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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.04.23
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米国のSEC(証券監視委員会)が、米国の有力証券会社であるゴールドマン・サックスをサブプライム・ローンを組み込んだ証券化商品の販売に関わる詐欺の嫌疑で告発した。現段階で、ゴールドマン・サックス社はこの訴えを無根拠であるとして全面的に否定して争う構えであり、事実関係はまだ詳しく報道されていないが、これまでの報道によると、証券化商品の組成にあたって、元ゴールドマン・サックス社のCEOだったヘンリー・ポールソン氏が率いるヘッジ・ファンド(このファンドは不動産関連の空売りを行っていた)が関与しており、この事実を顧客に開示せずに販売したことが問題とされているようだ。

SECの告発を受けて、4月16日には、ゴールドマン・サックス社の株式が大幅に下落すると共に、NYダウも100ドル以上の下げとなった。ゴールドマン・サックス社自体への影響の他に、他の証券会社でも同様の問題がないかという懸念、さらにはこの問題の立件によって、金融機関に対する規制強化が一層進むのではないかという懸念から全般的に株式が売られた。証券会社が摘発されたり、規制が強化されたりすると、対象金融機関が投資のポジションを縮小することが予想されることが売りの理由だ。

情報が少ない現段階では、ゴールドマン・サックス社に本当に報道されているような問題があったのかどうかは断定できない(従って、本稿は、同社を批判するものでもないし、逆に弁護しようとするものでもない)。

しかし、仮に、ゴールドマン・サックス社に非があるとされた場合には、同社の経営に相当に大きな影響が及ぶ可能性がある。

この件で第一に思い出すのは、1991年に米国債の入札で不正を行って摘発された、ソロモン・ブラザーズだ。同社は、「ウォール街の帝王」と呼ばれる存在だったが、この件一つで経営が傾き、有力投資家であるウォーレン・バフェット氏の出資と経営参画を得て倒産はまぬがれたものの、トラベラーズ・グループに売却され、現在は、シティグループの中で同グループに買収された旧スミス・バーニーの陰に隠れる形になっており、「ソロモン・ブラザーズ」ブランドはほぼ消滅したといっていいだろう。

また、ウォール街では、ジャンクボンドに関連して、一時は最大手にのし上がったドレクセル・バーナム・ランベール社が、ごく短期間で倒産したことがある。

他に、サブプライム問題による巨額損失の発生とリーマン・ショック後の金融環境に変化によって、長らく独立系でブローカーとしては米国最大手だったメリルリンチ証券がバンク・オブ・アメリカの傘下に入って、命からがら生き残っているような事例もある。

目を日本に転じても、巨額の損失を隠していた(「飛ばし」と呼ばれた)当時の証券業界第4位の山一證券が1997年に自主廃業の発表に追い込まれた例がある。

こうして過去を振り返ると、大手といえども、証券会社、特に米国では投資銀行と呼ばれるような自分の資本を大きく投資リスクに晒すような業態の証券会社は、一つか二つのミスで会社の存亡が危うくなる「危ないビジネス」だ。

大きなリスクを取る経営スタイルは、投資それ自体のマーケット・リスクの他に、自分の投資の利害と他のビジネス(通常はブローカレージ・ビジネス)の利益相反に絡むリスクも発生させやすい。今回のゴールドマン・サックス社への嫌疑である詐欺罪や、インサイダー取引などに関わる可能性が存在する。

何らかの相場的なチャンスがあれば、自分でリスクを取る証券会社は、自分で相場を張りたいと考えると同時に、そのために顧客などに逆のポジションを押しつけたいという誘惑に駆られる。ここを我慢するのは難しいが、やりすぎると相場とは別のリスクの穴に落ちてしまう。

証券会社に限らないが、自分で相場を張っている(ポジションを取っている)組織や人は、自分が持っているポジションの影響を受けることがしばしばある。投資家としては、できるだけこうしたリスクのない、自分では大きなポジションを持たない相手とつきあうのがいい。

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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第73号 2010年4月23日発行より) ==========================================================
 






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最終更新日  2010.04.23 11:24:38



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