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テーマ:サッカーあれこれ(19851)
カテゴリ:イラン代表
![]() 重い空気が流れた前半が終わり、ピッチに登場した二人の25歳が流れを変えた。トップ下に入ったモハンマド・レザ・ハラトバリは169センチの小さな体にテクニック、スピード、パワーを押し込めて攻撃を牽引する。今まではスピードを生かして左右のMFでプレーすることが多かったが、この日はトップ下で強烈に輝きを放った。ゴール前での細かいタッチ数の多いドリブルテクニック、左右の足から放たれる弾丸ミドルと持ち味を発揮し、足元が得意な選手に見られがちな視野の狭さもなく左右の選手に効果的なパスを散らし時にはスルーパスも見せた。見ての通りアルメニア系のイラン人であるハラトバリはアブモスレムで注目を集めたのはほぼ二年前。同じアルメニア系のテイムリアンやホセイン・バダマキら共にプレーした後、活躍が認められゾブ・アハンへと活躍の場を移した。ここでモフセン・モサルマンや年齢詐称で出場停止となったヴァヒド・アムライーらと共にブレイク。二年目にエースナンバー9を背負い9ゴール8アシストの活躍でチームを優勝争いに導いている。レネ・シモンエス率いるU-23代表にも召集されたが年齢制限で外れ縁のなかった代表にもついに選出。ガリシア選抜との一戦では目の覚めるような弾丸を至近距離から叩き込み存在感をアピールした。 昨夜のクウェート戦での活躍でサウジアラビア戦に先発する可能性も十分にあるだろう。特にトップ下での圧倒的なパフォーマンスは召集が期待されたアリ・キャリミの存在すら忘れさせるものだった。ジャッバリ、ナヴィドキア、そしてこの日彼に取って代わられたモハンマド・ヌーリよりもゴールに直結するニュータイプの司令塔としてトップ下での定位置を確保する可能性もあるだろう。もちろん、この活躍は所属するゾブ・アハンで培われたものだ。エステグラルに4点を叩きこんで波に乗るモガヴェマット・シーラズを3-0で粉砕した試合でも彼はピッチを縦横無尽に動き回り、トップ下から決定的なアシストを記録している。 ただストレートなプレースタイルそのままの激情家で、国内でのイエローカードは10枚と飛び抜けて多い。そのフレアーがときに間違った方向に働くと、ガリシア戦で見せたハンドから失点を招くなどまだまだ精神的に成長を期待されるが、今季に限ってはその怒りをパワーへと昇華させていると見てもいいだろう。サウジ戦ではダエイはスタメンでこのクラッキをアザディのピッチに送りこむべきである。 ![]() そしてもう一人スタメンで試すべき活躍を見せたのがホスロ・ヘイダリだ。テストマッチであったはずのケニア戦ではキャプテンを務めたキャービィの陰に隠れ、出場すら叶わなかった。しかしクウェート戦の後半に満を持して右サイドに配置されると、出足のいい守備からマハダヴィキアと素早いパス交換を繰り返し、一瞬にして敵陣に侵入。そして右足から居合い切りのような独特のフォームで足首のスナップを利かせて正確なクロスをラフファイーにミリ単位で合わせた。その後もチームメイトであるアクバルプールの頭にピタリとクロスを合わせるなど右サイドを席巻。無益な突破を繰り返し、簡単に裏を破られるキャービィとは一線を画したパフォーマンスを見せた。 もともとエステグラルユースで育った彼はハラトバリと同じアブモスレムでもプレーしたことがあったが、転機を迎えたのがパス・テヘランに移籍してからだ。右サイドのMFとして徐々に出場機会を増やし、低迷するチームの中で主力に成長。そしてレネ・シモンエス率いるU-23代表の右のMFとしてプレーし成長を遂げる。その後ヴィンコ・ベゴビッチがU-23を引き継ぎ、さらに所属するパス・テヘランがテヘランから本拠地を移し多くの主力を放出してパス・ハメダンとなると、再び就任したベゴビッチによって4バックの右サイドにコンバートされる。ここでヘイダリは多くのアシストを見せるばかりか、オムランザデ、アラヴィ、シールザド、ホラジらと組んだパス・ハメダンの守備力はリーグナンバー1の防御率を記録。この活躍に目をつけたアミール・ガレノイによって翌年はエステグラルに引き抜かれる。ガレノイはご存知3-5-2を標榜する監督であり、ヘイダリはここで右のウイングバックに据えられる。本来であれば過去の優勝メンバーでもあるアミラバディをマニイーやベイクザデもいる層の厚い左サイドにわざわざ回してまでガレノイは右にヘイダリを固定したことからその期待と信頼の厚さがうかがえる。ここでヘイダリはその信頼に応え、右足の精度をさらに磨きまたもアシストを量産。優勝争いするチームの右の翼として名門を首位に導く。かつてエステグラルでプレーしイランのベッカムといわれたモハンマド・ナヴァジを彷彿させるクロスでチームメッリの新たな右サイドに名乗りを上げた。 ハラトバリとヘイダリは共に25歳。共に脂ののっている時期で全てのプレーに輝きとパワーが感じられる旬の選手だ。もちろんサウジとのW杯出場がかかった真剣勝負にはマハダヴィキアやハシェミアンの老練さも必要だろう。しかしネクーナム、ショジャイーがスタメンに戻っても彼らのプレーは是非とも前半から見たいものだ。なぜならホームでのサウジ戦は前半に得点できなれば負けに等しく、プレッシャーのかかる後半からでは彼らの輝きも鈍る可能性がある。大一番を前にダエイには賢明な判断ができるだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.03.25 01:28:29
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