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山崎元の経済・マネーここに注目

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2011.09.30
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ギリシャの状況が深刻の度を増している。最近数カ月で行われている先進国の蔵相レベル以上の会議では、もっぱらギリシアを含む欧州の問題にどう対応するかがホットトピックのようだ。日本国内では、円高問題に対する関心が高かったが、世界的なレベルでは、大きな問題とはされていなかった訳だ。

ギリシャの問題について、筆者は、昨年の5月に、このメルマガで原稿を書いている。自分が何を言っていたか、どこが間違っていたか等を点検することは、投資にあっても重要なので、少々振り返ってみたい。

当時、筆者は、ギリシャ問題の日本に対する短期的な影響を大きく見積もっていない。これは、当時の株価の動き等から見て、やや過小評価だった。

また、当時の筆者は、ギリシャ一国の問題は、金額にして最大限でも数千億ドル・レベルの問題なので、EUはこの問題を遅かれ早かれ解決するだろうと見ていた。しかし、「EUレベル」の得失を見ると、確かにそうかも知れないが、たとえば、ドイツ国内が、「どうして、我々の税金でギリシャを救済しなければならないのか」という問いに対して有効な説得材料を提示することが出来ないといった、現実の政治プロセスの問題について見落としがあったことは反省せざるを得ない。国やまして世界の利益で考えた結論を、個々の人や企業、あるいは国が、実際に実行するとは限らないことは、経済を考える上でしばしば見落としがちなことなので、注意したい。

一方、中・長期的な問題として、筆者は、当時のギリシャ問題を、日本の不良債権問題に譬えると「住専への公的資金投入」くらいのもので、問題の本体は、欧州の金融機関が抱える不動産関連の不良債権にある、と大きく考えていた。「中・長期」の問題はまだ答えが出た訳ではないが、「ギリシャのソブリン・リスク」という比較的扱い易いはずの問題を扱いあぐねている欧州の状況から見て、まだまだ先があると思われる不良債権の問題は、過小評価しない方がいいと(今でも)思う。

欧州の問題は、リーマン・ショックの後のような、いわば金融危機の第二弾につながるものなのか。

この問題を考える上では、「危機」を幾つかのパターンに分類することが、有用だろう。

会社の場合でも、危機的状況には幾つかの段階がある。切迫度の順番からいうと、手元資金が不足する決済の危機、必要な資金を調達できなくなる信用の危機、もう一つは業績の急激な悪化だ。

国の経済単位で考えると、国が外貨不足に陥るか或いは金融機関が決済資金を調達できなくなる「流動性の危機」、大規模な信用の収縮が起こる「信用危機」、さらに「深刻な不況を招く何らかの危機」ということだろう。

流動性の危機は、国単位で外貨の決済を巡って起きることが多く、経常収支の赤字を資本収支の黒字で補っている新興国から資金流出及び新規資金の流入枯渇が起こるのが典型的な流動性危機だが、サブプライム問題に続くリーマン・ショックの後には、民間の国際的な金融システム全体で流動性危機が起こりそうになった。これは、政府と中央銀行の努力によって深刻化が回避されたが、前回の銀行救済に対して各国の国民から相当の批判を受けた後である今回の欧州問題が流動性の危機に発展した場合、これが十分に回避できるかどうかについては、不安が全くない訳ではない。

信用危機は、日本の場合で言うと、金融機関がバランスシートに問題を抱えリスク回避に動いたことと、借り手の側の信用度にも疑義が生じたことで、「貸し渋り」の形で顕在化した。信用危機は、投資の減退から不況を招くと共に信用収縮からデフレを招いたことは、日本人のよく知るところだが、今後数年の推移によって、欧米人も実感するところとなるかも知れない。

不況に至る危機には、バブル崩壊による資産価格の大幅な下落がもたらす逆資産効果によって生じる需要不足のような需要面の危機もあれば、オイルショックや、東日本大震災後のサプライチェーンの損壊のような供給側の要因による危機もある。何れも、生産の縮小から、所得や雇用の減少につながる。

米・欧を中心とした現状は、こうした危機の何れかに至る可能性があるのだろうか。

筆者は、流動性危機にまで至らないと思うが、一時的な信用危機を含む景気後退期は十分あり得るのではないかと考えている。

再び日本の経験から判断すると、信用危機は、金融機関と借り手の両方にあって潜在的な損失が十分に顕在化することと、十分な資本の手当が行われることによって解消するが、特に欧州の現状はこれからかなり遠い。

ただし、この危機が、先進国の財政危機からインフレに至るような経済破綻を直ちに導くものでは無い点には、特に投資家として注意が必要だ。民間の資金需要が減退し、また、貸し手がリスク回避的になることで、政府部門は大きな資金吸収余力を得るし、民間の信用収縮を借り手としての政府が補わないと信用収縮からデフレに陥る(これも日本は経験済みだ)。資産運用上は、今後、欧米が「日本化」する可能性を軽視しないことが重要だろう。財政赤字の拡大から「次は、インフレ」と即断して、インフレ対策モードの資産運用に早く移行すると(極端な典型は国債の空売りだ)怪我をする。

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楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元
(楽天マネーニュース[株・投資]第105号 2011年9月30日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2011.09.30 13:53:05



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