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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.02.25
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近年、雑誌のマンション特集を見ると、人気のエリア(地域)がどこであるかというテーマの記事が多い。『週刊ダイヤモンド』の2月26日号でも同様の特集をやっていて、地域別に過去10年間の新築マンションの値下がり率を最寄りの駅別にまとめて比較している。同誌は経済誌なので、詳しいデータが載っていて、なかなかおもしろい。

特に、家賃に対して物件価格がどのくらいの倍率かという、株式投資でいうとPER(株価収益率)に相当するデータが載っている点が興味深い。たとえば、地下鉄東西線の神楽坂駅は70平米換算の新築マンションの価格が6,724万円で、家賃PERは24.1倍だ。対して、同じ東西線の浦安は3,742万円で家賃PERは13.8倍だ。

サンプル数の問題もあって、鵜呑みにはできないが、神楽坂と浦安では、家賃相場はあまり大きく違わないけれども、マンションを買う場合の価格には大きな差があることが分かる。実際には、同じ広さの同様のグレードの物件を借りる場合、神楽坂の方がかなり高いとは思うが、傾向としては、物件価格の比率ほど家賃は違わないように思う。

一方、各所の過去10年間の新築物件値下がり率を比較すると、都心ないし都心に近い価格の高いエリアの方が値下がり率は小さく、物件の価格が下がる郊外のマンションの方が大きな率で値下がりする顕著な傾向がある。

これは、過去10年の間に、住居立地として都心の人気が高まったということもあるが、以下のような原理が働いていると考えられる。

たとえば、都心のマンションは価格が6,000万円のうち、建物の価値が2,500万円で立地の価値が3,500万円だが、郊外のマンションは同じく建物の価値が2,500万円でも立地の価値は1,500万円で価格が4,000万円だとする。「同じグレード」のマンションの価格差を説明する要因は主として立地の差だから、この想定はそう非現実的でもないだろう。

すると、経年変化で建物の価値が共に1,500万円失われたとしても、物件価格の変化は都心ではマイナス25%だが、郊外ではマイナス37.5%になるという差が付く。つまり、建物の価値は下がっても、立地の価値は保たれるので、「立地代」の高い物件は値下がりしにくいということだ。

立地に関しては、人気の移り変わりがあるので、人気エリアの高額物件を買っておくと資産価値が有利に保たれることが保証されているという訳ではないが、物件の価値を、建物の価値と立地の価値に分けて考えることは有効かも知れない。たとえば通勤時間が片道30分短縮されるなら、一月の通勤日数が20日として、時給にして20時間分くらいの差が家賃にあってもおかしくない。個々の事情と立地の価値の大きさは一人一人で異なるが、平均的な好立地の条件は割合安定的だろう。

株式投資の場合は、投資家の最終的な目的は、株式を通じて得られる利益なので、PERの差は、主として利益の成長性の評価に対する差になるが、同じ利益状況なら純資産部分の差がPERの差の相当部分を説明すると思えるケースもある。ただし、有効に使われていないキャッシュなどは配当される可能性があるし、最終的には保有する資産の価格も利益に関連するはずなので、不動産の価値の場合ほど、高PERは安定的ではないはずだ。

不動産価格に関しては、いわゆるバブルの頃には「日本の不動産価格は、理論的には説明できない特別なものだ」という意見が多かったが、その後のバブル崩壊を経て、特に「収益還元価格」(家賃収益から計算される価格)という言葉が有名になってから、価格形成の合理化が相当に進んできたように思う。

日本では、株価は不動産よりも一足先に価格形成の合理化が進んできたが、現在では、株価・不動産共に「かなりの程度」合理的な価格付けになってきたように思う。しかし、それが、経済全体が低成長化し、人口が減少する前提条件で将来見なければいけない時期に達成されたことは、いささか皮肉でもあり、投資家としては少々残念だ。 

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第93号 2011年2月25日発行より) ========================================================== 






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最終更新日  2011.02.25 16:55:42



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