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長押 綴

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2012.10.31
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カテゴリ:◎2次裏書
その人の欠点が割とひどくても。

それがその人のアイデンティティー足るのであれば。
背負ったり囚われたり惑ったりするのであれば。
ありやろとうちは思う。

やけど、奴は欠点を人のせいにしようとしとった。
奴はうちらの仲間を、過去を背負って頑張ろうとしとったあの人を殺したのに、あの人のことを考えとらんかった。

うちにはそれが許せんかった。

仲間にも、赦さんでええんやと言い続けた。


*******

重要な欠点

*******


欠点という名の特長。
プロと呼ばれる人は皆持っとると思う。

うちかてそうや。


海が好きで苦手な人の気持ちが分からん。
外に居て外に遊びに行きたい人らとは話が合わん。

うちはどこでも海女で、海女以外にはなりたくてもなれへん。

やけど、こっちの世界やとそれはうまく活かせたから。
そういうのはやっぱり相性の問題なんやと思うたんや。

うちのファームが得意な親友もそうやった。
やけど、親友はお母さんになった。

うちはそれが少し。
少し、羨ましかった。
そして愛おしかった。

うちがもし男やったら、親友の旦那さんになって守りたくなるくらいに。
やけどうちは女で、ここは女はお母さんにいつかならんといけない世界で。


そんな世界で、優しい男性と出会うた。
バッサリショートのうちと、綺麗なロングヘアのその人。
すぐピリピリしてまううちと、マイペースなその人。


その人の所のリーダーが問題起こして追い出されてからはその人がリーダーの任を継いだ。
やから余計に日々かっこよく見えた。






最近、その人と結婚式を挙げた。
結婚式ゆうても手作り手作り手作りのオンパレード、元の世界のそれとはかけ離れてるけど。
でも、うちはこういうやつのほうが好きや。


飼われた蜘蛛の糸で織った布、しっかりとした構造の建物や罪人の橋を通っていく海岸への道。
使うたびに少し胸をイライラが過るけど、その度に奴らの元仲間やったその人の笑顔が消してくれた。


親友の娘がお祝いに花束を渡してくれた。嬉しかったけど、正直感想としては「おもろい」のひとことやった。
海辺に育つ花と、動物のふわふわした毛と、山の中で採れたバラキャベツの未熟苗と色々。

色々なものがちゃんぽんされとるとは思うたけど、でもここで育つ文化がこういうもんなのかもしれんと思うたらなんや面白い気持ちの方が勝った。

この世界で生まれる文化はどんなもんなんやろうな、なんて思うとる時、その事故は起きた。





奴が女の子を孕ませて逃げたと聞いた時、うちらには条件反射的に怒りがよみがえった。
あの野郎またかと。
いくつ問題を起こせば気が済むんかと。

何人かの奴に優しい人らは事情があったんやないかなんて言うとったけど、うちら、特にうちは疑いしか持てんかった。

集団でしか生きられん欠点を持っとる癖に、集団で生きられんようなことをする奴は、集団をおかしくする奴や。そういう生き方は、特徴は、おかしい状況なら、例えば毎日がサバイバルとか地獄ならうまくいくやろうけど、平時は逆効果。

英雄の私生活が異常やったとかいうたぐいの話と同様や。

奴に同情できる部分があるとかうちは考えん。
奴について考えるだけ頭の容量が勿体ない。
ゆうて親友の旦那は自然にそれができとるようやけど、うちは中途半端に気にしてまう。あかん。

やからそいつが暫くして爆発事故に巻き込まれたと聞いたとき、奴に恨みのある人物が何か仕込んだ可能性もあるやろな、とか、そうやとしても同情はできんな、と思うた。

残された子のことだけが、ちらと心配になった。

そして、うちの髪を綺麗にしてくれた、あの娘のことが。





日が経つにつれ、残された子は奴に似て来る。
やけど周囲の人達はこの子に何も教えないようにしとる。

他の子には教えとることでさえ。

やから、あの子は戦闘力はとても弱い。
人間関係もうまく築けん。

しょうがないんや。

やって、下手に育てたら、また奴と同じように育ちかねん。


奴は辛い思いをしたから、幸福に育てればそうはならんとうちの旦那さんは言うとるけど。
正直言って信じられん。

奴の過去の話なんて聞きたくもないし。


時々残された子の見せる表情が奴を彷彿とさせるたびにぞっとする。
被害者は奴以外の全員や。
うちらの欠けてる点は奴への同情心だけや。

やのに何でこれ以上気を使ってやらんとあかんの。





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最終更新日  2017.11.12 22:42:43
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