トンネルを抜けたらそこは「ハレ」の世界だった。
冬の東京は、冷たい風が吹くけれども、ほぼ毎日「晴れ」の良い天気が続いている。テレビによると東北や日本海側の地方など、一夜にして1mの豪雪が降ったところもあるという。わたしが高校のころ、毎月ピアノのレッスンに東京に出てきていた。わたしがそのころ住んでいた京都の山陰地方は豪雪といわないまでも、雪が降り積む地方だった。(今は地球温暖化の影響か、雪はあまり降らない)学校の裏の山にもスキー場があり、校舎の窓から、遠目にスキーリフトが動いている様子や、滑走する人々が見えたっけ。わたしの地方の言い伝えに、「弁当忘れても、カサ忘れるな」という格言があった。これは「裏にし」という現象なのだが、年間を通して、雨が多く、また、朝晴れていても、お昼過ぎぐらいから翳ってきて雨が降り出すことが多いことをいう。だからお弁当は忘れてきても、かさは絶対に必要だよ。という格言。気候風土と住んでいる人の気質は深い関係があると思う。わたしは山陰から山陽へと、月一のレッスンでくぐるトンネルを抜けると、そこが「晴れ」のすばらしい天気にいつも目を見張ったものだった。それまでぐずぐずとして、長靴が手放せない湿った気候から、トンネル一つ抜けるだけで、道をすいすい歩ける、洗濯物が一日で乾く世界へと行けるのだ。山「陽」、山「陰」陽と陰といみじくも表現しているように気質にもプラスとマイナスがあるように思った。山陰側の人々は、内向的な、山陽側の人々は、外交的な面があるかもしれない。これはもちろん良い悪いを言っているわけではない。「陰影礼賛」などということばもある。「ケンカと火事は江戸の華」なんてことばもある。しかし、実際にトンネルの数秒で別世界がひろがる光景を目にした私は驚くと同時に、こちらの光があふれる世界に住みたいものだと思った。晴れているだけですばらしい!気持ちが晴ればれとする。靴下や手袋が濡れて、ストーブで乾かすという作業もなし。毎日、日が照る冬の東京をうらやましく思ったものだ。「ハレ」はめでたい特別な日、その反対の「ケ」は忌み嫌う日常。でも、東京に住みんで長くなると、「お天道さま、ありがとう」という気持ちは薄れ気味になる。反対にお肌の乾燥に悩むことも多いのだ。誰か、お肌が潤ういい方法を教えてください。クリームや乳液類もすぐにぱさつきます。「トンネルを抜けるとそこは「ハレ」の世界だった」日がさんさんと差込み、光があふれる日常に感謝しなければ。