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カテゴリ:カメラ、レンズ、写真
戦後は東側に存在したマイヤー・オプティックは、
戦前からパウル・ルドルフ氏との関係でツァイス・イエナとも繋がりがあって、 主に高価なツァイスレンズを補完する普及品を手掛けていた。 何と言うか世界に冠たるツァイス・イエナのセカンドブランドみたいな位置にあって、 恐らくコスト追求で安価な硝材に苦労しつつ、時には独自のレンズ構成を考案して、 地味だけど堅実なレンズが多くて今見るとこれはこれで得難い魅力がある。 戦後の旧ソ連では、ツァイス・イエナのレンズを下敷きにして、 高価な硝材を置き換えて似た様なレンズをコピーしていたけど、 マイヤー・オプティックのオリジナル性は尊重するべきだろう。 因みに、ツァイス・イエナを師と仰いでいた、 国産のニコンの場合はオリジナルを超える事が目標に開発されたらしく、 実際に比べてみれば、その成果は理解できるものがある。 別に、この意見は個人的な思い込みではなくて、 朝鮮戦争当時にライフという雑誌と契約していた、 プロの一級報道カメラマン達の証言があるのだから間違いない。 戦後のツァイス・イエナ製の35mm判用標準ダブルガウスレンズは、 基本的にはリヒター氏により1920年代に登場した、 有名ではあるけど古参のビオターであり、 更に一眼レフ対応でバックフォーカスを稼ぐために、 少し焦点距離の長いビオター58mmf2が担っていた。 その後、1960年になると、 ようやくパンカラー50mmf2が登場して、 ダブルガウス標準の焦点距離は50mmに変更されている。 一方、同時期のマイヤーオプティックの標準レンズは、 1952年~1959年まで5枚玉のプリモラン50mmf1.9であり、 既に世界的に見ても一眼レフ用としての焦点距離と明るさは先進的なものだった。 プリモプランの次のオレストン50mmf1.8は6枚玉となり、 レンズ構成はダブルガウスのビオター系に変更された。 このレンズは1959年~1970年までオレストン銘で生産された後は、 やがてペンタコン・オートという何とも味気ない名称に変更されてしまう。 その上、1978年になるとペンタフレックス・オートカラーとか、 OEMまで手掛けてオートレビュノン銘でも製造された。 ついでに東側のテッサーに代わる入門用標準レンズを担っていた、 プラクティカ―という味気ない名前の50mmf2.4というのも、 マイヤー・オプティック製のレンズである。 詰まらないレンズ銘への変更理由は良く分からないけど、 マイヤー・オプティックを下に見ていたツァイス・イエナでは、 高価な硝材も優先的に当てがわれて性能的には上のF2パンカラーとはいえ、 ずっとF1.8オレストンを相当意識していたのではないか。 1969年になってツァイス・イエナのパンカラーが、 F2からF1.8に改良された時に同じスペックのオレストンを、 いい機会とばかりに無味乾燥な名前に変えさせたと思われる。 ツァイス・イエナこそ東側が誇る世界に冠たるトップブランドであらねばならぬ。 ところでマイヤーオプティックの高性能レンズには、 オレストンとかオレステゴールという名前が使われている。 元がギリシャ神話の神様らしいという事は知っていたけど、 今回改めて調べたらトロイ戦争の総大将オレステスであった。 それがマイヤーでも上級のレンズに付けられているのを見ると、 ツァイス・イエナという伝説に彩られた世界的に有名なブランドと、 決してそれを超える事を許されないものに対する、 鬱屈したプライドと言うか敵愾心というものが透けてくるようだ。 当時のオレストン50mmf1.8のパンフレットを見ると、 比較的暗い場所でもストロボ無しで使えるという事が協調されている。 ツァイス・イエナの看板だったビオター58mmF2の上を行く、 キッチリと50mmの上に明るいというのがオレストンプライド。 別のパンフレットでも夜間のストリート写真や、 室内の薄暗い場所での写真を作例にして、 f値の明るさを前面に押し出している。 マイヤーのオレストンはビオターのような華やかな逸話も無く地味ではあったけど、 レンズに勇ましい軍神に因んだ名前を刻み込んでツァイス・イエナに対抗していたらしく、 そういう何ともいじましい所がヘソ曲がりのレンズファンには堪らないのだ。 プラクティカMTL5Bとの純正コンビ。 東側を代表する一眼レフだったMTL5Bは日本でも新品が売られていたけど、 安定感のある独特の斜め上からの中指レリーズが病みつきになる。 マイヤー・オプティック/オレストン50mmf1.8の作例(全て銀塩写真) 色づき始めたカエデの下で佇んでいる石仏に、 柔らかくなった日差しを透過した笹の葉の影が季節の移ろいを知らせている。 地元の長円寺の紅葉には、 今では県外の大型バスが訪れる名所になったけど、 昔は知る人ぞ知る穴場だった。 長円寺のカエデは京都から持ってきたものらしい。 紅葉の向こうには幾つもの石仏が並んでいて、 独得な風情を醸し出している。 ここら辺は紅葉が始まったかと思うと、 進行速度が早くて1週間も経つとガッカリする事がある。 カラマツは年によって色づきが全然違うのだけど、 この年は良い感じに変化していった。 そろそろススキも種を飛ばす準備が完了して待ち構えている。 戦後のビオター58mmをコピーした例には旧ソ連のヘリオス44-2があるけど、 それからすればオレストンの50mmf1.8というオリジナル性は評価するべきで、 そこにはドイツの老舗としてのプライドが感じられる。 いずれにせよオレストンがペンタコン・オート銘時代も含めてロングセラーになった理由は、 ブランド主義とは別の位置にいる合理的な実質主義者には文句の無いレンズだったからだと思われる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.07 19:30:11
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