ニーナとにぃな
アルカニーナを監視する役目を負った、玄武。その監視網から、アルカニーナが消えた。代わりに、るりという少年が、館に現れた。奇妙なことに、るりは、アルカニーナではない。いや、当たり前なのだが、アルカニーナという存在は、常に、館に存在する。だがしかし、アルカニーナは消えた。奇妙なこととは、アルカニーナが消えても、館の使用人たちが、存在しているのだ。 「朱雀、白虎、オレは、独りで彼を見つめてきた。だが、彼はもういない」 ハルという名の執事の一人が、世界の崩壊の記憶と共に、過去の世界で消滅を確認している。だが、るりが現れてから、ハルという存在が、再び、この館に舞い戻って来た。 「オレも、この館の一部に取り込まれてしまった…だが、使命は果たそう」ニーナという存在は、館そのものであり、アルカニーナの存在の元凶そのものである。運命、宿命、人にとって大きな何かである。オレも、ニーナの1部であり、時に、ニーナの仮の器にオレの意思が宿ることもあるが、それが、この館の特徴である。来る者は拒まず、去る者は、追わず。だが、再び、戻ってしまう。るりは、異世界の巫女である。オレが知るのは、このことだけだ。しかし、にぃなは、ニーナの意思に反する館の影の精神が、にぃなだ。この世界、館を滅ぼす意思を持つ。そのにぃなは、るりを知っている。だが、ハルが来たということは、にぃなは、存在しないのか 「世界の歴史を長く見ていたせいか、先のことがなんとなく、分かる。それが、つまらん」ハルとは、この世界を滅ぼしたことのある存在。だが、にぃなとは、全く異なる存在で、目的もこの館の意思とは関係無い。館が、滅びを齎す存在を外から呼び込んだのがハルであった。その為、ハルが存在する世界には、にぃなは、存在しない。この法則に抗い、ニーナがにぃなとハルを同時に存在させようとしたことがあった。その時は、ニーナが、にぃなの精神を完全に乗っ取って、ハルを呼び出したんだっけかな? だが、結果は、ニーナが異質な存在に成り果てて、にぃなが世界に存在した過去すらも消滅して、忘却が始まったんだ。ああ、彼がこの館に来る前は、ずっと、そうだった…… 夜に消え、朝に蘇る。そんな、儚い夢に、世界の破滅は騙され、ずっと、このままだと思っていた 「ハル…ようやく、ボクは力を手に入れたのです」 「ニーナ、あたくし、力なんて、もう…」 「あれっ? ボクは、どうしてたんでしょうか」 「ハル、館にも花が咲いたのです、ねえ、あたくしと一緒に…」錯乱、彼らは、穏やかな夢を夢見て、出会いを果たしたけれど 「蘇芳、お前もこの擬体で…くぅ、私の脳裏に、私でない、私といるお前が………」 平穏な日々は、遠く果てしないような気がして、それでも、夢見るのだ。人は、幸せを。