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カテゴリ:健康
以前、胃薬のコマーシャルで「胸は焼くものではなくて焦がすもの」というセリフがあり、上手い事をいうものだと感心した事があります。誰かを想い、胸を焦がす事はきれいにさえ思えますが、胸が焼けるのは不快感以外の何物でもないという事ができます。
胸焼けは誰にでも起こりうる症状で、一月以内に胸焼けを経験した事があるかという問いには、約半数近くの人があると答えるほど多くの人が経験する症状となっています。毎日経験しているかという問い掛けには、全体の10%以下の人しかあると答えないそうなので、毎日悩まされるほではなくても時折不快感を感じる症状となっている事が伺えます。 胸焼けの主な原因は胃酸が食道へと逆流し、胃酸の強い酸への防御機能を持たない食道の粘膜が酸によって冒されるためと考えられていました。 そのため胃酸を抑制する薬剤を投与する事で胸焼けは治癒する事ができると考えられていたのですが、最も強力とされるPPI(プロトンポンプ阻止薬)を投与しても約半数の患者に改善が見られず、胸焼けの原因が考えられていた胃酸の逆流ではない可能性も示唆されています。 PPIを投与しても症状の改善が見られない患者を内視鏡で観察すると、食道の粘膜に強い酸に冒された跡が見られない事から、そうした状態をNERD(非びらん性胃食道逆流症)と呼ぶようになってきています。NERD患者は実際には把握されているよりも多いと考えられ、胃食道逆流症の患者の70%にも上るとする意見もあります。 不思議な事にNERDは若くて痩せている女性に多いという傾向があるとされ、PPIをはじめとする酸阻止薬を投与しても症状が改善される可能性は低いとされますが、症状が起こる頻度や症状は通常の胸焼けと同じとされています。 NERDの原因については胃酸ではなく肝臓で生成されている胆汁が逆流している可能性や、食道の粘膜が知覚過敏の状態にある事、心理的なストレスなどがNERDを引き起こしている可能性が考えられています。 特に心理的なストレスについては、重度で持続性のストレスにさらされた後、約4カ月に渡って胸焼けの症状を訴える可能性が非常に高い事が判っていて、NERDの原因となっている可能性が考えられています。 また、内視鏡の検査で目立ったびらんが見付かっていない事から「非びらん性」となっていますが、内視鏡では発見できない微細なびらんが存在する可能性も考えられる事から、原因の特定は困難を極める可能性も出てきています。 薬剤の発達により発見された隠れた症状ですが、こうしている瞬間も治らない胸焼けのために強力なPPIを引用し続け、副作用であるカルシウムやマグネシウム、ビタミンB12といった主要な栄養素の摂取障害から骨折や感染症のリスクが高まっている患者も少なくはないと考えられます。たかが胸焼けと思いがちですが、されど胸焼け。一刻も早い原因の究明と治療法の確立を望んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年11月16日 08時02分14秒
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