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そういちの平庵∞ceeport∞

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 「サシ」

『サシとアジアと海世界─―環境を守る知恵とシステム』村井吉敬著

サシ」とはマルク(モルッカ)諸島の言葉で休ませるという意味である。村の人々は、浜辺をいくつかの区画にわけ、その半分を一年間禁魚にするという。漁をすればするだけ採れるのだが、資源を根絶やしにしないという考え方が生きているのだ。
 ヤシの実についても「サシ」がある。
 自然があれば開発しようとし、そこに特産があればあるだけ取ってしまうような激しい消費社会の中にいる私達に、東南アジアの海で暮らす人たちの生活は実に自然と共存しているように見える。

日本におけるアイヌ民族も琉球民族もそうだった
アイヌの人たちは鮭を取るにもこれは熊の分、狐の分とそしてこれはアイヌ(人)の分と自然の恵みに感謝しながら狩猟していた
決して奪わず感謝の心を大切にしながら自然と共生していた
自然を知り、自然を畏れ敬い
命と言う物差しでつましく生きていた昔の日本人だが・・・

しかし、この習慣も近年、インドネシア政府や先進国の「開発」によって急速に壊されつつある。
「開発」と「近代化」の波は、人々に豊かな自然の恵みを与え続けたマングローブ林の伐採にもつながっていく。マングローブから日本人の使用する「南洋備長炭」が作られ、跡地には日本人が食べるエビが養殖されている。
そしてこの地域には、かつて日本軍による集団虐殺があった島も存在する。
「サシ」「エビの養殖」「マングローブ」「日本軍」と、一見何の関係もなさそうなこれらは、実はどれも私たちの今の暮らしと深く結びついている、と著者は書く。
無数に点在する島々を小舟でまわり、村から村を自分自身の足で歩き、人々の声に丁寧に耳をかたむけ、自身の疑問をひとつひとつ解き明かしていく過程は、素晴らしい
自然と向き合い共存して暮らしている人々と、その生活を意識することなく破壊する側にまわっている私たち日本人に耳の痛いお話


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