『GO』　金城一紀

2006.03.11

カテゴリ：本

『GO』　著：金城一紀

高校生の、純愛ストーリー。

と、処々では評判よく謳われているけれど、
在日韓国（朝鮮）人の苦悩というか、何かと言えば、
俺は韓国人だー的な描写が頻繁なのが、
私的には、イマイチな印象でした。

日本で生まれ、日本で育った日本人には、
どうせ俺たちの苦しみなんて分からない、と、
念を押して、何度も言われているようで。

そりゃ確かに、ちっぽけな東の果ての島国でありながら、
占領も侵略も分断もされなかった幸運な単一民族には、
そんな苦悩なんて、想像もできないけれども。

喧嘩も強くて、みなにも一目置かれており、
偏差値の低い「日本人の」学校に通ってはいるけれども、
難しい本も難なく読むインテリで、
音楽にも映画にも絵画にも精通している、
いわゆるヒーロー然とした、在日韓国（朝鮮）人の高校生。

そんな主人公が惚れる女の子も、
これまた飛んでるというか、イっちゃってるような子で。

2人のデートを、「カッコイイもの探し」と銘打ち、
お互いが「カッコイイ」と感じた本や音楽や映画を、
互いに勧めるのだけれど、そこら辺のポップスではなく、
マイルス・デイヴィスを聴きながら、ジャズ史を語ったり、
ルオーやシャガールの絵を見に行ったり、
オペラを観に行こうと計画したり。

彼女の家のAVルームで、ビデオや音楽を鑑賞しながら、
1日中キスしながら体中愛撫しながら、
「好きよ」とささやきながらも、
「初めてお互いを受け入れるのはこの場所ではない」
なんて暗黙の了解だかなんだかで、最後まではいかないとか。

そんな、ワルぶってるけど実はイイヤツっぷりが、
やや鼻についた、というか。

彼女といよいよ致そうとする寸前のところで、
彼は、自分は在日韓国（朝鮮）人だと告白する。

すると、黒人のことを「アフリカン・アメリカン」と言い、
インディアンのことを「ネイティブ・アメリカン」と言い、
日本人が嫌いな父親に、韓国人や中国人とは付き合うな、
とずっと言われてきたと、彼女は言う。

それを聞いた彼は、彼女の先祖にも、
中国や韓国人の血が混じってないとはいえない、
縄文・弥生人まで遡れば、必ず混ざっているはず、
なぜなら、彼女の家系がお酒に弱いのは、
中国北部のDNAを、受け継いでいるからだ。

なんて、ベッドの中で裸でウンチク垂れ、
結局何もせず、彼女一人残して帰ってしまう。

それを、「純愛」と言うのならば、純愛なんて、
都合のいい理想にすぎない。

高校生の恋愛物語、として読むには、非現実的すぎるし、
在日外国人の複雑な思いや苦悩を読み取るには、
軽すぎるし、で、どっちつかずな印象の、一冊でした。