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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.07.22
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為替レートは毎日ニュースで報道されるし、外貨投資もずいぶんポピュラーになった。しかし、「為替」については、初心者ばかりでなくベテラン投資家や時にはプロでも勘違いしやすい誤解が二つある。

一つ目は、「高金利通貨の期待リターンが低金利通貨よりも高い」と考えることだ。「為替」とは支払い手段のことであり、為替取引は支払い手段を取引しているのだから、常に資金取引を伴っている。つまり、為替レートは必ず金利と共に取引されているので、「事前の」予想の段階にあっては、どの通貨と金利の組合せのリターンが高いということが言える訳ではない。

これは、銀行や商社などで為替予約を扱うと実感として分かることなのだが、株式のように金利を直接的に意識していない対象しか売買経験がない場合にはなかなか納得しにくいことのようだ。

高金利通貨も低金利通貨も、預金や債券の将来リターンが「どちらが高いとも言えない」し、自国通貨の預金・債券と、外国通貨の預金・債券のリターンについても同様のことがいえる。この場合、外国通貨の預金・債券にあっては、為替レート変動のリスクがあるので自国通貨の預金・債券と比較した場合、大まかにいうと「リスクはあるのに、期待リターンは同じ」ということになる。つまり、割りが悪い。

現実には、金利物への外貨投資は、預金でも債券でも外債に投資する投資信託でも、国内預金・債券で運用するよりも高い手数料を支払いがちになるので、この割りの悪さがさらに拡大する。

二つ目の誤解は、為替のリスクをハイリスク・ハイリターンの原則の対象になるリスクとして解釈してしまうことだ。この誤解は、第一の誤解と絡んで、「高金利通貨の預金・債券は、リスクはあるものの、期待リターンが円の預金・債券よりも高い」という誤解につながりやすい。

為替市場である期間(円を売って)外貨を買うということは、「外貨の買い持ちの為替リスクを持つことと、円資金を借りることと、外貨資金で運用すること」の組合せであり、市場の反対側に同金額で「円の買い持ちの為替リスクを持ち、外貨資金を借り入れて、円資金で運用している」人がいるということだ(為替のディーラーがやっているのはこうした資金取引なのだ)。

この場合、外貨を買う人と円を買う取引相手は、価値の変動という意味で同等の大きさで反対側のリスクを負っていることになる。つまり、二人は、同じリスクを持っているが、損益の合計はゼロだという「ゼロサム・ゲーム」的な関係にある。

このゼロサム・ゲーム的なリスクは、株式投資のように資本を提供してリスクを負う「投資のリスク」と異なり、リスクを補償する超過リターンが期待できるようなリスクではない。

しかし、時には、プロのファンドマネージャーや運用会社の経営者であっても、高金利通貨の債券は為替リスクがあるけれども、「リスク負担に相応の期待リターンの高さ」があると誤解していることがあるから、注意したい。

必ずしも広く通用する分類ではないが、筆者は、為替リスクのようなゼロサム・ゲーム的なリスクを「投機のリスク」、株式投資や不動産投資のような生産活動に資本を提供する場合のリスクを「投資のリスク」と呼んで両者を区別することにしている。

投機のリスクも投資のリスクも、リスクとしての警戒が必要なことは同じだが、後者の場合は理屈上リスクを補償する追加的リターン(リスク・プレミアム)が期待できる点がちがう。

リスク・プレミアムが期待できるのは一定の前提を置いた理屈上の根拠によるものだが、長期にわたる資産形成にあっては、「投資のリスク」を取り込むことの方が、投資家にとって「割りがいい」といえる。

それでは、現実の投資の世界では為替リスクとどう付き合ったらいいのだろうか。

一般に期待リターンを増やさないリスクは取らない方が賢いが、例えば、株式に投資する場合、日本とは異なる景気循環や市況、日本にはないビジネスに投資できる点で、外国株式への投資は分散投資上の意味が大きい。

理想的には、為替リスクのヘッジを行いながら外国資産に対して投資の範囲を拡げていくといいが、個人には為替ヘッジのオペレーションは手間やコストが掛かって現実的ではない場合が多いだろう。

一方、為替リスクも株式などのリスクと同様に一つのリスクに対する投資ウェイトを大きくすると、その悪影響が大きくなる類のリスクだ。

現実的には、個人が為替リスクをある程度取って運用することを甘受しつつ、そのリスクは外貨預金や外国債券ではなく、外国株式に「割り当てる」ことがいいのではないか。巨額の公的年金資産を運用する機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のような機関投資家も為替ヘッジを行っていないことを考えると、この程度が現実的だろう。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第101号 2011年7月27日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2011.07.27 10:28:30



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