中之島公園の猫たち-SAVE THE CATS IN NAKANOSHIMA PARK-

「猫という生き物は、無駄な争いを好まない平和主義者です」
そんな話を何度か書いてきました
そう、一般的には無駄な争いなど自ら起こしたりはしないのですが…

先日、突如として「猫の部屋」で事件が起こりました

ある日の昼下がり
穏やかな時間が流れる「猫の部屋」
お腹もふくれた仲間たちは、思い思いの場所で寛いでいました
お昼寝を楽しむ者、遊びに興じる者
…そしてお散歩を楽しむ者
その時はデビルちゃんがお外に出て、いつものようにお散歩をしていたそうです

デビルちゃんと言えば、自ら揉め事を起こし、その渦中に飛び込んでいくという、少しお騒がせな元ボス猫

人にはとことんまで甘く、いつでもWelcome
しかし猫には少々厳しく、いつもちょっかいをかけては風紀委員タエちゃんに怒られています
その日、風紀委員のタエちゃんは、たまたまツインルームの中にいました
ですから余計にデビルちゃんは、これ幸いと誰に気を使うことなく、ゆったりお散歩を楽しんでいました

お散歩中のデビルちゃんが、いつもちょっかいをかけることが多いのは、やはりチャコやチョビ
特にチャコとは公園時代にテリトリーがカブっていたからか、まさに天敵
どちらがお散歩中であったとしても、いつも相手のお部屋の前に座り込み、ジーッと様子を伺っています

またお外で遊んでいるサスケやアトム、ルパンなどもデビルちゃんにちょっかいをかけられたりするのですが…
いつもは風紀委員タエちゃんが疾風の如く飛んで来て、一瞬でその場を治めてます

そしてこの日
なぜがデビルちゃんが向かった先には…丸顔も凛々しいヒロコちゃん
そのヒロコちゃんを追いかけはじめたのです

「ヒロコ、逃げろ」
一部始終を見ていた司令塔Aさんは、ヒロコちゃんに声をかけたのですが…
やたら逃げ足が遅かったヒロコちゃん
あっさりとデビルちゃんの猫パンチを丸いお尻に受ける結果となりました
「…ヒロコ、遅いって」
Aさんは、あまりのヒロコちゃんの逃げ足の遅さに呆れながら、現行犯逮捕したデビルちゃんをお部屋に戻したそうです

「ペペちゃんと一緒に、頑張って鍛えておかないからだよ」

秘書たちは、Aさんの話を聞いてそう思いました。

デビルちゃん逮捕で、事件はそのまま終息に向かうように見えたのですが…
実はその騒ぎを、お部屋の中で聞いていた仲間がいました
チャコです

チャコとヒロコちゃんは、元々、同じホームレスさんのお家に暮らしていた仲間です
騒ぎを聞いて、仲間を守っていた元ボス猫の血が騒いだのでしょうか
デビルちゃんと入れ替わりに、お外に出してもらったチャコは…
あろうことか今の騒ぎには、何の関係もしていないフクちゃんを追いかけたのです
「フクちゃん、逃げろ」
またもや驚いたAさんは、フクちゃんに向かって声をかけました
普段は「猫の部屋」の天然系男子、おとぼけ猫のフクちゃん
しかしフクちゃんは、ヒロコちゃんとは打って変わって逃げ足だけは速かったようで…
チャコの猫パンチは届かず、フクちゃん襲撃事件は未遂に終わりました
こうしてデビルちゃんに続き、現行犯逮捕されたチャコもお部屋に戻されました
Aさんから話を聞いた、ヒロコちゃんと同じ名前のSさんは「チャコは、ヒロコちゃんを叩いたのがフクちゃんだと間違えたんですね」と言っておられたそうです。

その後、デビルちゃんとチャコが、「猫の部屋」司令塔Aさんから「謹慎処分」を申し渡されたことは言うまでもありません

「もう本当に疲れたよ」
仲間たちの無駄な争いを治めて、一気に疲れた気の毒なAさん
「まったくデビルといい、チャコといい…」
話を聞いた秘書たちも呆れていました

そして…
事件も治まったかのように見えた土曜日
謹慎処分を食らったデビルちゃんとチャコは、何だか少しだけしょんぼりしていたそうです

やはり自分たちが悪いことをしたのはわかっているのでしょう
「仕方ないよ、アンタたちが悪いんだからね」

間違えられたフクちゃんは、秘書たちに必死になって何かを訴えていました
「あー、可哀想だったねフクちゃん」
『何にもしてないんだよーチャコちゃん悪いよー』
「あー、そうだねチャコが悪かったねー」
『うん、ボク何もしてなかったのに…チャコちゃん悪いよー』

フクちゃんは普段、最上級の甘え方である、声のない「にゃー」をするのです。
しかし、その時ばかりは「ひゃー」とか「きゃー」とか声を出しながら、秘書の頭をさわり、腕に巻き付き、手のひらに頭を突っ込み、肩に頭突きをしながら…
ありとあらゆる方法で必死に訴えていました
「…も、もう、わかったよフクちゃん」

フクちゃんの訴えをひとしきり聞かされたあと、
秘書たちは、たまたま鍵のかかったお部屋の中にいたために、風紀委員のお仕事が出来なかったタエちゃんのところに行きました
「気にしなくていいよ、タエちゃん」
タエちゃんも何だか少し元気がなくて、秘書たちは声をかけたそうです。

「さぁ、もうみんな大丈夫だから」
そう言って秘書たちが、ふと「猫の部屋」に新たに出来た階段状の棚に目をやると…
ソーッと歩いているシャムちゃんの姿
その下の段には、休憩中のヒロコちゃんが箱座りをしていました
「シャムちゃん、どうしたのかな…」

その何秒後かに秘書たちは、驚くべき光景を目の当たりにしました
シャムちゃんはヒロコちゃんが箱座りをしている真上の段に座り、ジッと下段を見つめていたかと思うと…
次の瞬間、ヒロコちゃんの頭に猫パンチを繰り出したのです
「な、何でなのシャムちゃん」

もしかしたらシャムちゃんは、大好きなフクちゃんがチャコに間違えられたのは、すべてヒロコちゃんのせいだと思ったのかもしれません
突然のシャムちゃんの猫パンチを受けたヒロコちゃんは、普段からまん丸のお目々を余計に丸くしてキョトンとした表情をしていたそうです
その後、シャムちゃんは秘書たちに抱っこされて、デビルちゃんやチャコと同じようにお部屋に連れて行かれたのは言うまでもありません

「猫という生き物は、無駄な争いを好まない平和主義者です」
普段の仲間たちは、いつも静かに争いごともなく、思い思いに過ごしています
しかしたまには…たまには、こんなこともあります
仲間たちの人間（猫？）関係については、あくまでも想像なのですが…
「とりあえず…ヒロコちゃんお気の毒に」

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