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Atelier Mashenka

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2006.09.29
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カテゴリ:アート
「モダン・パラダイス展」の感想その2。
それぞれのセクションでの心ひかれた作品の感想。感想その1はこちら♪


第1セクション「光あれ」・・近代の風景画、光へのこだわり

児島虎次郎「ベゴニアの畠」、懐かしい独特の明るい色彩。
白亜の家の壁、ベゴニアの色とりどりのあたたかな色にあふれた庭。
木漏れ日の中、ベンチに憩う老人と子供。

手前にあるサボ、地面に突っ立てられたシャベル。
庭作業の合間の休憩時間なのだろうか。安息のひととき。
見ているこちらも穏やかな光に心和んでくるような気がする。


2年前に倉敷へ行ったとき、児島虎次郎記念館にも行った。
画家としての活動だけでなく、海外の絵画の買い付けを任され、
大原美術館に大きく貢献した彼は
「創作活動をするのと同様に、作品を選別することも重要な芸術活動だ」
といったような言葉(うろ覚え(^^;))を残していて、
当時の私にはとても大きく響き、「美に関わる仕事がしたい!」と共感したなあ。


山中信夫「東京の太陽」「マンハッタンの太陽」と題された写真のシリーズ。
黒い背景の真ん中に、丸く風景が切り取られている。
瞳に映りこんだ風景のようにも見える。
丸の周辺はみずみずしく燃えるようにゆがみ、小宇宙をつくっている。

どうやって撮ったのだろう?穴からのぞいて撮ったのだろうか、
魚眼レンズともちょっと違うし、不思議な小さな世界だ。
マンハッタンのほうの1枚には、
今はなきワールド・トレード・センターのツインタワーが写っている・・・



第2セクション「まさぐる手・もだえる空間」・・20世紀の抽象絵画、描くという行為

アンリ・ミショー「ムーヴマン」「無題」にひきつけられる。
ムーヴマンは特に興味深い。
ベージュがかった小さな紙に、黒だけで描かれ、まるで文字が並んでいるよう。
小さな人々の躍動。小さなエネルギー。
書き味を楽しむ。抽象的でかわいい。


広い会場では、黒々とした大作2つが並べられていて、どうしても目がいく。
1つはスーラージュ、とすぐわかったが、近づいてみると
もう1つは横山操の作品だった!
彼の墨の作品はぜひ見てみたかったが、初めて出会えて感激。

各セクションでそれぞれ、東西の作品を並べ、
その相似と相違を楽しむ企画のうちの1つだが、これはなかなか面白かった。
ここでは、黒を扱った大胆な抽象的な作品を並べたのだろう。


左の、スーラージュ「絵画」は真四角に近い横長のキャンバスに、
油彩で直線的に、縦横と塗り重ねている。
絵の具の盛り上がり、刷毛目など残しつつ、ひたすらに幅広の黒が重ねられ、
どっしりした重量感に圧倒される。
それはまるで何かを封じ込めるように重ねられ、求心的な動きがある。
緊密な厚みのある黒。"対象"ではなく、造作自体を感じられる。


それに対し横山操の、ひどく縦長で大きな作品のタイトルは「塔」、
抽象的に見えるが実は五重の塔を描いたものらしい。
私には塔というより、船のマストのように見えた。
天を突き、海原を突き進んでいく船のマストと、その横木。
縦長の大きな四辺に断ち切られているが、それゆえに
上へ上へ横へ横へ伸びていく黒、を感じ取ることができる。

スーラージュと対照的に、遠心的なエネルギーと、意志のようなものを感じる。
そして"対象"を描いているので、その点もずいぶん異なって見える。

それにしても、横山操の作品は、墨の荒々しさが魅力的でもあるけれど、
墨ががさがさし、でこぼこし、表面がひび割れていたりして、
剥落したりしないのだろうか、とちょっと心配もしたりして・・(^^;)



第3セクション「心のかたち」・・肖像を中心に

アルフレッド・スティーグリッツ「ジョージア・オキーフ:ある肖像」、
きりっとしたオキーフの小さなモノクロ写真。
彼女の精神性のあらわれている美しい肖像だと思った。
彼女に会いたくなる。

セバスチャン・サルガド「サヘルの飢饉」シリーズより3点のモノクロ写真。
白黒が美しい。
美しい、と言っていいものかどうかためらわれるが・・・
アフリカの人々の肖像、飢饉に苦しんでいるはずなのに、
彼らの表情や姿勢から、ぴんとはった命、心の貴さを写し取っている。
細い光、という言葉が浮かぶ。暗くない、優しい黒。
絶望や悲惨さや嘆きではなく、崇高さがモノクロの中に焼き付けられている。



第4セクション「夢かうつつか」・・無意識や夢、物語、シュールレアリスム

フジタの戦争画は「藤田嗣治展」でも圧倒されたのを生々しく思い出す。
すごい作品だけれど、今回はここのセクションに入れてあるのが
どうしても、疑問。

ジョン・フォートリエ「人質」、
タイトルの背景にあるものは知らなかったけれど
(後ほどTakさんのブログで背景を知りました(^^;))
誰もが人質なのだと思った。
人間は誰もが生まれながらに死刑宣告を受けているのだ、とかなんとか
言ったのは誰でしたか・・・それと同じような感じで。

