カテゴリ:ある女の話:アヤカ
今日の日記(「オルトロスの犬」感想と秋葉原でエコカー作り♪)
「ある女の話:アヤカ4」 いつもならスタジオの帰りはエリといっしょだけど、 その日はエリが風邪で来れなかったから、 私一人で帰るつもりだった。 エリがいないので、私がヴォーカルの代理をしたけど、 エリの高音がないと何となく物足りなかった。 しかも女は私一人だったし…。 何となくツカちゃんの話を聞いてたこともあって、 緊張してしまった。 みんなこのバンドは気楽でいいや~とかって言ってて、 変な音出してゲラゲラ笑ってた。 気を遣ってくれてるのかもしれないし、 ホントにそう思ってるのかもしれない。 でも、私もみんながそんな感じなので、 ユルユルな感じが、ありがたかった。 みんなでラーメンを食べて駅に向かう。 いつもなら、マノくんが降りた後、 ツカちゃんが私よりも手前の駅で降りるのに、 今日は降りようとしなかった。 「どしたの?」 「ん、送っていくよ。良かったら家まで。」 「え?そんなの悪いからいいよ。」 「嫌?」 「嫌じゃないけど…。」 ツカちゃんは無口だから、何話していいかわかんないや。 私はしゃべる方だけど、 聞き役の方が多い。 何か聞かれて返すってことなら沢山話せるんだけどな。 ツカちゃんは私の駅に着くと、いっしょに降りた。 でも、何もやっぱり話そうとしなかった。 私もこの前の話を聞いてるから、 何となく話にくくて困る。 そのことばっかり頭にあったのかもしれない。 口走ったのは、ストレートなことだった。 「何かね、エリが変なこと言ってたから、 ちょっと緊張しちゃうよ。」 「何?変なことって?」 「え?あ、 いや、やっぱり何でもないや。」 バカか私は。 こんなこと言ってどうすんだよ? 「ああ… アレか…。」 ツカちゃんは少し顔を赤くした気がした。 「そういうこと言われると俺も緊張しちゃうんだけど。 けど、多分、ホントのことなんだけど。」 「え?何が?」 って、何私は先をうながしてるんだろう? ここで止めないといけないんじゃ? 「あ、ううん、いいよツカちゃん、 何でもないから。 何も聞いてないし。」 ツカちゃんはちょっと力を落としたようなため息をついた。 でも、やっぱり決心したって感じで言った。 「俺、アヤちゃんのこと好きっていうか… 気になる。」 ツカちゃんが下を見て言う。 私はツカちゃんのそんな様子を見ていたら、 何だか胸がキュンとしてしまった。 「よく知らないから、変だと思うかもしれないけど。」 「うん…。」 「良かったら、電話とか、していい?」 「え…。」 「好きな人とかいるの?」 「ううん。いないけど。」 でもツカちゃんのことをそういう目で見たこと無いんだよなぁ…。 ベース弾いてる姿とか、カッコいいとは思うけど、 遊ばれるのは嫌だ。 「ツカちゃんモテそうだから。」 ツカちゃんはそこで、あははって笑った。 「そんなことないよ~。だからダメなの?」 「だってどんな人か知らないもん。」 「じゃあ… じゃあさ、付き合ってちょっとずつ知っていくのは? 俺もアヤちゃんのことよく知らないし。」 「よく知らないのに、好きでも無いのに付き合うの? おかしくない?」 「それってちょっと傷つくんだけど…。」 「だって、よく知らないんでしょ?」 「でも気になるんだけど。」 ツカちゃんは私の顔をジッと見ていた。 私は照れてしまって、 目を逸らした。 コレがツカちゃんの手かもしれないし…。 私は最近疑心暗鬼になってるのかもしれない。 失恋したばっかだし、 それでときめいちゃう自分も変だし、 そんな自分が信用できない。 だからなのか、 男の子の言うことがイマイチ信用できなくなっていた。 それにまだ、前に好きだと思った人ほど、 ツカちゃんのこと好きって、いきなり思えない。 ずっと黙っていたら、ツカちゃんから口を開いてくれた。 「いいか…。 まあ、いいや。 今はバンドのメンバーとして接しててくれればいいから。 俺焦り過ぎた。 ごめんな。」 「うん…。」 気まずいだろうと思うのに、 ツカちゃんは私の家の前まで来てくれた。 「家ココなんだ?」 「うん。」 じゃあ。 去って行く後ろ姿が、何となく潔くて、 私は何となく言ってしまった。 「ねー…」 ツカちゃんが振り返った。 何?って感じでこっちを見てる。 「電話していいよ!」 一瞬すっごい驚いた顔をしたかと思ったら、 ニコッと笑って、ブンブン手を振った。 そんなツカちゃんを見ていたら、 私も何だか嬉しくなって、 角を曲がるまで、その姿を見送っていた。 人を好きになるのって、 一瞬なのかな? って、その時思った。 続きはまた明日 前の話を読む 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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