カテゴリ:本・読書
『源氏物語』を読み終えました。
最後54帖「夢浮橋」の、あっけない幕切れに唖然としてしまいました。 なんという中途半端な終わり方をするのでしょう! どんな結末を迎えるのかと楽しみに読んでいたら、唐突に終わってしまうのですから。 それにしても、スケールの大きいすごい小説です。 紫式部というハイレベルの教養の持ち主が創り上げた最高傑作。 千年前の30代の女性が書いたと思うと、あらためて驚いてしまいます。 登場人が非常に多く、書かれた和歌の数は795首もあります。 登場人物はみな複雑な心理や社会的背景を抱えていて、恋愛事件に満ちあふれています。 複雑な内容のため、神経を集中して読まないと読み落としてしまうほどです。 一帖読むごとに、あらすじをまとめた本を参考にしながら、読み落としや解釈の間違いがないかを確認して読み進めました。 源氏亡き後の、45帖「橋姫」から54帖「夢浮橋」までの通称「宇治十帖」が一番面白いと思いました。 光源氏の物語の方は雅で風景も表現も美しいのですが、次世代の貴公子たちの物語である宇治十帖になるとガラっと変わって来ます。 この小説の主役は光源氏ではなく、多くの女性たちではないでしょうか。そんな気がしました。 紫式部は、容姿も財力も権力も優しさも持ち合わせている光源氏という男性をつくりあげましたが、そんなすべてを持っている理想的な男性と関わった女性たちは、誰も幸せになっていないのです。 光源氏がいつ死んだのかも書いていません。「雲隠」という題名だけで文章がない。 読者は想像するしかなく、この物語が突然終わるのも、すべて紫式部の緻密な計算なのでしょう。 人の心は千年前もさほど変わらないものなのですね。 千年間読み継がれてきた理由がわかったような気がしました。 私たちの祖先が残した最高の文化遺産を読むことができて、幸せであります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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