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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.08.12
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先週の世界のマーケットは、米国債のデフォルトに対する懸念に注目が集まった。米国では、政府の債務残高の上限が決められており、これを議会が引き上げなければ、上限を超える債務(国債やTビルなどによる借り入れ)を持つことができない。リーマンショックに続く金融危機の発生後、米国では金融・財政共に非常に積極的な政策を実施したので、政府の債務が急拡大しており、まさにこの上限に近づいていた。

議会の合意が8月2日までに成立しない場合には、米国債の利払いが滞る可能性があるとして、デフォルトの発生が心配されていた。

デフォルトという言葉は、債券投資の世界でよく出てくるが、読者はどんなイメージをお持ちだろうか?

この言葉が使われる文脈は、なんとなく不吉な場合が多い。金利も元本も全く返ってこない、全面的な「貸し倒れ」のような状態をイメージされる読者が多いかも知れない。

しかし、言葉の定義の上では、債務に関する契約のどんなに些細な問題であっても正確な履行がなされなかった場合、それは、すべてデフォルトなのだ。従って、元本を全く返済しないのもデフォルトだし、金利の支払いが一日遅れるのもデフォルトなのだ。

デフォルトという言葉が出てくるのは、債券投資の世界ばかりではない。企業同士、あるいは企業と金融機関のお金の貸し借りの契約にもデフォルトはあるし、プロジェクトの資金を融資するローン契約のようなケースでもデフォルトがある。

プロジェクト・ファイナンスの契約書は、紙に印刷すると何センチもの厚さになることが珍しくない。英文で書かれた分厚いローン契約書を読むのは骨の折れる作業だが、コツは、デフォルトの定義とその関連項目に集中して読んでみることだ。

ローンの貸し手の立場からすると、お金を貸した相手が、お金を返せなくなるかもしれない事態が発生した場合には、法的な手段に訴えて自らの債権の価値を保全できるようにしておかなければならない。

利息の支払いが順調であっても、たとえば、借り手の会社が債務超過になった場合などには、直ちに債権を保全する手続きを取ることができないと、他の債権者に先に資産を差し押さえられてしまうような事態が起こりかねない。従って、ローンの契約にあってはデフォルトの定義の中に借り手が債務超過になることを含めたり、債務超過にならなくても、自己資本比率が一定以下に低下したりした場合にこれをデフォルトと定めるというような条件をつけて、契約書を作成することが一般的だ。

また、ローン契約にあっては、同一の借り手の他のローン契約でデフォルトが起きた場合には、この契約もデフォルトとみなす、という趣旨の規定(「クロス・デフォルト条項」と称する)が含まれていることがしばしばある。

ともかく、デフォルトという言葉は、債務契約の不履行全般を指す言葉であって、何がデフォルトに該当するのかは、個々の契約(債券の場合は発行条件)で何を定めるかに依存する。従って、契約を結ぶ場合には、その契約において何がデフォルトに該当するのかについて、借り手も貸し手も細心の注意を払うことが肝要だ。

そして、プロジェクト・ファイナンスのような大きくて複雑になりやすいローン契約も、デフォルトに注目して読んでみると、案外簡単に理解することができる。

デフォルトと関連する言葉で、誤解しやすいのが「リスケジュール」(日本式に略すると「リスケ」)だ。借り手に十分な返済能力がなく、金利支払いや元本の償還について、当初に決められたスケジュールから、別のスケジュールに組み直すことを(多くの場合、返済期間を延ばすことが多い)リスケジュールと称する。

ここで誤解しやすいのは、リスケは一見デフォルトのように見えるが、借り手と貸し手の双方が合意して返済スケジュールを変更することなので、その合意ができれば契約不履行の状態が解消してデフォルトの状態には分類されない。

いったんデフォルトに該当する事情が起こっても、後からリスケジュール等の合意ができて、現状が契約不履行に該当しなくなると、デフォルト状態が解除されることになる。通常、何らかの契約でデフォルト状態にある主体は、追加的なローン契約を結ぶことができないが、後から当事者間でリスケジュールが合意されることによって、国際金融の舞台に復帰することができるようになる。

今回、仮に米国債に関してデフォルトが起きたとすると、米国債の信用が大きく毀損する可能性があった。ぎりぎりではあったが、デフォルトが回避されたことは幸いだった。

もっとも、現在の米政府の場合、支払い能力やそのための資金の調達力に疑問が生じてデフォルトになる訳ではなく、手続き的な問題で、デフォルトが起こるかも知れないということだったので、仮にデフォルトが起きたとしてもギリシアのようなケースとは異なるし、短期間でその状態は解消したはずだ。

デフォルトの可能性にもいろいろあるので、その性質を正確に掴んで、正しく恐れることが重要だ。もっとも、米国債のような、本来は最も信用度が高くあって欲しい対象で、今回のような心配が生じるようなことは、頻繁には起きて欲しくない。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第102号 2011年8月12日発行より) ==========================================================









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最終更新日  2011.08.22 15:57:12



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