としてはブライドルレザーが有名。 ・オイル(ド)レザー・・・革にオイルを加え耐水性と柔軟性を持たせたもの。 植物性や動物性のオイル、鉱物油、蜜蝋、獣蝋など様々オイル、ロウが使われる。 ●起毛処理 ・スエード・・・牛革、山羊革などの床面をサンドペーパーで毛羽立てたもの。 ・バックスキン・・・鹿革の銀面を削って毛羽立てたもの。 ・ヌバック・・・革の銀面を毛羽立てたもの。 ●染色 顔料や染料の塗布、スプレー染色(吹き染め)、オイル染色、水染めなど様々な方法で色が付けられます。 顔料や染料を塗布しただけの丘染めでは、色が付くのは革の表面または表層だけですが、オイル染色、水染めなどでは、革の奥のまで染料が染み込んでいます。 革の内部まで染色することを「芯通し」と言います。 顔料を表面に塗りこむ手法(塗装と言った方が良い)では、表面に皮膜が出来るため、比較的水に対して強くなります。また、表面のキズを隠す効果もあります。 水染めは、主にタンニンなめしの革に対して行われ、革を染料で染め上げます。その為、色ムラが出来やすい傾向があります。 水染めの革は、水に弱く、水に対しては注意が必要です。 ●その他の処理 ・ガラス張り・・・クロムなめし革の表面にガラスを張って乾燥させて後、表面をサンドペーパーで削ってに、塗装しツルツルに仕上げたもの。合成樹脂塗装が行われることが多い。 ・グレイジング(ガラス磨き)・・・表面をガラスで磨いたもの、表面のキズ、シワが消え、滑らかになり光沢が出ます。 ・エナメル革・・・革の表面に樹脂を塗布して光沢を持たせたもの。 ・アイロン・・・アイロンで仕上げ、光沢を持たせたもの。 ・型押し・・・プレスで種々の型を押し付けたもの。 ・シュリンク・・・薬剤等で革を縮ませ、しわを目立たせたもの。 ・手揉み・・・手で揉んで、しわを目立たせたもの。 ・アニリン仕上げ・・・染色方法の1つで、革の表面にアニリン染料を塗ったもの。表面に透明感が出て銀面の表情が強調される反面、キズも目立つ。 ・セミアニリン仕上げ・・・革の表面に顔料を含むアニリン染料を塗ったもの。顔料で革表面のキズをある程度隠すことが出来る。 |