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重信川の岸辺から

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2008/07/11
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 天安門事件を批判する詩を書き、その後も体制批判を続けるリャオ・イ・ウが中国社会の最底辺に生きる人びとを訪ねてインタビューしたものをまとめてものである。中国では発行後すぐに発禁になったという。

 そこに紹介されるのは、浮浪児、出稼ぎ労働者、乞食の大将、麻薬中毒者、迷信で隔離された人、不法越境者など、改革開放の流れに取り残され、あるいははじき出された人たち。

 同性愛者、女遊びにふける人、三陪、新新人類、人買、辺境守備開拓団女性兵士の息子など、時代からはじかれた人、時代の流れの中を泳ぐ人、貧しい故に売られる人、政府にだまされて辺境にやられて女性兵士など。

 トイレ番、死化粧師、楽師兼なき男、などの底辺の仕事。老地主、老右派、老紅衛兵、「厳打」からの辛存者、立ち退きを命じられる人、蒋介石の派遣したスパイ、胡風の囚人仲間など、政府の政治運動に翻弄された人たち。

 法輪功修行者、地下カトリック教徒、百歳の和尚、チベット巡礼者など、政府の弾圧のなかをいきる宗教者。

 破産した企業家、冤罪の農民、上訪の詩人、反戦の革命分子、天安門事件の反革命分子など、冤罪になき、共産党官僚たちとその仲間の腐敗に苦しめられる人たち。

 これらを通して得られたことは実に多い。

 ・中国の繁栄が農民を犠牲にして達成され、その農民はいまなお最底辺で苦しんでいる人たちが多いこと。農民が都市住民と差別されていること。

 ・権力者の政治運動が、中国の民衆にものすごい犠牲を強いたということ。その後遺症はいまなお続いているということ。革命直後の運動、人民公社、大躍進、反右派闘争、文化大革命、その他。そしてそれぞれの実態のすさまじさ。

 ・中国の繁栄は体制の内部にとてつもない腐敗をもたらしているということ。

 ・権力による恣意的な抑圧、弾圧に冤罪を被る人が絶えないということ。

 この本のインタビューのほとんどは、四川省で行われている。だから、四川大地震と重なって、複雑な思いがした。

 また、莫言の小説は中国の東北地方を舞台にし、奔放な想像の世界を展開しているが、この本を読んでみると、莫言が極めて真摯に現実と向き合っていることがわかった。

 以前『中国農民調査』をはじめ数冊の本を読んで、中国の低層について、また、貧困と富裕の猛烈な格差を知っていたが、改めて、それを痛感した。

 そして、これもいっておかなければならないのだが、この本を読みながら、井戸の中をのぞいているような感じがした。つまり、外国である中国の姿を見るつもりでのぞいたら、自分の姿が見えたということである。

 中国と日本とでは大きく異なる面もあるが、きわめて共通する面もあるということである。明治以降の日本を見れば、資本の蓄積のために農民が犠牲にされた。政治家たちのさまざまな施策によって国民はそのつど振り回され、時には多大の犠牲を生んだ。低層に生きる人びとは中国の人びとと同じような苦しみを味わっている。規模と程度に若干の差はあるにしても。

 こうみてくると、中国の悲惨さを他国の悲惨としてつきはなし、あるいは見下げる気もちには到底なれなかった。中国と日本とには、大きなちがいがある。だが、庶民はいつの時代にも権力と富を持つ者に苦しめられて生きるものではないか。

 最後に、中国に当局の弾圧に遭いながら文字通り地をはうようにして、このような本を書く人がいる。日本の今の時代は同じような本が書かれて当然の社会だと思う。真摯に取り組んで本にしている人もいるが、まだまだ断片的である。社会の低層についてのもっともっと多くの本が、もっともっと総合的な本が書かれることを願っている。

 
 





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Last updated  2008/07/11 03:52:49 PM



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