クリスマスの時期になると良く見かける「リース」について。
花環 wreath クランツ kranz(独)
リースの歴史は古く、聖書では、イエスキリストは、
茨の冠を編んだものをかぶせられ十字架に貼り付けられた、とあります。
紀元後1世紀、古代ギリシャ、ローマ時代には、
英雄、勝者、歌手、詩人などを讃え、名誉を表すものとして、
頭に冠として捧げられました。
月桂樹、オリーブなどで作られ、聖油をかけて、頭を冷やしました。
今でも、マラソンなどの勝者に頭冠を捧げるのは、そのなごりですね。
中世ゲルマニアでは、緑の葉の冠が見られ、王様の黄金の冠のもととなりました。
バロック時代には、花嫁の飾りとして用いられ、
いろいろな花や葉を使ったものが生まれました。
17世紀には死者に捧げる物として使われ、
クリスマスに使われるようになったのは20世紀になってからです。
ドアや壁掛けとしての用途は20世紀終わりからになります。
その間、時代時代の流行でバリエーションを変えながら、
現代へと引き継がれています。
日本では、クリスマスのものというイメージの強いリースですが、
西欧では、死者に捧げるものとしての用途が非常に多いようです。
これは、もちろん、キリストのイバラの冠からきています。
リースは、輪という、ずっと繋がっていく線の循環であるところから、
「 永遠 」「 輪廻転生 」「 尽きることなき神の愛 」の象徴です。
これは、かなり、宗教的な意味合いが強いと思います。
「永遠に時を刻む」ということから、製作するときには必ず、
時計周りの流れで、葉や花を入れていきます。
これは結構、でたらめにやっているものを多く見かけます。
リングの太さと中心部とのバランスも、美しく見えるバランスがあります。
素材は、いろいろなものを見かけますが、
常緑樹(冬でも緑の葉を保っているモミ、ヒバなど)を使ったものは、
枯れない緑、「永遠の命」の象徴です。
また、日本では、ドア用リースが多いですが、西欧では横置きにし、
4本のロウソクを取りつけ、クリスマス4週間前の日曜日から、
1本ずつ、ローソクに火を灯してゆきます。
この期間を、「アドヴェント」「待降節」といい、
キリストの誕生の到来を待ちわびる、という意味があります。
これは、昔、アスマン先生というドイツのフローリスト学校の先生が、
延々と熱く語っていらっしゃったのですが、
「ロウソクが、自らを燃やしてゆく姿は、
自らが犠牲となったキリストの命の象徴である。
依って、ロウソクは、本物のロウソクでなくてはならない。」
ということです。
冬の夜長、ロウソクの明かりで過ごすのもいいですね。
ただ、作るだけでなく、こういったフラワーアレンジの歴史を知ることも、
大切な授業の一環です。
また、今度、クリスマスのいろいろな素材についても、
触れてみたいと思います。
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