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山崎元の経済・マネーここに注目

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2009.12.25
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政権交代の前後から「成長戦略」という言葉を時々聞くようになった。「○○党の経済戦略には成長戦略が欠けている」というような使い方で登場することが多いが、具体的に何を指して成長戦略というのかは、はっきりしないことが多い。どの政党が政権を取っているとしても、文字通り経済を成長させる戦略があるなら望ましいことなので、何が成長戦略なのか分からないのでは残念だ。

生産の水準や5%を超える失業率からみて現在の日本が不況の最中にあることは間違いない。不況の場合には、財政支出や金融緩和で需要を喚起しようとすることが多いが、これは成長戦略なのか。こうした景気対策は、直接的にはGDPの成長率を引き上げることが目的だから成長戦略と呼んでも良さそうなものだが、一般的な用語法としては、こうした短期的な景気対策を成長戦略と呼ぶことはない。

同様に雇用対策も、経済の効率がめざましく向上するような雇用制度でも導入すれば別だろうが、成長戦略と呼ぶことは一般的でない。

いくらか理屈っぽい話になるが、長期的な経済成長率は労働人口の増加率と広義の技術進歩で説明されることが多い。いわゆる供給側の要因だが、労働人口の増加率が人口構成からおおむね決まっていて動かせないとすると、新しい科学技術や新しいビジネスのやり方が生まれるように働きかけることが成長戦略だということになる。

ここでどうしてもイメージされがちなのが、「傾斜生産方式」などと呼ばれた日本の高度成長の頃の政策的な重化学工業振興のような、政府主導の産業政策だ。新しくて将来有望なビジネスを政府が見つけて、これに対する研究開発を支援したり、金融的な支援を行ったりするような政策はないのか、といったイメージだ。

もちろん、政府の誰かが有望なビジネスのアイデアを見つけて民間をリードするということが絶対にあり得ないという訳ではないのだが、「儲かるビジネス」を政府に見つけてもらおうというのは、あまり現実的ではないような感じがする。携帯電話の規格や放送のハイビジョンなど、公的な関与があったビジネスは、上手く行っていないものが多いように見えるし、かつてのように日本よりも進んだ先進国の産業を後から追いかけるような分かりやすい答えは現在の日本にはない。

日本の成長分野としてあげられることが多いのは、たとえば、医療、介護、教育などのサービス業だ。こうした分野のビジネスは政府による規制が非常に多いので、規制を緩和することが成長戦略になるという議論もある。確かに、介護の報酬が低くて人が集まりにくいといった現状には、介護分野が大きな公的な関与の下で営まれていて、多くの規制が存在することの欠点が出ているように思える。規制を緩和することは、少し長い目(数年単位くらいで十分だが)で見ると一定の成長促進効果があるように思う。

「成長戦略」という言葉は耳障りのいい言葉なので、これからも聞こえてくることになるだろうが、結局、政府がリードして儲かるビジネス分野を作ってくれるといった期待は持っても仕方がないもののように思える。規制の緩和は必要だろうし、教育も含めて技術に対する公的な投資も必要だろうが、チャンスは個々の企業や個人が見つけるべきものだ。

考えてみると、日本の人口は縮小するとしても、外国に目を転じると拡大しそうな市場は幾らでもある。政府をあてにしないで、チャンスを自分で見つけようとする企業が将来成長するのだろうし、投資家もそうした企業に投資することで成長に参加できる。もちろん、お金だけでなく、起業や就職・転職などで「人生を投資する」のもありだろう。

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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第65号 2009年12月25日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2009.12.25 20:40:00



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