刑罰としての懲役
裁判員裁判が浸透し、裁判員の方はもちろん、そうでない方も、刑事裁判に興味をお持ちになっていると思います。そこで、今一度、懲役について考えてみたいと思います。懲役というと、世間では強制労働がメインに考えられているように見受けられます。もちろん、懲役には強制労働が課されるので必ずしも間違いではないのですが、懲役のメインは強制労働にあるのではありません。懲役というのは、人間としての自由を奪う刑なのです。学問上は、罰金刑を「財産刑」と分類するのに対し、懲役刑は「自由刑」に分類されます。懲役刑では、住む所や食べる物はもちろん、寝る時間・起きる時間まで厳しく統制されます。まあ、これだけなら、ちょっと厳しい寮に住んでいる方でも同じではないかと思うかも知れません。さらに刑務所では、作業場へ行くための歩く場所や順番、横になれる時間、手紙を書く枚数、面会できる人数・時間も制限されますし、入浴・運動も自由には出来ません。ここまで統制される場所は、刑務所以外にそうはないと思います。また周知の通り、便器はむき出しですし、雑居房には定員を超える人数が収容されていることが多く、精神的苦痛も小さくはありません。このように、懲役刑とは、普通であれば当然のように認められている自由を奪う刑であります。私は、かつて同僚と留置施設(いわゆる留置場)と刑務所の両方を見学しました。同僚も私も、「留置施設であれば二泊三日くらい我慢できるかも知れない。しかし、刑務所は1日でも我慢できないだろう」という感想を持ちました。皆様も、懲役刑の長短を論じる際には、強制労働だけでなく、自由を奪うということも考えにいれた上で論じて頂ければと思います。応援していただける方は、下記のバナーをクリックしてください。