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山崎元の経済・マネーここに注目

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2010.05.14
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カテゴリ:カテゴリ未分類

ギリシア・ショックは、正直なところ、筆者が当初思ったよりも影響が大きかった。ギリシアの財政が困難な状況にあることや、EUにとって重荷であることは周知の事実で、一つにはこの問題はもう少し迅速にコントロールされると思っていたし、もう一つには、欧州経済の苦境は米国を中心とする先進国の金融緩和を長引かせる要因になるので、これが新興国への投資を支えている、現在の景気回復の構図が長く続く要因になるのではないかと思っていたからだ。

今後の日本の株価、経済に考えられる影響だが、個々の問題を、短期の問題と、中長期の問題に分けて考える必要があると思う。

まず、日本株価への影響だが、短期的には、まだボラティリティーが高い状態が続く可能性がある、5月9日現在日経平均は1万5百円近辺で取引されている。「1万円割れがあり得ますか?」と質問されたとすれば、5百円の値幅ならば、欧米市場の2回の大幅下落程度のインパクトで起こる可能性があるので、「ないとはいえない」と答えるのが正解だろう。ただし、中長期的には、前述のように「米国の金融緩和が新興国の経済成長を後押している」というのが世界と日本の景気と資産価格を支えているエンジンである状況は変わらないので、これで上昇相場が終わるというような意味での、大きなトレンドの転換にはならないと考えている。

欧州経済の停滞が日本の景気に対する影響は、ゼロとはいえないが、アジアや米国よりも影響が小さい。日本の景気回復基調自体を反転させるような大きな要因にはならないのではないか。

ただし、ギリシア・ショックで欧州の問題が終わりかというと、そうでもないような気がする。欧州全般に不動産バブル崩壊後の不良債権が溜まっているはずであり、ギリシアの問題の処理にこれほど異様な緊張感が漂うのは、他国への飛び火を恐れるからだろう。他国の金融機関、あるいはこれを救済しようとする政府の財政問題、さらには金融だけリンクしていて、財政のリンクが切れているEUの構造的弱点が、今後クローズアップされる可能性がある。

日本の不良債権問題に喩えて言うと、ギリシア問題は後から見れば少額でも公的資金投入で大いにもめた住専問題の位置づけに近いのではないか。その後、大銀行のバランス・シートまでが疑われる展開になったが(事実大きく毀損していたわけだが)、欧州経済が抱えるより大きな問題は、ギリシア以外の国の銀行のバランス・シートに溜まっているのではないか。これがどうコントロールされるか、コントロールに綻びが出るかは、今後の問題だ。

なお、ギリシア財政との連想で、日本の財政問題がクローズアップされている。中には、一波乱起こらないかと期待する向きもあるようで、特に相場的には、国債の暴落が半ば心配、半ば楽しみにされているような趣もある。しかし、日本の場合、国債の約95%を日本の居住者が保有しており、これを売り崩すのは相場的に難しいだろう。公的年金等の投資家の運用事情を考えても、たとえば実質金利があと1%上昇するなら、喜んで長期債を買いたい性質の資金がまだ大量にある。

日本の経済問題の難しいところは、目下低金利で且つデフレなのだから、短期的には金融緩和と共に財政赤字を拡大することが常識的な状況なのだが、政治的にはそれが難しい状況に追い込まれていることだろう(財政赤字は増えているが意図的なものではないし、もっと必要である公算が大きい)。有効なデフレ対策を取れないまま、長期的に財政状況を悪化させていく悪いシナリオにはまる可能性もあり、その場合には、将来、ギリシアの問題が他人事でなくなるかも知れない。

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楽天証券経済研究所
客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第74号 2010年5月14日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.05.20 20:37:07



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