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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.09.09
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ある金融業界誌を見ていたら、対面営業の金融機関が投資信託の販売をどう強化したらいいか、という特集記事があった。この記事の中で、対面営業の金融機関寄りと思われるファイナンシャル・プランナー(FP)は、顧客に「運用の目的」を明確に意識させることの重要性を説いていた。

このFPによると、例えば、老後の生活設計のために訪れた客には、老後の生活のイメージを明確化させ、手持ちの資金を、「生活資金」(入院費など突然の出費への備え)、「ゆとり資金」(年金等で足りない生活費を補填するための資金)、「残す(増やす)資金」に分けると、考えやすいのだという。このFP氏によると、生活資金は普通預金口座、ゆとり資金は「リタイヤ後に備えるのならば分配型ファンドや変額保険などの年金形式で受け取れる商品が合っています」、最後の増やす資金は「国際分散投資をしながら長期運用」するのだという。

はっきり言って、「ゆとり資金」と「残す(増やす)資金」の区分がムダであり、「老後のキャッシュフローで足りないお金を補填する、ゆとり資金」というものをイメージさせることによって、分配型の投信や個人年金保険といった、銀行にとって手数料の大きな商品に資金を誘導する手掛かりにしている。

分配型のファンドの多くは為替リスクを大きく取っており、この上さらに、国際分散投資をしながら長期運用という資金を設けると、為替リスクが過大になることが多いし、全体を見通した時の運用計画には、「ゆとり資金」のリスクも考慮されるべきであり、余計な資金区分が運用の非効率性につながっている。

金融商品の売り手側が、顧客へのコンサルティングサービスとか金融商品の目利きとか言っておこなっているのが、こうしたインチキ・セールスなのだ。はっきり言おう。対面型の相談窓口に行ってもろくなことはない。自分の手持ち資金などのデータを提供しつつ、先のFPの話のように、役に立たない話を聞かされて、金融商品を売り込まれるだけだ。

思い切って断言すると、「運用目標」とは、顧客の目を純粋な運用の損得から逸らすための方便だ。

運用の目標は、「お金を増やすこと」に決まっている。もちろん、増やし方の「事前の時点での」評価は、負うことになるリスクと期待収益の効率に依存するが、適切な大きさのリスクの下に、ベストな効率で資産を増やそうとすることが資産運用の一般的目的であり、その際にコスト(実質的な手数料=確実なマイナス収益)が特に重要だ。

老若男女、立場の違いを問わず、運用判断に必要なのは、それだけだ。後は、どれだけ運用に資金を回すか、あるいは、どのようなペースで運用資金を取り崩すかといった、キャッシュフロー・マネジメント(会社で言えば「資金繰り」)があるだけだ。

お金、あるいはもう少し範囲を拡げて金融資産のいいところは、処分の柔軟性だ。お金があれば、老後の生活資金のために、あるいは、結婚資金のために、子供の学費のために、病気の時のために、いざという時の備えのために、あるいは、将来の各種の「夢を実現する」ために、何れの目的にも使うことが出来る。

この目的意識は、貯蓄や運用のモチベーションになるので、全てが悪いわけではないが、資金の使途別にお金を用意しなければならないと考え始めると、余計な金融商品に目が向きやすくなり、運用の資金効率が落ちる。

たとえば、ある保険専門家は、率直に当面自由になるお金が100万円か200万円ある人にガン保険をはじめとする医療保険はいらない場合がほとんどだ(健康保険の高額療養費制度で医療費がカバーできるから)と言うが、「病気への備え」という過剰な運用目的をイメージすることによって、「5千円の医療費を、1万円の保険料で買う」と言われるような、非効率的な契約を結ぶように誘導されている。

実際には、先のFP氏が言う分類だと、「生活資金」と「増やす資金」があればよく、増やす資金の中でどれだけリスクを取ることが出来るかを考えた上で、リスク資産部分はそれこそ「国際分散投資」の最もリスク当たりの効率のいい組合せで行えばいい。突然の病気など、出費要因があれば、運用資金を取り崩せばいいだけのことだ。資金使途別にお金を用意しなければならないという余計な先入観が運用の効率性を損ねる。もっと言えば、運用目的に過剰に首を突っ込むことで、金融機関のマーケティングに絡め取られやすくなっている。

FP系のマネー・アドバイザーの中には、「運用目的」の重要性を強調しすぎる人が少なくない。

人生の一般論として、「目的」を持つことがいいことだ、という刷り込みがあるのだろう。あるいは、少々意地の悪い推測を許して貰うと、彼らは、運用の効率性を測る手段と正しいアセットアロケーションの作成能力を持っていないから、顧客の「運用目的」に頼るのだろうし、そこに話題を持っていかないと、語るべき事がないのだろう。もちろん、こうした人々が、金融機関の手先となって、保険や運用商品の販売を仲介して、手数料を貰っていることもある。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第104号 2011年9月9日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2011.09.13 15:37:52



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