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2005.06.02
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カテゴリ:AQ-rabi







雨の日だった。

肌寒さの残る季節

霧雨煙るつめたい夜。









私たちはもう、どうにもならないことを

頭の隅ではっきりとわかっていて

でもどちらからも、それを切り出せず

他愛のない世間話をしていたように思う。













お店にはコーヒーの匂いが漂っていて

新幹線の改札から流れ出た人たちが

せわしなく、ガラスのむこうの通路を行き交う。














受け皿に置いたカップの音が

やけに大きく、響く。















沈黙を破ったのは彼のほうだった。










「来月から福岡を離れるよ」










来る、そう思った。










「すごく考えたけど。悩んだけど。

 おまえを連れては行けないな」










砂糖もミルクも入れないコーヒー。

それを、グルグルと混ぜながら

私は答える。










『ついて来いったって、行けないよ。

 私も転職したばかりやもん』










目線を上げることはできなかったけれど

彼が口元だけで微笑んだのがわかった。













泣いちゃいけない。

最後まで笑っていよう。
















肩を揺らさないように

そっと息を吸い込んだ。












地下鉄の薄暗いホームで

別れる時、みじかくキスをした

あれは、現実だったのか。










今ではもう

うつろにしか覚えていなくて。



















別れる前の数ヶ月は

なんだかもうめちゃくちゃで。

平気で2週間連絡がとれなかったりもした。

彼が故意にそうしているのは

なんとなくわかってしまっていた。













狂いそうだった。

















一緒に居たくて仕方なくて。



あの頃は離れるなんて考えられなくて。



それなのに













それなのに。













幕切れは、意外と静かだった。

あっけないほどに。















「どんな形であっても、

 ずっと、おまえのこと好きやけん」











そう言ったやない。

言った時は本当やったっちゃろう?

でも「ずっと」はやっぱり無理やったね。
















半年間、誰にも話さなかった。

彼と別れたことを。








次に「ほんとに」恋するまで

2年かかった。














ねぇ、私にどんな魔法をかけた?

どんな呪文で縛ってるん?








あなたとの最後の思い出は

今の私をいちいち不安にさせる。











誰かに「大好き」と言われても、

先を思って余計に不安になる。











奔放にワガママを口にすることが恐い。

聞き分けのいい自分を

無意識に演じてしまう。










何かの折

しばらく連絡がとれない時には

あの頃の後悔が甦える。













相手はあなたではないのに。














ふつうに、幸せでいたいだけなのに。

今、好きな人と。
















誰か、この呪縛から

私を解き放って。
















あれは、つめたい雨の降る

初夏の夜のことで。











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Last updated  2005.06.02 18:00:16
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