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りらっくママの日々

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2009年07月01日
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カテゴリ:オレとボク
今日の日記( 「MW-ムウ-第0章 ~悪魔のゲーム~」感想とお疲れ?な私☆)


「オレとボク」(最終)


赤木くんが逝ってしまってから3年経った。

カリナは二人目を妊娠していて、もうすぐ生まれる。

もしもこの子も娘だったら、

生きていたらオマエはどうするのかな?

イグチくんは、やっぱり地元で家族とがんばっていくことになった。

ボクは相変わらず、今の仕事を続けている。

役職がリーダーと言う肩書きになったけど、

やってることはほぼ変わらない。


「青山くん~、待ってたよ!」

「こんにちは!待ってたなんて、大げさじゃないですか?」

あの妖怪みたいな老人ホームの園長が猫撫で声でボクを迎える。
この人は人によって対応を変えるらしい。

ボクが、半年前に、他の会社のソフトを利用して、
ボクの会社のソフトを応用することを担当者に教えたら、
そのことが伝わったんだか?
何か便利だったのか?

劇的にというか、
手の平を返したように態度が変わった。

「いや、ダメだな。青山くんみたいな人じゃないと。
キミって、ボクが何言っても、
何もなかったようにやってきてくれる。
そういう人って、ありがたいんだよなぁ。」

温かいコーヒーを出されて、
白髪でマシュルームカットをした、このジジイ…
いや、園長がニコニコして言う。

この園長から
こんな言葉が聞けるようになるなんて…。

ボクは苦笑いをして、
心の中でアイツに語りかける。

おい、こんなこともあるんだな?

赤木くんが笑ってるような気がする。

相手は妖怪だぞ?
まだ何があるかわからねぇじゃん?
気をつけておけよ。


時間が経つにつれて、忘れていくものだと言われていた。
忘れたくないけど、そういうものなのだと。
それが何だか淋しいけど、
当たり前のことだと。

ボクもそう思っていた。


でもそうは、なっていない。

何かの拍子にふと思い出す。
生きて遠くで過ごしている友達のように。
そして、心の中で話す。

でも、これから先の未来が作れない。
それが無性に淋しいのだ。

今、オマエと話したいことが沢山あるのにな。


おばさんから、アイツの形見に本をもらった。
分厚いハードカバーの本だ。
中にハガキが一枚、
しおりのように入っていた。

おい、この女の人、誰なんだよ?
もしかして、
オマエが好きだったらしい派遣社員の人か?

メアドがハガキにもあったし、
本にはどこかの住所が書いてあったけど、
ボクはそのままにしておいた。

好奇心がうずいたけど、
関わったら、赤木くんのことを話さなければいけなくなる。

この人の中で、赤木くんが生きたままでいるといいなと思った。

それとも連絡して欲しいかい?
どうしたらいいかな?

そう思っても、アイツからの返事は無い。

本は、ボクの本棚の奥で、

最後に撮った写真といっしょに深く眠っている。


携帯の音が鳴る。

「え?どこ?あ~、わかったよ。
今終わったから、そっち回って直帰します。」

またトラブルだ。
ボクは言われた幼稚園へ向かう。

「どうもわざわざ来てもらって、スミマセン~、青山さん。」

ベテランの先生が迎えてくれる。

「事務の補助の人が変わっちゃったんで、
ちょっとやり方がわからなくなっちゃったらしいんですよ。
新しい人が引き継ぎしたんですけど、
家の事情とか言ってすぐ辞めちゃったんで、
ちゃんと今の人に引き継げてなかったみたいで…」

「あ、そうなんですか?
そろそろメンテに来るつもりだったんで、
かえって良かったんですよ。」

ボクは営業用のスマイルをする。
先生も営業用のスマイルを返す。

相変わらず、
ここの幼稚園は先生の雰囲気が良くて、
居心地の良さが変わらない。

事務室に入ると予言園長が座っていた。

「あら~、何か久しぶりじゃないかしら?
元気にしてました?」

かん高くて人懐こい声で園長が言った。

「元気ですよ。
園長先生はいつも忙しそうですね。」

「そうなのよ~。」

「体調は充分気をつけて下さいね。」

あれ以来ボクは、
人がちょっと不調を訴えると、
つい過敏になってしまうようになった。

本人もだけど、
残された人たちのことをつい考えてしまう。

園長が言っていた、「何か起こる」は、
ある意味、起こったのかもしれない。
それとも違うのか、単なるきまぐれだったのか?

いずれにしても赤木くんの死は、
ボクにとって、かなり大きな出来事だった。

でも、園長は言った予言は忘れるらしく、
その話題は二度とのぼったことがない。

それでも、赤木くんが亡くなった後、ここに来た時には、
園長はボクをいきなりジッと眺めて、
「大丈夫よ。大丈夫。」
と、肩をポンポンと軽く叩いて笑顔を向け、去って行った。

何が大丈夫なのかよくわからなかったけど、
多分大丈夫なんだろうな。
叩かれた後は、
妙にスッキリした気分になったのを今でも覚えている。


園長先生と、新しいソフトの導入の話をして、
隣の部屋のパソコンルームに入った。

「もう一台、パソコンを置いてね、
それで、そのソフトの購入を検討しようかと思ってるんだけど。
お金のことはわかっても、使い勝手は私はほら、無理だから。」

園長が早速仕事の話をする。

中では女性の事務員さんらしき人がパソコンに何か入力しているようだった。
その人が振り向く。

「こちら、ヨシカワさん。
事務員の補助で入ってもらったの。」

ボクは、一瞬顔が固まる。
相手の女性の顔も固まる。

が、我に返って、名刺を取り出して渡す。

「宜しくお願いします。青山です。」

「ヨシカワです。」

お互いにお辞儀をする。

園長は微笑みながら、「いろいろ教えてもらってね。」
と、ヨシカワさんに向かって言った。

「宜しくお願いします。」
そう言って、ヨシカワさんは作ったような笑いを浮かべた。
ボクも営業スマイルを返す。

顔は笑顔を作っているのに、
心臓はバクバク音をたてていた。

ずっと園長が側にいて、
ボクがヨシカワさんにレクチャーしている様子をいっしょになって聞いている。

そして、パソコンルームを出た。

園長が、ボクの肩を軽くポンポンと叩いて笑顔で言う。

「大丈夫よ。大丈夫。」

ボクは一瞬固まってしまって、それから苦笑いを浮かべた。

今度はスッキリした気分にならなかった。

「では失礼します。」

営業スマイルで、事務室兼職員室を出て、
幼稚園の門を閉めた。

まだ心臓がバクバクいっている。

あれは…


フジサワさんだった。

「何も起こらないといいわね」

園長のかん高い声が聞こえたような気がした。



ねえ、赤木くん、
ボクは今オマエに話したいことがあるんだよ。
沢山伝えたいことがある。

でもさ、
もうオマエと未来を作ることはできないんだよな。
それがとっても淋しいんだ。

でも、オマエはボクの心の中にいる。
ボクの心の中に棲んでるよ。

ボクは生きてくよ。
だから見守ってくれ。

オマエの分まで、
オマエの見るはずだった世界を、
ボクは必ず最後まで見てやるからな。



(end)



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最終更新日  2010年03月27日 17時43分24秒
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