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先般、東京都内で行われた「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ」と題する集まりに出席した(最近、他の地域でも分科会ができている)。この集まりは、金融業者ではないが投資分野に関わりを持つジャーナリストやブロガーなどが声掛け人となって、主に投資信託で積立投資をすることに関心のある個人投資家が月に一度自発的に集まっている(金融会社のスポンサーなどは付いておらず、会費制の集まりだ)。この日は会の一周年ということもあり、数十人が集まる盛況だった。
この会の出席者の中に、母親と息子(大学生で金融を勉強されているらしい)の二人連れの出席者があり、投資家の話の輪に加わっていた。筆者もお話しさせてもらったが、親子で投資の勉強とは素晴らしいと思った。 しかし、親が子に投資、もっと範囲を拡げて、お金についてどのように教えるべきかは、なかなか難しい問題だ。しかし、難しいけれども、重要な問題だろう。 親が子供に最初に教えるべきなのは、おそらくお金の収支の管理方法だろう。お金が貴重であることと共に、入ってくるお金以上のお金を使ってはいけないことを教える。古くからある「こづかい帳」はこれを具体化したものだろうし、多くの場合、学生時代に一人暮らしをしてみて、金銭管理の価格を体得することになる。お金持ちの親が子供を甘やかして育てた場合などに、この感覚が育たないままの大人ができ上がってしまうことがあるようだが、まずは、この点が金銭教育の第一歩だろう。 親としては、子供に説明しにくいかも知れないが、高校生くらいになったら、家の資金繰り全般を例にして具体的に説明してやるといいのではないか。これは、親の側でも、子供の恥ずかしくない金銭管理を行うきっかけになりそうだ。 次に教えるべきは、正確な損得計算の必要性と方法、具体的には、利回り計算のやり方だろう。もっとも、この点については、現在の投資信託の売れ筋商品などを見ると、親自身が、計算ができていないケースが多いのではないかもと思われ、困難が懸念される。キャピタルゲインとインカムゲインの合算、単利と複利、税金の損得、割引現在価値などについて、親が子供に教えられるようなパンフレット的テキストが必要だろうし、学校教育でもサポートすべきだろう。 インカムゲインとキャピタルゲインを合わせて判断しないと損な取引を行ってしまう可能性があること、同じ利回りなら先に税金を払うような商品は損になることが多いこと、不動産を借りるのと買うのではどうちがうか、といった金銭判断が親子共にできるなら素晴らしい。 親が子供に教える第三番目の要点は、金融取引における「情報の非対称性」と他人を簡単に信じてはいけないという世間知だろう。もちろん、情報の非対称性という抽象的な言葉をそのまま教えるのではなく、一方が情報を持っていて、他方が情報を持っていない場合に(たとえば生命保険の原価を知っている場合と、知らない場合に)、情報を持っていない側が不利で危険な立場にあることを教える。 金融に関する事件(典型的には投資案件に関わる詐欺など)などを題材として持っていると、説得力のある話ができるだろう。また、金融機関に限らず、商売一般にあって、売り手は買い手から儲けるために様々な努力(一見親切に見えるような行為も含めて)をしているのだ、と教える。子供が、他人の「うまい話」を簡単に信じなくなれば成功だ。 リスクを取った運用、具体的には株式投資や投資信託への投資などについて教える時期はいつがいいのかが次の問題点になる。株式投資の内容自体は、高校生で十分理解できると思うが、ある程度お金を自己管理することが必要になる大学生になってから教える方が、無理がないかも知れない。 投資には、もちろんゲーム的に面白い側面もあるのだが、株式投資は、模擬売買のような形のトレーディングのゲームとして教えると悪い癖が付きやすい。 資産形成のための手段として投資に取り組むことを教え、教養の一部として、投資の考え方や過去の市場の推移などについて学ばせることができると理想的だが、これについては、個々の家庭の事情に差はありそうだが、最大公約数的には、親子で一緒に学ぶスタイルが最も現実的であるような気がする。 「親子のための投資教室」のようなものがあるといい。投資家の集まりで、真面目な親子にお会いして、筆者は、そのようなことを考えていた。 ========================================================== 楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元 (楽天マネーニュース[株・投資]第98号 2011年6月10日発行より) ========================================================== お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.06.16 12:39:14
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