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スコシフシギな世界-藤子・F・不二雄ブログ

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『 精霊よびだしうでわ 』


 『 精霊よびだしうでわ 』

※ 日記では12/23に取り上げています。


 雪の精が、もし一度も呼ばれたことがなければ
 「初めて出て来れたわ」といっていたでしょう。
 けれど、そうした様子はありません。
 ドラえもんも、道具の効果は一度きりともいってません。
 つまり、呼ばれれば、いつでも出てこれるのだと思います。

 ただ、雪の精にしてみたら、いつ出られるか分からず
 半年後か、1年後か、あるいはもっと先かもしれず
 待ちきれないのかもしれません。
 それが、わがままな性格に変わっていったのかもしれません。
 なので、今まで呼び出されても、すぐにお役御免で
 外の世界にいられる時間も、短かったのかもしれません。
 でも、のび太だけは
 雪の精を否定することはありませんでした。
 のび太のそんなところに、雪の精も好意を持ったのでしょう。

 しかし、雪の精と一緒に寒い外で遊びすぎたため
 のび太は熱を出してしまう・・・
 しかも、大雪が原因で、医者も来れない状態に・・・

 夜中、心を痛めた雪の精が、のび太の枕元に現れます。
 最後は、のび太の熱を吸い取り
 雪の精は、消えてしまいましたが
 永遠の別れというわけではなく、「精霊よびだしうでわ」で
 いつでも雪の精に会えるということになります。
 なので、この話では、別れの悲しさを感じるのではなく
 精霊と人間は、環境の違いで
 ずっと一緒にはいられない運命という
 通わぬ恋と、せつなさが残るのです。

 呼び出される道具から出てくる以上
 いつかは、消え行く(うでわに戻る)運命も
 精霊たちは、わきまえているはずです。
 わがままで「消えたくない」といっていた雪の精が
 最後に、自分のすべき行動をとるのも感動です。

 のび太 「(熱を吸い取り)そんなことしたら、きみが・・・」
 雪の精 「消えちゃうわ。でもいいの。雪は消えるのがあたりまえなのよ」

 雪の精は、のび太が寝た頃に、枕元に現れます。
 きっと、のび太が気づかないように、そっと
 熱を吸い取ろうと考えたのかもしれません。
 夜中にひっそり現れるところが、印象的です。
 これは、雪の精の見せた優しさでしょうね。
 そして、のび太の優しさにも注目です。
 のび太が風邪を引き、熱を出したのは
 雪遊びが原因なのは明らかです。
 しかし、のび太は雪の精に
 恨みをいうこともなく、一言も責めません。

 雪の精 「信じてほしいの。かぜをひかせるつもりなんてなかったのよ」
 のび太 「分かってるよ。きみと遊んでて楽しかった」

 のび太は、嘘をついていないでしょう。
 「分かってるよ」というのは、本当だと思います。
 いたずらするジャイアンとスネ夫を追っ払ってくれた
 のび太思いの雪の精に、のび太も好意を持っていたからでしょう。
 「きみと遊んでて楽しかった」という、のび太の言葉に
 雪の精も、きっと嬉しい思い出を残して、腕輪に戻ったことでしょう。

 人間でも精霊でも、F先生の描く人間や生き物には
 性格は皆違えども、誰にでも優しい心はあるという描写が
 見受けられます。大げさでなく、厚かましさも、押しつけもなく
 ごく普通の優しさがにじみ出ています。
 F作品を一言ではいい表せませんが、物語の基盤になっているのは
 間違えなく「やさしさ」であるといえます。

 最後のコマでは、ドラえもんが笑顔で
 「もうすぐ春なんだね」といいますが、せつないです。
 のび太が遠くを見つめている顔が、より一層せつなさを増します



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