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テーマ:癌(3513)
カテゴリ:薬
前回、虫下し用のチョコレートの不味さに触れましたが、駆虫剤という本来の機能から考えると、ずいぶんとましなところまで頑張った言えるのかもしれないと考えてしまいます。
駆虫剤は体内の寄生虫を対外に駆除するためのもので、伝統的には生薬が使われてきました。大きく分けると寄生虫を麻痺させて動きを止めて排出しやすくする物、寄生虫を殺してしまう物の二つに分ける事ができ、寄生虫の卵が孵化するサイクルに合わせて複数回服用する事や、下剤と併用するなどの使用例が見られています。 寄生虫を殺すとなると毒物という感じがして、進退に非常に悪いような気がするのですが、人体には無害である事が必須なので、寄生虫だけに作用する毒物である必要があります。 虫下しという事で特に意識されるギョウチュウやカイチュウ、サナダムシといった寄生虫は主に腸内にいます。腸内はほとんど酸素が存在していないという特殊な環境にあり、わずかでも酸素があれば肺かエラで呼吸できるのですが、それもできない状態になっています。 そのような環境下、寄生虫はどのようにして呼吸しているかというと、酸素を使わずフマル酸をコハク酸に変換する事でエネルギーを生産するというフマル酸呼吸を行っています。酸素呼吸と比べると、非常に効率が悪いとされますが、酸素がない環境下で生きていくには最良の選択ともいえます。 酸素の代わりにフマル酸を使い、最終的にコハク酸を生じる事で電子伝達系を完結させますが、そのフマル酸からコハク酸へと変化させる酵素の働きを止めると、寄生虫は呼吸困難になって死んでしまう事になります。人には害にならず、寄生虫だけに作用するという背景には、そうした部分への着眼があります。 最近、すい臓や大腸のガンが周囲に血管がなく、酸素が乏しい状態でも盛んに増殖を行い、細胞内にコハク酸の高濃度の蓄積が見られる事が判ってきました。 ガン細胞も寄生虫と同じ呼吸法を行ってエネルギーを得ているのではという仮説の元に、ガン細胞に虫下しの成分を投与するとガン細胞が死滅する事が判ってきました。ガンの治療に新たな血管の生成を抑制する「新造血管抑制剤」が使用される事があります。それでも増殖を続けるガン細胞が見られますが、虫下しと併用すると効果を上げるように思えます。不味いチョコを食べてガン治療とはならないと思いますが、有効な治療法の確立には期待したい思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月17日 08時24分31秒
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