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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.06.24
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ギリシャへの支援がEU(欧州連合)の大きな負担になっている。ギリシャは、国家であるにも関わらず、普通にはお金を借りられなくなっているのだから、ドイツをはじめとする援助する側の国の国民はできればギリシャにお金は貸したくないだろうし、事実、この政治問題が大きな不安定要因になっている。

さて、日本の財政赤字の残高が対GDP比でギリシャよりも大きいこともあって、日本もギリシャのようになるのではないか、という意見を時々聞く。中には、ギリシャは欧州諸国に支援を求めることができるけれども、日本は頼るべき相手がいないので、ギリシャよりも大変ではないかという声もある。

ギリシャとの比較では、確かに支援を求める相手があることは、ギリシャの強みだ。ある意味では羨ましいと言っていいのかも知れない。しかし、同時に、親に甘やかされている子供が歳を取ってもなかなか一人前にならないように、これは、ギリシャが良い方向に変わることを妨げているのかも知れない。

一方、ギリシャを日本と比較した場合に、ギリシャが気の毒なのは、EUに加盟してユーロを使っているため、通貨安という選択肢がないことだ。この点、日本には、一つ大きな安全弁がある。

日本政府の債務の信用が損なわれた場合、国債の金利は上昇するだろうし、通貨も大半は国の債務が担保なので、インフレになるだろう。そうなった場合、あるいはそれ以前に、そうなることが確実視され始めた場合、日本円は安くなるはずだ。

日本円が大幅に下落すると、外国、たとえば韓国に「一人当たりGDPで抜かれた…!」などというニュースが流れて、日本人は大いに悲観に浸るのかも知れないが、日本に立地する産業は競争力を回復し、日本の雇用も改善するだろう。つまり、変動する為替レートには、リスクを吸収する効果もある。

また、インフレは現金の購買力が減少することであり、高齢者のように収入のない資産家にとっては嬉しくない現象だが、国をはじめとする借金を持った主体の負担を軽くする。もちろん、これまでのようなデフレの悪弊を取り除くことができるので、これも悪いことばかりではない。

また、日本の場合、国債の9割以上が国内の投資家によって保有されている。その多くは銀行であり、背後には預金者がいるが、預金者も元本価値が確実でさえあれば円建ての低金利に満足して(我慢できるのも満足のうちだ)、資金を預け、銀行はより大きなリスクを取るよりも国債の利回りに満足していることが、今日の長期金利の低水準をもたらしている。

加えて、日本の場合、欧州諸国などと較べて財政の国民負担率(GDPに対する税金、社会保険料など国民の負担の割合)が低く、将来の増税の余地が大きい。これは、現在の財政赤字要因の一つでもあるが、将来の潜在的負担力を意味する強みでもある。

日本の諸々の意外な強みを考慮すると、欧米の国々の財政・通貨状況と将来どちらが強いのかは、必ずしも判然としない。

もちろん、日本の財政や経済運営に問題がないわけではないが、日本の状況だけが圧倒的に悪いと決めつけたり、まして、ギリシャと日本の状況を同一視したりする意見は、かなりピント外れではないか。

相場というものは、時に非常に皮肉にできていて、侮りがたいものだ。

たとえば、過去20年くらい、「貯蓄から、投資へ」と言われてきたが、国内では個々のタイミングにも依るがおおむね株式に投資していた人よりも貯蓄していた人の方が、多くの場合、ましな結果だった。

日本財政破綻論から円安に賭けていた人が大損を被るような事態があって、それから円安がやって来る可能性もある。

ギリシャと日本の比較だけでも随分誤解があるようだ。為替レートも株価も、相手が相場であることを忘れずに、他人の意見に流されずに、自分でとことん考えて参加するようでありたい。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第99号 2011年6月24日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2011.06.24 16:59:58



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