『パーフェクト・ブルー』　宮部みゆき

2005.09.02

カテゴリ：本

『パーフェクト・ブルー』　著：宮部みゆき

1989年の作品なので、言葉遣いや小道具などに、
若干時代遅れ感があるのは否めないけれど、
軸となる「甲子園優勝有望校の不祥事」は、
ホットなネタかもしれない。

それに絡む事件も、投薬実験によるドーピング疑惑、
そして、自動車の欠陥による事故死がキッカケとなったり、
宮部氏は、先見の明があった？

もっとも、この作品中の事件は、「不祥事」などと言えるような、
生易しいものでない、大事件だけれども。

高校野球のエースピッチャーが、焼き殺される事件。
ライバル校に関係のある人間の、やっかみかと思われたが、
事件は、大きな社会問題にもなりかねない真相を、抱えていた。

そしてそれを知った大人たちは、それぞれの理由から、
それぞれの方法で、事件を「隠蔽」しようとしていた。

元警察犬で、今は探偵事務所に雇われて（？）いる、マサ。

彼の視点で語られる、ほのぼのとした家族的で、
ちょっとコミカルな探偵事務所と、
ガラスの床の上に立たされているかのような、
製薬会社でのピリピリとしたやり取りの対比が、
飽きさせず一気に読めました。

しかし、犯人に意外性を持たせようとしたのか、後半、
状況を登場人物に語らせる説明風になってしまったのが、
ちょっと残念なような。

ここから彼女の、いわゆる「社会派ミステリー」といわれる傑作が、
次々と生まれていったんだな、と思わせる、
胎動のようなものを感じる作品でした。