ただれているような黄色い肌の男の、大きな横顔。
わなないている口もと、力なく叫んでいるような。
声にならない声。

そのような絶望と、そこから逃れたい欲求、
理不尽な現実から抜け出し、新たなる生命、新たなる世界への渇望、
そういったものは、このセクションの後半を占める雰囲気だったように感じる。



ここまで、4つのセクションを通り抜け、肌に感じるものがあった。
最初は風景、外的世界、世界との関わり、光、
次に人間の描くという行為そのもの、動き、躍動、
それを純粋にぶつけて創られた作品、
その次に、人間の肉体そのもの、人の気配、内面や心情が表れ出た肖像、
そして、物語、夢、深層の世界、意識と無意識・・・
と、外界から人間存在へ、さらに内面へ内面へと
外界の明るい光から、内面の闇までずーっと辿ってきたように感じた。

そして第5セクション「楽園へ」、と来れば、
じっと見つめたどり着いた人間の深い闇と渇望が、集約された意識が、
もう一度世界へ突き抜けて、外へ、上へ、天上へ解放され、
世界と内との円環を形作るのではないかと
ものすごく壮大な、勝手な期待をしてしまって、ひとり異様に?(笑)わくわく。


第5セクションの入り口にあった富岡鉄斎「蓬莱仙境図」は、
それを、パラダイスを、ちょっと予感させてくれた。

けわしい山の上の桃源郷。
ほとんど棒のように突っ立つ山の頂上付近に朱の屋根の家々、
素朴な雰囲気が味わい深い。
山の上にちょこんとのぞく太陽のにじみが、やさしくかわいらしい。

山の中腹にはちょんちょんと描かれた、ねこやなぎか、白い花々か・・
良い香りがしてきそう。
てってってっとリズミカルに塗られているグレーの山道。
粗雑そうに見えながら、全体的に淡くまとまり、
うっそうとした木々を抜けてこの山をのぼっていけば、
いつかパラダイスへ行けるんだと思えてしまう。


全体のコンセプトは「?」がつくけれど、
第4セクションの終わりで、ここまで気分が盛り上がり、
私なりにパラダイス(の、予感)を楽しめたということで
いいのかもしれない。
いい作品もたくさんあったし。

今回の目玉だったゴーギャン、ルノワール、マティス、萬鉄五郎、
関根正二、岸田劉生などにまったく触れてなくてすみません・・・
どういうわけか、今回、こうなってしまった。
自分の中に今、知らないものを見ようという意識があるのかもしれない・・



常設展は、いつも通り時間がなくてざーっとだけ見た。
ただ、川端龍子「草炎」にはやはりひきつけられ、椅子に座ってぼーっと眺めた。
初めて出会ったのは2年前の「RIMPA展」
何度見ても見事で、ため息が出る。



2Fで開催されていた「Body in Pieces~ばらばらになった身体」では、
満員電車の写真、金山の工夫たちの写真などが面白かった。
無機質で不条理的なこわい、アニメのような作品もあった。
こわくてあまり見れなかった・・(>_<)


一番興味深かったのは、アルフレッド・スティーグリッツの
写真作品「ジョージア・オキーフ:ある肖像-横顔」と、
佐伯祐三のライフマスク!


オキーフをモデルとした写真は、「モダン・パラダイス展」と同じシリーズ。
オキーフの横顔と上に上げた腕、手の表情は、まるでダンサーのよう。
ぴんと伸びた首筋、しなやかで雄弁な手のありようは、
凛として非常に美しく、ひきつけられた。
女流画家オキーフの絵は直に見たことがほとんどないが、かなり興味がある。
見てみたいなあ・・・


佐伯祐三の石膏のライフマスクには驚いた!
ほんとかな?と思ったけど、遺族会からの寄贈となっているので本物だろう。
これが佐伯祐三の顔かあ、とガラスごしに
キスせんばかりに顔を寄せて、あちこちから眺めた。

わずかにほほえんだように口角が上がり、優しげな眉と目をしている。
なめらかな頬のライン。少しはっているえら。
美しい顔だ、と感じ入った。

デスマスクではなく、ライフマスク。
死を悟って、生きている間につくったのだろうと思ったけれど
1921年となっていたので、まだ日本で絵を学んでいたころのマスクらしい。


なんだか稀有なものを見ることができた。
とても満足して閉館まぎわの建物を出た。



ところで、何度か近代美術館に来ていて、
これまであまりまじまじと見なかったけれど、
レストラン脇にある黄と黒のすっきりとしたモダンなオブジェに
興味ひかれて、初めて近づいてみると、





これ、イサム・ノグチの作品だったんですね!知らなかった・・・・(^^;)
タイトルは「門」。
これがイサム・ノグチとの初めての邂逅になるとは・・・思いも寄らなかった。



「モダン・パラダイス 大原美術館+東京国立近代美術館~東西名画の饗宴」は
竹橋の国立近代美術館にて10月15日(日)まで。
パラダイスは自分の中にある!

2Fの「Body in Pieces~ばらばらになった身体」もどうぞ~♪







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Last updated  2017.02.15 20:07:48
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