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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.07.08
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カテゴリ:カテゴリ未分類
投資を勧める記事や、投資の入門書を読むと、どんな理由で投資をはじめるべきかについては、過剰なくらい多くの理由が載っている。だが、いったん買った株や投資信託をいつ売るのかについて判断基準を述べているものは少ない。

そのせいか、投資をはじめてみたものの、自分が買った株式や投資信託をいつ、どのような時に、売ったらいいのかが分からない投資家が少なくない。

「売り時」に関して、不適切な思い込みで代表的なものを三つあげてみよう。

一つは、自分の買値を基準に、「何割上がったら売り」あるいは「何割下がったら、売り(損切り)」と決めておくやり方だ。たとえば、「3割上がったら、あるいは、2割下がったら売り」と決めておくと、売り買いに迷わないし、自分の買値から見て大損することはないので、気分的に楽だからいい、といった理由で勧められていることが多い。

しかし、精神的には楽なのだが、この方法は正しくない。株価や基準価額が上がるとしても下がるとしても、投資の意思決定をどうするべきかの問題は、今後の可能性であって、過去の買値との比較ではない。

上がった株価も、企業の今後の見通しに対しては上昇不足なのかも知れないし、株価が下がったとしても状況が悪化していないのなら、投資対象としてはむしろ魅力的になっているのであって、その場合、損切りは愚かだ。

「上がるか、下がるか、判断できないから、機械的な基準を決めて置いた方がいい」という反論を聞いたことがあるが、これは、そもそも、その株や投信を買うと決めた時に何らかの判断をして、その判断が有効だと思って実行に移したことと矛盾している。判断は難しいが、判断なしで運用ができると考えることは誤りなのだ。

二つめは、「長期投資だから売らない」と決めつけるやり方だ。株式は、株主になって会社の利益の配分を受け取る手段なので、会社が順調である限り、投資期間と共に利益が増える。この意味で長期投資が基本になる。

ただし、リスクを考慮に入れた時に、他の資産の方が有利だと判断される時、端的にいって、株式なら、現在の株価が高すぎると判断できた時に、「長期投資」を理由に漫然と保有し続けることは適切ではない。この場合も、買う時には買うか買わないかを考えたのだから、売る時にそれを考えないのはおかしい。

三つ目は、適切でない根拠に基づいて、「売り」(「買い」もだが)を判断するケースだ。さすがにプロのファンドマネージャーの場合、テクニカル分析に基づく投資は顧客から相手にされないことがほとんどなのだが、素人投資家の場合はチャート分析にもとづいた売買が多い。チャート分析による売買は、売り買い共に無駄な売買を増やしがちだ。

買値を基準にした売りがダメで、チャートによる売り判断もダメ、かといって長期投資を決め込んで、できるだけ売らないと開き直るのもダメ、となると、途方に暮れる方がいるかも知れない。

それでは、いつ、どんな時に、持ち株や投信を売ったらいいのか。適切な「売り」の基準は存在するのか。

売りの判断基準は存在する。大まかにいって、以下の二つのケースでは、持ち株や投信を売ることが適切だ。

第一に、お金が必要な時だ。生活費であっても、不動産や車などの買い物のニーズであっても、お金が必要な場合、借金をするよりは、株や投信を売る方が断然「得」なので、売りを躊躇する必要はない。

投資は、リスクとリターンを考えてそれなりに有利だと思って行っているはずだが、その「有利さ」は、ほとんどの場合、確実に返さなければならなくて金融機関の利益(スプレッド)が乗っている借金の「不利さ」には及ばないと考えることが妥当だ。

この場合、心配なのは、株式や投信の現在の値段が自分の買値よりも安い場合に、売りを躊躇して、借金に及んだり、有効にお金を使えなかったりすることだ。

もう一つの売りの基準は、「買った理由が消滅した時」だ。

たとえば、予想される利益に対して株価が安いと思って買った株式の株価が上昇して、すでに割安とはいえない水準に達したとしよう。これは喜ばしいケースだが、「長期投資」その他の合理性の外にある理由に拘って売りを躊躇する必要はない。逆のケースとしては、たとえば、利益の成長性を評価して買ったはずの株の予想利益が下方修正されたような場合、株価の回復を祈ってこれを持ち続けても、簡単には株価が回復しないことが多い。投資は、祈るだけでは、どうにもならないことが少なくない。冷静に考えよう。

投信の場合も、投資を決めた時の経済や市場の状況が大きく変化した場合に、投資額を縮小した方がいい場合がある。

もっとも、株式でも、投資信託でも、持っているものの全てを売り切るような極端な行動ではなく、部分的に売却してリスクの大きさを調節する程度の行動が適切な場合が多い。

「売り」でも「買い」でも、投資にあって極端な行動は、長期的には、成功しにくい。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第100号 2011年7月8日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2011.07.12 17:24:56



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