パリ、テキサス/ヴィム・ヴェンダース監督
アメリカ、テキサス州にパリがある・・
ねたバレ10%
失いそして、もがき苦しんだ果てに、現実を受け入れた男に、そこはもはや必要がなくなったのではないか?
この作品は★★★★★5つ星です!思い入れが深いです。
これを観たとき、情緒不安定だったもんで、5日間残像がきつく、外へ出れなかったのを覚えています。(* ̄0 ̄*)
理想的な「旅」、美しい映像と美しい音楽の融合による、ほんとうに美しいロード・ムービー。「旅」というものの理想的な似姿がここにアル・・・・さらに、コアなファンを持つカルトムービーのようにも捉えられる。
男と女の愛の狂気・嫉妬・閉塞した心理と、荒涼たる大地しかし、開放された空間をさ迷うこの絶妙のコントラストに鳥肌どころか、脂汗びっしりかきましたよ~。一組の夫婦、そこには、愛しすぎても愛しつくせない夫の姿・・・美しい妻との間に子ももうけるが、一時も離れずに側にいなければ心がズタズタになってしまうこの男・・そうだ俺はもっと遠くに旅にでよう・・逃走への憧れか、冒頭シーンから、「なぜだ、どうしてだ」先がよめない。最高のつかみですね。
ライ・クーダーのスライド・ギターがBGMになっていて、これはなかなかいい味を出していて文句なしによかった。
まったく巧妙な手口というか、エンドロールまで呼吸を忘れたかのように、吸い込まれていった。監督の「状況のモザイク」は、ほんとにラストまで続くのだから、とにかく先入観は持たずに一度皆さん絶対に観てほしいです。
自分の中の壊れた何かをとりもどすための心の旅なのか、それでも失われた過去は決してもとに戻ることはない。
ガラス越しの夫婦再会のシーン・・・ここが個人的に好きな演出なのだけれど、
マジックミラーを通して見えたものとは・・・
人は暗いところから明るいところは見えるけど、明るいところから暗いことろは見えない。辛い時には幸せがはっきりとどんなものだったか分かるのに、幸せだと思っているあいだは、すぐそこまで迫っている不幸の予兆さえ見破ることはできない。
この「肩越しショット」の連続切り替えしで、普通はだんだん親密な対話になろうはずの効果を、長時間で見事裏切りすれ違いの心理表現にすり替えていくという(私の思い込み)刺激が、鮮やかで満足した。
「男は女を想像を絶して愛していた」
「女は男が去った後もずっと話しをしていた」
近くに居すぎて壊してしまった愛。少し離れてやっと思いやることができたのに、その時にはもう相手はそこに居ない。もう傍には誰も居ない。ミラー越しシーンの長まわしにも圧巻だが、後半は自分にそんな余裕はなかったのは確か・・
女の私としては、悔しさ半分、歓喜半分、両方が劇中に交差し絡まったことに、多大な敬意を払いたいのですが、男という生き物の「生まれながらに持っている悲しさ」を家族という囲いの中で挫折し、実感し、そして新たに進んでいく姿全てを理解はできません。
なぜなら、男と女の矛盾こそがこの映画の言わんとする意味だと思うから、私の珠玉の作品ベスト5入りのまま温め続けたいのです。この先何があろうとも、忘れられない映画です。
ヴィム・ヴェンダースの作品
は、がちがちに作り込んでしまうのではなく、無駄を省いた脚本で徐々にこちらに染み込んで語りかけてきます。
1984年カンヌ映画祭グランプリ&国際映画批評家大賞&国際カトリック映画事務局賞受賞/1984年イギリス・アカデミー外国語映画優秀監督&イギリス批評家協会作品賞&主演男優賞(スタントン)受賞/1984年ドイツ撮影賞/1985年バイエルン映画撮影賞/1985年連邦映画銀のフィルム賞(製作)
【スタッフ】
◆監督:ヴィム・ヴェンダース
◆製作:クリス・ジーヴァニッヒ
◆製作代表:アナトール・ドーマン
◆脚本:サム・シェパード
◆脚色:L・M・キット・カーソン
◆撮影:ロビー・ミュラー
◆撮影助手:アニェス・ゴダール/
ピム・テュイェルマン/
マルティン・シェーファー
◆音楽:ライ・クーダー
◆美術:ケイト・アルトマン
◆編集:ペーター・プルツィゴッダ
◆編集助手:アンエ・シェネー/
バルバラ・フォン・ヴェイタースハウゼン
◆衣装:ビルギッタ・ビョルケ
◆録音:ジャン=ポール・ミュジェル
◆助監督:クレール・ドゥニ
◆製作助手:パトリック・クロイツァー
【キャスト】
●トラヴィス→ハリー・ディーン・スタントン
●ウォルト→ディーン・ストックウェル
●アンナ→オーロール・クレマン
●ジェーン→ナスターシャ・キンスキー
●ハンター→ハンター・カーソン
●ハンター(3歳)→ジャスティン・ホッグ
●カルメリータ→ソコロ・ヴァルデス
●ウルマー博士→ベルンハルト・ヴィッキ
●橋の上の男→トム・ファレル
●バーテンダー→ジョン・ルーリー
●ナース→サリー・ノヴェル
●クラブのバンド→ザ・マイドールズ