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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.01.08
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政府によるデフレ宣言を待つまでもなく、国民の大半がすっかり「デフレ慣れ」してきたように見える。趨勢的に賃金はデフレ以上のスピードで下落しているし、困った、大変だというニュースには事欠かない。初売りでも、連休の旅行でも、ニュースは「人々の財布の紐は堅い」と締めくくられるのが定番だ。また、労働組合の多くが、今年の春闘ではベース・アップ要求を見送り、定期昇給の維持を交渉目標にするようだ。確かに、これでは力が入りにくい。

心理として定着した「デフレ慣れ」を払拭するには、相当のインパクトのある政策が必要だろう。デフレ対策のハードルは随分高いものになってしまった。

さて、世間がデフレなら、人々の関心は、デフレ経済の中でいかに幸せに暮らすかに向かう。書店に立ち寄ると、節約術を中心とした、生活と金銭管理のノウハウ本が数多く出ている。また、雑誌の記事やテレビ番組でも、「得をする」方法が頻繁に取り上げられる。これらのすべてが、とまでは言わないが、多くのものが、たとえばスーパーマーケットで食品を買うには月の何日・何曜日がいいか、安売りの目玉商品とそうでない商品をどう見分けるか、計画的なまとめ買いで月にいくら節約できるかといったよくいえば身近な方法論が語られている。

また、家計のどこを切りつめたらいいのか、という昔からある家計相談の類も相変わらず人気を博しているようだ。そもそも家計簿を緻密につけていないとこうした相談ができないが、金銭管理をしっかり行うことが奨励されていて、ビジネスマン男性向けの家計簿本が出版されたりもしている。

さて、節約がゲームのように楽しいという向きにまであえてケチをつける気はないのだが、細かな金銭管理と、少しでも安い物を買おうという節約術をずっと考えていて生活が楽しいのだろうかという点が少々心配になる。お金の出入りを細かく管理し、お金の使い方の計画を立てて、これが実行できれば、論理的には望ましい状態に近づくのだろうが、お金に生活を管理されているような息苦しさを覚えないだろうか。

お金の出入りを細かく把握することが重要な場合も時にはあるが、あえて言わせてもらうと、お金のことを気にせずに済ませて辻褄が合うような金銭感覚を持っていると理想的ではないだろうか。現在及び将来のお金の出入りを予想し、これに無意識的に適合して、その時々の支出を調整するのだ。

経済学の世界には「恒常所得仮説」と呼ばれる有名な理論があって、これによると、人々は将来の所得を適切に平準化した「恒常所得」に従って消費を調節するということになっている。かつてミルトン・フリードマンが唱えた説だが、実証的にもそれなりの支持を得てきた。これは、人々が半ば無意識のうちに無理なく自分の支出を調節できるのでなければ、達成できない状態だ。つまり、自分の収入と支出のバランスを保つ感覚が、多くの人に自然に備わっていなければならないし、現実にそれは備わっている。

あえてコツを述べるなら、「大きな支出から順に考える」ことと「計算が難しい状況では、間違えるとしてもなるべく無難な方に間違える」ということを意識しておくといいと思うが、生活のお金については、細かな記録と計算を常時行うよりも、自らのバランス感覚を磨いて、これに委ねるのがいいのではないだろうか。

ただし、金融関係の取引だけは、動くお金の単位が大きいし、自分が損をすると取引の相手方が儲かる性質が明確なので、損に鈍感だとこれを繰り返し利用されて、損が拡大しかねない。マーケットや金融業者を甘く見てはいけない。特に、貯蓄や投資は「お金を使って、お金を稼ぐ」ことを目指す行為なのだから、シビアに計算する方がいい。

金融的な損得には厳しいが、生活まわりのお金は無意識的に扱って辻褄が合う。そんな感じの金銭感覚が理想的だと思うのだが、どうだろうか。

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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第66号 2010年1月8日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.01.08 17:43:24



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