カテゴリ:茅原選手について
GP制覇後、燃え尽き症候群に ― グランプリ(GP)の優勝から8年半が経ちました。 GPを勝った時は、金のヘルメットを被ることが目標でした。獲りたくて、獲りたくて、がむしゃらに走っていました。ほかのSGを勝っても、賞金王を獲らなければ1年を終えられないというくらい。それだけを考えて生きていた。だから、獲れて当たり前だったと思います。 次の年は、年始から飛ばしました。GPを獲った翌年に出ていなかったら、「今年は茅原、いないんだ」と思われる。GPは行くのが当たり前で、出場して結果を残すことが最低限のノルマでした。 ―そのまま突っ走り続けるのは…。 無理でしたね。GP制覇から3年後、30歳の時にモチベーションが下がってしまいました。 この仕事は、前年の結果にかかわらず1月1日になったら仕切り直し、一から“よーいドン”です。GPしか見ていなかったから、ほかのSGに興味も持つことができませんでした。「獲れれば良い」ぐらいの気持ちでSGを走っても、当然獲れません。毎年、同じことの繰り返しだな。このまま同じことをずっと続けるのか…と。未来ばかりが見えてしまって、現実に目を向けられませんでした。 あの3年間は、僕的には凄いしんどかったです。周りの期待に応えるために、無理やり頑張っている自分がいた。それでもガムシャラにやって、2019年のGPに出場したけど、事故艇に乗り上げて一瞬で終わりました。 レースを振り返ると、相手に対して「頼むからコケないで欲しい」と思っていました。何かあったら避けようという、自分の準備ができていなかった。気持ちが狭くなっている、そう感じ、そこで気持ちが切れてしまいました。 ―ボートだけでなく、同じことを思う人は多いと思います。 人間、働きたくない時期はあると思うんですよ。だから、GPを目指すのをやめました。もっと自分の好きなことをしていこうと。仕事のない時はしっかり遊んで、仕事に行った時は集中して稼いで、多少の休みも作りながら1年間を過ごしたら、簡単にGPに行けました(笑)。めちゃくちゃ仕事に集中できたんでしょうね。 のらりくらりと緩急つけて生活していく間に、「GPに行くのは、どっちでもいいな」と思うようになりました。特にコロナでイベントがなくなって、GPの選手紹介で花道を歩く特別感もなくなったので、行く価値を感じられなくなりました。 コロナの時は、どこか練習感覚でした。お客さんが多いと、ダサいところは見せられないので、良いパフォーマンスができる気がします。皆、お客さんの数でテンションが上がる面はあると思います。 ―では、今年もGP出場はどっちでも…? 今年は、賞金王しか考えていません! 去年の夏ぐらいにボケ〜っとしていた時に、「来年は頑張ろうかな」と思ったので。12月には練習にも行きました。 2月地区選で地元GⅠ初制覇 次は地元SG初Vを目指す…? ―児島は子供の頃の遊び場だったそうですね。 親父に連れて来てもらっていました。目的はキッズコーナーのTVゲーム(笑)。親父は僕をボートレーサーにしたくて、目が悪くならないようにと、ゲームを買ってもらえなかったんですよ。親父はボートをして、僕はゲームをする。“WIN WIN”の関係でしたね(笑)。 中学2年生になって、初めてしっかりとレースを見て、カッコイイなと。モーター音とか、エンジンの排気の匂いが潮風に乗ってくるのが良くて、レーサーになりたいと思いました。 僕は1コーナーで見るのが好きでした。1周1コーナーは、平面なのに立体に見えますし、スピード感や迫力がやっぱり違います。 高校に入ってからは、近くのアマチュアボートで手伝いながら、ボートにもたまに乗るようになりました。16歳で小型船舶の免許も取得しました。 ―2月の地区選で、児島GⅠ初優勝。 地元でSGかGⅠを獲りたいと思っていました。SGを獲ったら嬉しいんでしょうけど、僕の性格上、達成感でその後のモチベーションが下がりそうで…(苦笑)。 ―SGを勝ってもモチベーション維持で! もちろん地元のSGは獲りたいです。ただ、今年はグランプリ一本で考えているので、今回のオーシャンCも、そこに向けた一戦というのが本音。バチバチに気合を入れていって勝てるものでもないので、8割ぐらいの力で勝つくらいが良いのかなとも思っています。自らをコントロールできるメンタルを鍛えることも、年末に繋がりますから。 ―児島のSG出場は5回目です。何か準備されていますか? ここ2回はエンジンの引きも悪く、エンジン出しに苦しみました。去年12月に児島で練習してプロペラも試しているので、多少は活かせるかな? 自分を信じてやりたいと思います。 理想はメチャクチャ威力ある桐生&毒島の獰猛なターン ―茅原選手と言えば異次元ターン!意識していることはありますか。 僕の中で一番大事なのは、ターンの入り口からターン中期ですね。若い時の桐生順平とか、入り口のスピード感が荒々しくて、獰猛なターンでカッコ良いなと思っていました。「いつ、ハンドル切って立ったんだろう?」みたいなターンです。毒島誠さんもそうですが、最近はリスキーなターンはされていないと思います。 僕は、昔のターンのほうがメチャクチャ威力があると思っていて、あのターンが僕の理想。ほかの選手がしない今がチャンスなんです。 ―ウイリーについてはどうでしょう? ウイリーは前が浮けば浮くほど派手に見えますが、舳先は20〜30cm浮いていれば十分です。ボートの後方が水に浸かっていて、それ以外が接水していなければOKで、これが一番速いと思います。 出口のウイリーはもう自分の一部であり、誰にも負けないと思っています。 ―トップで勝つために必要なターンは? SGやGⅠで勝とうと思ったら、狭く、スピードを持って、角度をつける必要があります。水面を広く使うのは全然違って、究極のターンの話になります。 直線の位置取りも凄く重要です。結局、どんなターンができるかは直線の位置取りで決まります。普通はターンできないような位置から、角度良く差してくるのが白井英治さん。巧いですね。 ―シリーズ中の調子判断は、どんな所を見れば良いでしょうか。 成績が全てだと思っています。エンジンが出ていなくても、2、3着を獲れている時は、やっぱり何かしら良いところがあると思うんですよ。逆に、エンジンが出ていても着が獲れない時もある。そう考えると、1着じゃなくても3連単に絡み続けている時は良いと思います。 ―展示航走では何か意識していますか。 オリジナルタイムとかは全然気にしません。タイムは出そうと思えば出せるので。タイムを出そうとせずに、自分のターンをしてタイムが出ているのが理想です。 昔は最速タイムを狙っていましたが、今はタイムを出すことに意味がないと思っています。節間のタイムで賞金が出れば、技術向上にもなるし、面白いとは思いますが、転覆した時のリスクも大きいです。今は60〜70%は転覆しないように、30〜40%は狭いところでターンできるのか確認しています。 ―最後にオーシャンCへの抱負を! 年末に向けて、自分の能力を上げる機会になればと思っています。オーシャンCの先にGPがあり、地元SGをGPを走るぐらいの気持ちで臨んだらどうなるのか。気持ちをしっかりとコントロールしながら、チャレンジしてみたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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